今日は、メールや手紙の結びに使われる「ご自愛ください」というフレーズについての解説です。プライベートだけでなく、ビジネスシーンでのやりとりでも「ご自愛ください」は"感じのよい終わり方”として重宝します。しかし、間違った使い方をしている「ご自愛ください」も…。せっかくの"感じのよさ"を台無しにしないためにも、使い方やふさわしいシーンを、類似語や言い換え表現も含めて学びましょう!

【目次】

「お身体ご自愛ください」は、どこが間違い?
「お体ご自愛ください」は、どこが間違い?

【「ご自愛ください」とは?「正しい意味」】

■「ご」「自愛」「ください」で見る正しい意味

「ご自愛ください」の意味を正しく理解していますか? “気遣いフレーズ”であることはわかりますね。まずはこのフレーズの構成から、正しい意味を把握してみましょう。

「ご」は、続く名詞や動詞を丁寧にする接頭語。「ください」は、「くださる」の命令形「くだされ」の音変化したもの。「ご+〇〇+ください」で、依頼や懇願を表します。そして「自愛」は、「自分を大切にすること」や「身体の健康状態に気をつけること」を示す名詞です。

ということから「ご自愛ください」の正しい意味は、「ご自分を大切になさってください」や、「健康に気をつけてください」ということになります。「自愛」にはほかの意味もあるのですが、それについては今回の結びでご紹介します。

■「お体ご自愛ください」がNGな理由

上記で説明したように、「自愛」という名詞は「体の健康状態に気をつけること」なので、「お体ご自愛ください」としてしまうと「体」が重複してしまいます。「ご自愛ください」が正しい敬語表現です。


【「ご自愛ください」が活躍する場面と「例文」】

■体調を崩しやすい梅雨時や寒冷時季のメールや手紙の結びに

・じめじめとした、体調を崩しやすい季節になりました。どうぞ十分ご自愛くださいませ。

・寒さ厳しき折、お風邪など召しませんようご自愛ください。

■コロナまん延期のメールや手紙の結びに

・新型コロナウイルスまん延に際し、十分にご自愛くださいませ。

・新型コロナウイルスまん延期の不自由から少しずつ日常を取り戻してまいりましたが、変わらないご自愛のほどお祈り申し上げます。

■暑中見舞いや、酷暑や残暑の時季のメールや手紙の結びに

・暑さ厳しき(酷暑の/猛暑の/残暑の)折から、くれぐれもご自愛お祈り申し上げます。

・炎暑酷暑のみぎり、皆様のご健勝とご自愛をお祈り申し上げます。

■退職の慰労や激励のメールや手紙の結びに  

・長年のご功績とご指導に深く感謝しております。今後のご活躍とご自愛をお祈り申し上げます。

・今後の躍進とさらなるご発展を心よりお祈りいたします。今まで以上にどうぞご自愛くださいませ。


【同じ意味で使える「言い換え」表現】

「ご自愛ください」の言い換え表現もご紹介しましょう。

■お体を大事になさってください
■ご健康をお祈り申し上げます
■御身(おんみ)おいたわりください
■時節柄おいといください

また、「ご自愛専一(ごじあいせんいつ)」と言うこともできます。「専一」とは、ある物事だけに力を注ぐこと、あるいはそのことを第一にすることを表す語。「ご自愛専一になさってください」のほうが、より強く相手の健康を気遣ったフレーズです。


【ビジネスシーンでは、いつ、誰に使うのが正解?】

例文や言い換えを見てきましたが、ビジネスシーンで「ご自愛ください」はどんなタイミングで使えるのでしょうか。この点もしっかりチェックしておきましょう。

■いつ?

「ご自愛ください」は相手の健康状態を気遣うフレーズです。日常的に会う相手ではなく、「しばらくお会いする機会がありませんが、(会えない間も)どうぞお元気で」という意味で使用します。プロジェクトが終了した際や、異動、退職、転勤などの際に活用できますね。

■誰に?

「ご自愛ください」は敬語表現ですので誰にでも使えますが、目上の相手には「ご自愛くださいませ」としたほうが、柔らかな印象となってよりよいでしょう。


【「ご自愛ください」の「使用上の注意点まとめ」】

相手の体や健康を気遣うフレーズだけに、NGポイントもチェックしておきましょう。

■病気や不調があるとわかっている相手には使わない

この場合は、「一日も早いご快方をお祈り申し上げます」や、「お元気になられて、またご一緒させていただける日を楽しみにしております」などに言い換えを。

■「お体ご自愛ください」は重複表現!

「お体」は不要、「ご自愛ください」が正解です。

■年長者に使う場合は柔らかな表現に

年長者にこそ積極的に使いたい“気遣いフレーズ”ですが、「ご自愛ください」と言い切ると少々上から目線と感じることも。年長者、上司、取引先の方などには「ご自愛くださいませ」や「ご自愛お祈り申し上げます」を。

■「ご自愛ください」への返し  

会話よりも手紙やメール、挨拶文で使われることの多い「ご自愛ください」。返信などする際には「〇〇様も、どうぞお体おいたわりください」など、言い換え例文をご参考に。

同じ「自愛」でも、「自愛心」や「自愛主義」とすると、「自分の利益ばかりをはかる」「自分勝手」といった意味になるのでご注意を。日本語は、奥が深くおもしろい言語ですね。

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ビジネスシーンでさえ、時候や風物を表す美しい言葉や、相手を気遣うフレーズを用いるのが日本語の豊かさです。それだけに、今回の「お体ご自愛ください」の間違った使い方のように「絶対NG!」はしっかり身につけておきたいものですね。“気持ちのよい敬語”をさらりと使いこなせるよう、毎日コツコツ学んでいきましょう。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『敬語ネイティブになろう!!』(くろしお出版) :