最近では日常あまり耳にする機会がない「ふつつかものですが」というフレーズ。ドラマではプロポーズや結婚の挨拶として使われることが多いですね。一般に、目上の方に対する挨拶で、今後のお付き合いをお願いするときに使われます。謙遜の姿勢を見せつつ、自分をアピールできる言葉でもあるので、ぜひビジネスにも活用したいもの。正しい意味と使い方を、例文から学びましょう。
【目次】
- そもそも「ふつつか」ってどんな「意味」?
- 「ふつつかもの」を使うのはどんな場面?
- 正しい使い方がわかる「例文6」
- 似た意味をもつ「類語」や「言い換え表現」
- 「ふつつかもの」の「対義語」は?
- 「ふつつかものですが」と言われたときの「返答」は?
- ビジネスで「ふつつかもの」を使う際の「注意点」
【そもそも「ふつつか」ってどんな「意味」?】
■「意味」
現在、一般に使用されている「ふつつか」は【不格好な様子、気の利かないさま。行きとどかないさま、無骨】などの意味で使われています。「ふつつかもの」は【気の利かない人、行きとどかない人。無骨な人】を指します。
■「ふつつかもの」を「漢字」で書くと?
「ふつつかもの」を漢字で書くと、「不束者」となります。ただし、「不束」は当て字。本来、「ふつつか」は「太束(ふとつか)」と関係のある語で、古くは【太くて丈夫】【太くいやしげなさま。下品でぶかっこうなさま。不細工なさま】などの意味で使われていました。さらに【細かな配慮に欠ける様】といった意味を含んでおり、いずれも否定的な意味合いであるところから、「不」の字を当て字に用いるようになったとされています。
■「ふつつかな娘ではあります(ございますが)が」の意味は?
「ふつつかものですが」は、自分以外の身内には、男女の区別なく使えます。親が子供を、上司が部下を紹介する場面で「ふつつかな○○ではあります(ございますが)が」と表現することで、「まだ未熟な娘(もしくは息子、後輩など)ですが~」と、謙遜したニュアンスを表現できます。親が結婚相手の家族に対して挨拶する際の定番フレーズですね。
【「ふつつかもの」を使うのはどんな場面?】
ビジネスで「ふつつかもの」を使うのは、初対面の挨拶や新任の挨拶、異動・派遣される部下を送る際の挨拶などです。初対面でなくとも、新たな関係性を築く際に、「改めてよろしくお願いします」と挨拶するときにも使われます。また対面でなくとも、メールなどでの使用も可能です。
「ふつつかものですが」と自己紹介した場合、「(自分は)行き届かない人間ですが…」と謙遜した意味合いになりますが、言外に「そんな私ですが、ご期待に添えるよう精進します」というニュアンスも伝えられます。上手に自分をアピールしましょう。
■1:目上の方に初めて会ったとき、今後のお付き合いをお願いする挨拶
■2:新規プロジェクト参入での挨拶
■3:誰かに教えを乞う場面での挨拶
■4:新入社員が部署内で初めてする挨拶
■5:部下を他部署などに派遣するときの挨拶
■6:結婚相手の親族への挨拶
【正しい使い方がわかる「例文」6選】
前述の6つのシーンに応じた例文をご紹介します。
■1:「初めてお目にかかります△△課の□□と申します。ふつつかものですが、今後ともよろしくお願いいたします」
■2:「ふつつかものですが、精一杯努めますのでご指導のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます」
■3:ふつつかものではございますが、なにとぞご教授のほどをよろしくお願いいたします。
■4「ふつつかものですが、一日も早く業務をしっかりとこなせるよう精進してまいります」
■5:「ふつつかながら、伸びしろはあると上司である私自身も期待しています。鍛えてやってください」
■6:「ふつつかものですが、末永くよろしくお願いいたします」
【似た意味をもつ「類語」や「言い換え表現」】
「ふつつか」の類語は数多くあります。いずれも「〜ですが」と謙遜する表現として使えます。
■未熟 ■気が利かない ■出来が悪い ■若輩 ■不慣れ ■至らぬ
■無作法 ■半人前 ■初心者 ■苦労知らず ■おっとり ■駆け出し
【「ふつつかもの」の対義語は?】
本来の「ふつつか」は、とても幅広い意味をもつ言葉です。そのため「ふつつかもの」の対義語・反対語としては、「気が利く人」「上品な人」「優秀な人」など、さまざまな言葉が挙げられます。
■気が利く人 ■何事にも行き届いた人 ■気の回る人
■優秀な人 ■気配りが上手な人 ■洗練された人
■かゆいところに手が届く人 ■上品な人 ■機転が利く人
【「ふつつかものですが」と言われたときの「返答」は?】
相手がへりくだった表現で挨拶してきた場合は、自分も同様にへりくだる表現を用いましょう。ただし、同じ「ふつつかもの」という言葉はあえて使わず、「こちらこそ、至らない点が多いですが」「気が利かないことも多いと思いますが」「未熟者ですが」などと言い換え、「よろしくお願いいたします」と続けるのがスマートです。
■「こちらこそ、至らないところがあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします」
【ビジネスで「ふつつかもの」を使う際の「注意点」】
「ふつつかものですが」を使う際の注意点は大きくふたつ。
まず、「ふつつかものですが」の「ですが」は、助動詞の「です」に助詞の「が」が付いた、逆説を意味する言葉です。「未熟者ですが、やる気はあります」のように、その後に反対・対立の関係にある内容を続けて使われます。そのため、「ふつつかものです」とだけ言ったり、「ふつつかものですが…」と言葉を濁すことがないよう注意してください。謙遜ではなく、単に「自分に自信がない人」とネガティブな印象を与えてしまう可能性もあります。
次に、「ふつつかもの」は後輩や自社のスタッフに対しても使える言葉ですが、「気が利かない人」、「行き届かない人」など、ネガティブな印象の言葉です。そのため、使われた人が不快な思いをするかもしれないことを常に頭に留めて使いましょう。あまり親しくない間柄の人に対して「ふつつかもの」を使うのは、避けたほうが無難です。
当然ながら、「ふつつかもの」は上司や外部の人に対して使うことはできません。基本的には同期や同世代の友人を紹介する際にも使いません。誰かを指して「あの人は、ふつつかものだ」という言い方も誤用です。
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「ふつつかものですが」は、自分や身内などを謙遜する際に使用される言葉です。逆説的に使われるフレーズですから、「(現在、未熟なところはあっても)今後はご期待に応えられるよう精進いたします」など、上手に自分をアピールするフレーズとして使ってみてはいかがでしょうか。「微力ながら」「実力不足ですが」と表現するよりも、知的で謙虚な印象を与える言葉ですので、ぜひ上手に活用したいものです。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/全文全訳古語辞典(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『印象が飛躍的にアップする大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) :