ビジネスシーンで大切な要素のひとつが、心置きなく意見交換や議論できること。本日は、その「心置きなく」について学びます。正しく意味や使い方を理解しないと、相手に不快な印象を与えてしまうことも…。クライアントやお客様の前でもためらわず「心置きなく~する」と使えるよう、例文や言い換え表現をご紹介します。
【目次】
【「心置きなく」のいくつか「意味」】
■「心置きなく」ってどんな言葉?
まずは「心置きなく」の意味を理解しましょう。『デジタル大辞泉』には【遠慮気がねなく。心残りなく。安心して】という意味だと記載されています。副詞なので「心置きなく」のあとに「~する」という動詞をつなげて使用。下記のように大まかに3種類のシーンで活用できます。
■「遠慮や気兼ねをしないで~する」
■「安心して~する」
■「心残りなく~する」
いずれの意味合いでも、仕事の現場でよく使われますね。そもそもは「心置く」という大和言葉からきていて、意味は「心遣いをすること」「遠慮すること」「心があとに残って、気になること」です。「心置きなく」はそれを「ない(無い)」と否定したフレーズなのです。
次に例文で具体的な使い方を見てみましょう。
【「心置きなく」のシーン別「例文」6選】
■1:「今回はブレストですので、心置きなく意見を交わし合えたらと思います」
■2:「ご尽力への感謝として、このような席を設けさせていただきました。お時間の許す限り、心置きなくお楽しみください」
上記は「遠慮や気兼ねをしないで~する」に置き換えられるシーンでの例文です。1対1の会話ではあまり使用する機会はないかもしれませんが、複数人でのミーティングや、取引先との会食などをセッティングした際など、使用する機会がありそうですね。
では、「安心して~する」「心残りなく~する」に置き換えられるシーンでの例文も見てみましょう。
■3:「彼は口の堅い人間なので心置きなく話せます」
■4:「感染症のまん延が収束して、心置きなく会える日を楽しみにしています」
■5:「イベントが成功に終わったので、今夜から心置きなく眠れます」
■6:「先日無事に葬儀を終え、心置きなく故人を見送ることができました」
このように「心置きなく」には「遠慮や気兼ねなく」「安心して」「心残りなく」といういくつかの意味があります、これらは複合的に絡み合っています。例えば■3は、「彼は口の堅い人間なので安心して話せます」とも「~遠慮なく話せます」とも使うことができます。状況に応じて使用、あるいは解釈できる「心置きなく」は、大変重宝するフレーズなのです。
【同じ意味で使える「類語」】
では、「心置きなく」の類語を整理してみましょう。
■「遠慮なく」「気兼ねなく」の意味での類語
・自由に ・気軽に ・気にせず ・のびのびと
■「安心して」の意味での類語
・気楽に ・憂いなく ・心配なく ・晴れて
■「心残りなく」の意味での類語
・悔いなく ・存分に ・未練なく ・心ゆくまで ・憂いなく
【「心置きなく」は目上の人にも使える? 使用上の注意点】
「心置きなく」は前後の言い回しで敬語として使用します。それは、「心置きなく」が尊敬語、謙譲語、丁寧語にはならないからです。
では、「心置きなく」と促す相手が、取引先や上司など目上の人の場合にはどんな敬語表現がふさわしいのでしょうか。実は「心置きなくどうぞ」と促すのは、やや上から目線に感じるケースもあるのです。
例えば上司に、「どうぞ心置きなく休暇をお楽しみください」と言ったらどうでしょう。こちらは「いらっしゃらない間もしっかり職務を果たしますので、安心してお休みください」というつもりでも、相手は「休みを取るのに君に気兼ねや遠慮はしないよ」と捉えるかもしれません。目上の人には、「心置きなく」より「お気遣いなく」を使ったほうがいいでしょう。
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ビジネスシーンでも重宝に使える「心置きなく」というフレーズ。複合的な意味をもつだけに、目上の人への使用には注意が必要だとわかりました。敬語表現は、相手との関係によって柔軟に変化させることが肝心です。今日も一歩、“敬語達人”に近づきましたね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『岩波国語辞典』(岩波書店) :