敬意を払うべき方からのお誘いやご提案。お受けしたくとも諸般の事情からお断りしなければいけないときには、「生憎」を使いましょう。仕方ないこととはいえ、断り方によっては相手を傷つけたり不快にさせたりするため、特に言葉の選び方は慎重にしたいもの。「生憎」は「都合が悪くて相手の期待に応えられない残念な思い」をにじませる、気遣いの言葉です。詳しい意味やそのまま使える例文など、詳しく解説します。

【目次】

「生憎ですが…」は気遣いの言葉。
お断りしなければならないシーンで「生憎ですが…」は気遣いの言葉。

【そもそも「生憎」ってどう読むの? 知っておきたい「基礎知識」】

■「読み方」

「生憎」は「あいにく」と読みます。

■「意味」

「生憎」は【期待や目的にそぐわないさま。都合の悪いさま】という意味の形容動詞として名詞を修飾したり、副詞として【具合の悪いことに】という意味で使われます。

『敬語マニュアル』によれば、「生憎」は【相手の依頼・要求がかなえられないことを残念に思うニュアンスを伴う表現】です。食事のお誘いに対して、「その日は無理です」とストレートに断るよりも、「生憎その日は都合がつきません」とすることで、こちらに非はないけれど、相手の期待に添えないことを軽く謝罪するようなニュアンスを伝えることができます。

■「由来」

「あいにく」は感動詞「あや(=あぁ)」と形容詞の「憎し」が合わさった、「あやにく」が音変化した語です。「あぁ、憎たらしい」という言葉が「生憎」の由来と思えば、「残念」「都合が悪い」といった使い方になるのも納得ですね。ただし「あやに」が語の根幹であるとする説もあります。「生憎」「合憎」「相憎」などと表記されることもあったようです。


【ビジネスでそのまま使える「例文」4選】

では、実際の使い方を例文でチェックしていきましょう。

■「生憎先約があるため、今回は見送らせていただきます」

依頼や提案を断る際に「生憎」を使い、「お受けしたいのはやまやまですが…」と残念な気持ちをにじませます。また「今回“は”」という言葉で「次は参加したい」という含みを持たせることができます。

■「生憎その日は終日社外に出ております。○月×日ではいかがでしょうか」

依頼や提案を受け入れられない際には、「生憎」で申し訳ない気持ちを表しつつ、代替案を提示すると前向きな姿勢が伝えられます。「社外に出ている」「先約がある」など、自分一人の個人的な事情ではない旨を伝えることもポイントです。

■「当日は生憎のお天気のようですが、お足元にお気をつけておいでください。

「生憎の空模様」「生憎の雨」「生憎の天気」など、出かけるには少々都合の悪いお天気を表現するのに「生憎」はよく使われます。先方にご不便をおかけすることに軽い謝罪の気持ちを表すことができます。

■「生憎ですが、今回のご希望への対応は致しかねます」

『敬語マニュアル』によれば、【依頼・要求を断ろうとするときだけでなく、相手の行為を禁止する前置きの挨拶としても】使えます。「生憎ですが」と、丁寧語の敬語表現で使用しましょう。


【「生憎」と同じように使える「類語」「言い換え」表現】

「生憎」にはいくつか言い換え表現があります。

■残念ながら  ■せっかくですが

「せっかくですが」「せっかくでございますが」は、相手の依頼や要求に価値があることを認めるニュアンスを含んだ表現です。「お申し出は貴重でうれしいのですが」という気持ちを込められます。

■折悪しく  ■間の悪いことに ■タイミング悪く

「折悪しく」「間の悪いことに」は、「ちょうどタイミングが悪くて……」と同じような意味で使えます。

■お気の毒さまですが ■運悪く ■遺憾ながら


【「生憎」の対義語は?】

「生憎」の対義語もこの機会に覚えておきましょう。

■折よく ■運よく ■幸運にも ■うれしいことに ■ちょうどよく


【相手に不快な思いをさせないために。知っておきたい「注意点」】

■「お生憎さま」はビジネスシーンで使用しない

「お生憎さまです」「まことにお生憎さまでございますが…」は正しい敬語表現ですが、「残念でした!」というニュアンスの嫌味や皮肉と受け取る人もいるようです。不要な行き違いを避けるためにも、ビジネスシーンでは使用しないほうが無難です。

■自分の都合で相手に迷惑をかけているときには使わない

例えば、上司から頼まれた資料について聞かれ、自分の都合ででき上がっていないときに「生憎ですが、今、作成中です」とは使いません。「申し訳ありません。今、作成中です」とストレートに謝罪しましょう。

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誰かがわざわざ自分を誘ってくれたとき、あるいは自社を見込んで依頼してくれたとき。その期待に応えたいとは思っても、スケジュールや予算の関係上、やむを得ずお断りしなければならないケースはあるものです。「生憎」は、残念な気持ちや軽い謝罪を表現できる言葉です。「お断り」という気まずいシーンこそ、相手のご厚意に思いを馳せ、上手に気遣いの言葉を使って「次のチャンス」につなげましょう。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『印象が飛躍的にアップする大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)/『大人なら知っておきたいモノの言い方サクッとノート』(永岡書店)/『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)/『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』(宝島社)/『心理学的に正しい!人に必ず好かれる言葉づかいの図鑑』(宝島社) :