イタリアが誇る老舗帽子ブランド「ボルサリーノ」の最高傑作『パナマハット』の魅力にフォーカス

創意を凝らしたクオリティの高い帽子づくりで揺るぎない地位を築き上げた、老舗帽子ブランド「ボルサリーノ」。誰もが一目おく佇まいの美しさは、どこから生まれるのでしょうか。夏ファッションの代名詞『パナマハット』の魅力と共にお届けします。

ボルサリーノ『ソフィ パナマ ファイン』
1.ワイドなブリム(ツバ)がエレガントな、ウィメンズモデル。ブリーチ加工が施され、顔周りも華やか!ブリム幅は10cm。『ソフィ パナマ ファイン』¥56,100(ボルサリーノ ジャパン)

繊細な編み目が物語る! 『パナマハット』づくりの矜持

イタリアとフランスで帽子づくりの技術を磨いた職人、ジュゼッペ・ボルサリーノによって1857年に創業した「ボルサリーノ」。時は紳士が礼装で身につける、シルクハットやボウラーハット(山高帽)が主流だった時代―。ジュゼッペ・ボルサリーノが手掛ける最高級のファーフェルトを用いた帽子は、瞬く間に上流階級の人々を虜に。その実力は、この時代につくられたオリジナルの機械や製法が、今も現役で活躍していることが証明しています。

それになんといっても、クラウンのトップを凹ませたデザインや、帽子の着脱を容易にするために考案された両サイドの窪みなど、私たちが知る帽子形状の多くが、「ボルサリーノ」から誕生していることも忘れてはなりません。そんな「ボルサリーノ」の魅力は、夏の装いを格上げする『パナマハット』でも味わえます。

「ボルサリーノ」の『パナマハット』は、原料となるエクアドル産のトキヤ草(ヤシ科の一種)の上質なものだけを厳選し、3ランクに大別。最上級の素材を編み上げるのは、エクアドルの海岸線に面した地域、モンテクリスティの職人たち。その編み目は緻密で、まるでなめらかな布のよう(写真の帽子2)。

ボルサリーノの帽子
すべて男女兼用。2.ナチュラルな風合いが楽しめる、「ボルサリーノ」の最高級モデル。天然素材が放つ艶、緻密な編み目模様にうっとり。ブリム幅は、中間の6cm。『パナマ モンテクリスティ エクストラファイン』¥330,000、3.白のワントーンが爽やかな、今季の新作。ブリム幅は、程よくワイドな7.5cm。『パナマ ファイン』¥60,500、4.やや粗めの石目編みと綱代(あじろ)編みを交互に編み込んだ、カジュアルな逸品。ブリム幅は、小ぶりの4.5cm。『パナマ キート』¥39,600(ボルサリーノ ジャパン)

2番目のランクは、海辺のブリザーという地域で編まれ、繊細な編み目が特徴(写真の帽子1と3)。

3番目は、標高2,550mにある街、クエンカにて製作。ほかより編み目が大きく、よりカジュアルに楽しめます(写真の帽子4)。

天然素材を操る、職人魂が生んだ芸術品!

ボルサリーノ帽子の製作過程
帽体の編み上げはトップ部分から始まり、クラウンが完成すると土台にセット。トップには木製の重りが置かれ、職人はこれに覆いかぶさる体勢でブリムを編んでいく。職人たちが親指の爪を伸ばすのは、繊維をほぐすため。

『パナマハット』の製作では、原料の栽培から加工、帽体(帽子の本体)を編み上げる工程までが、エクアドルの職人の手作業で行われます。なぜなら原料となるトキヤ草は不均等なため、機械で織ることが難しい。

それに質が高いほどデリケートで、均一に編むことができる職人の数も限られます。帽体1個に、半年以上を要するそう…。この高度な技術が、「ユネスコ無形文化遺産」に登録されているのも納得です!

ボルサリーノ帽子の製作過程
 

『パナマハット』は、豊かな土壌と海風によって育まれたエクアドルのトキヤ草が原材料。標高約800mの山地で栽培され、季節を問わず収穫できる。

ボルサリーノ帽子の製作過程
 

大きな鍋でゆでられた繊維は、水気をきり吊るして乾燥。

ボルサリーノ帽子の製作過程
 

トキヤ草の内側にある柔らかな繊維のみが、『パナマハット』に使用される。

ボルサリーノ帽子の製作過程
編み終えた帽体は、数日間日干しされる。

完成した帽体は、エクアドルからイタリアの職人にバトンタッチ。「ボルサリーノ」の工場では、今なお自社で一貫生産されるフェルトハットの製作が8割を占めます。『パナマハット』の仕上げの工程は、伝統的なフェルトハット製法と同様、年季の入った機械を職人が操りながら手作業で進められます。

帽子の顔は、クラウンとブリム(ツバ)の組み合わせが鍵を握るといわれます。「ボルサリーノ」の帽子が目の肥えた大人に支持されるのは、徹底した素材への追求とディテールのバランスのよさ!

ボルサリーノ帽子の製作過程
 

イタリアの本社工場内にある、パナマハット専用の工房。エクアドルで編まれた帽体は「ボルサリーノ」の高い品質基準をクリアしたもののみ、仕上げの工程へ。

ボルサリーノ帽子の製作過程
左/ブランドを象徴するクラウン周りの表情は、専用の機械に帽体をセットして成形、右/リボンをミシンで縫い付けたら、ブリムに糊付けをして完成。

2か国のクラフツマンシップが生んだ『パナマハット』の最高傑作。上質なリネンシャツのように、「ボルサリーノ」の極上ハットの心地よさ、佇まいの美しさは、一度味わったらやみつきに!


【Column│ブランドゆかりの地を訪ねて】「ボルサリーノ」と共に発展を遂げたイタリア北部の街、アレッサンドリアへ

ボルサリーノ発展の地・イタリア北部アレッサンドリア
(C)Getty Images

イタリアで2番目に大きいピエモンテ州に属する、アレッサンドリア。古くからミラノ、トリノ、ジェノバを結ぶ工業地帯の中心地で、ミラノからは、車で約2時間。トリノやジェノバからも1時間ほど。

アレッサンドリア大学に引き継がれた創業時の本社工場は、今では街のシンボルに!

イタリア・ピエモンテ州のアレッサンドリア県は、ボルミダ川とタナロ川の合流地点にある工業都市。1857年、ジュゼッペ・ボルサリーノは、帽子づくりに必要な水資源が豊富にあり、帽子製造が盛んだったこの地に、弟と「ジュゼッペ・ボルサリーノ兄弟会社」を設立します。

今、かつての本社工場は「アレッサンドリア大学」が継承。当時の趣を残す建物には、「BORSALINO ANTICA CASA」(「ボルサリーノ」の創業地)の文字が彫られ、「ボルサリーノ」が街に与えた功績を称えています。そして現在の本社工場はというと、規模を拡大して郊外へ。敷地面積は、東京ドームがすっぽり収まる広さだそうです。

アレッサンドリアの市街を抜ければ一気に視界が開け、なだらかな丘陵地一帯にブドウ畑が広がります。実はトスカーナに続く高級ワインやトリュフの産地としても名高く、美しい田園風景を眺めながらのワインツアーも盛ん。スローフード発祥地のブラ(トリノ近郊)やミラノへのアクセスもよく、世界の美食家にも人気の高いエリアです。

ファッションセレブが訪れる旗艦店から目が離せない

「ボルサリーノ」旗艦店外観
「ボルサリーノ」旗艦店外観

ミラノのドゥオモ広場に建つ瀟洒なショッピングアーケード、通称「ガッレリア」。その一角にある「ボルサリーノ」の旗艦店は、訪れる顧客が世界で最も華やか。ミラノを訪れる機会があれば、帽子スタイルの参考にチェック!

ボルサリーノ本社工場
(C)Getty Images

アレッサンドリアの一等地、チェントカノーニにある旧「ボルサリーノ」本社工場の建物。2階には、世界の帽子文化に触れられる「ボルサリーノ帽子博物館」が。19〜20世紀に使われていた重厚な什器に並ぶコレクションの数も、圧巻。現在建物は地元の大学が使用しているため、入場には現地での予約が必須。


※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

ボルサリーノ ジャパン

TEL:03-5413-3954

PHOTO :
戸田嘉昭(パイルドライバー/静物)
EDIT&WRITING :
兼信実加子、佐藤友貴絵(Precious)