雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は一般社団法人「障がい者みらい創造センター」代表理事 竹内亜沙美さんの活動をご紹介します。
知的障がい者等が働く就労支援カフェ。オープンな福祉で「壁」をなくしたい
昨秋、名古屋市瑞穂区にオープンしたカフェ「マグネット」。おしゃれな空間で、コーヒーや紅茶、カレーなど、有名店が監修したメニューが楽しめる、今どきのカフェなのだが、その目的は知的障がい者等の就労支援。接客や調理、ドリンク提供、レジを担当しているのは、知的障がいや発達障がい、精神障がいのある人たちだ。
「ここが福祉のカフェだということはあえて看板には明記していません。障がいを甘えにせず、本物のカフェのクオリティを目指しているからです。ただ、今は初心者スタッフが多く接客があまりに未熟なので、『接客練習にご協力いただける方はこのカードをテーブルに』と書いたオリジナルのSDGsマークをつくり、活用しています。
支援者も少しずつ増えてきて、『あの子、しっかり話せるようになったね』なんて声をかけてもらったりするのが本当にありがたく、うれしいです」
英語の教師として中学校で特別支援学級に関わったことをきっかけに、特別支援教育教諭に。仕事と掛け持ちで’17年にNPO「障がい者みらい創造センター」(※)を設立した。翌年には全国初の知的障がい児就労支援教室を開所。就労訓練カフェは、「開かれた福祉」を目指しての新たな挑戦だ。
「教員時代に突然難病を発症し、いつ死ぬかわからないとなったことで、『思いついたことはやる』と決めたんです。障がい者の就労に関していえば、一緒に数年間訓練をした子が、社会に出たら月給が5000円、ということがあって。その現実が、泣くほど悔しかった。
子供たちがこの場所からステップアップして、『やれる仕事』ではなく『やりたい仕事』に就けるように、働きかけていきたい」
【SDGsの現場から】
●カフェでの訓練は約1年。その後の一般就労を目指す
●「障がい者みらい創造センター」は教員時代に設立
※障がい者みらい創造センター…「より豊かに生きられる社会を創造する」「未来の選択肢を増やす」を目指す支援団体。愛称「みらせん」。通所者の9割が知的障がい者。
- PHOTO :
- 若林聖人
- EDIT&WRITING :
- 大庭典子、喜多容子(Precious)
- 取材 :
- 河野好美