あなたは「プラットフォーム」という言葉から、何を連想しますか? 駅のホーム? それとも厚底パンプスでしょうか。どちらも正解です! 今回は、なんとなく理解しているつもりでも、どこかもやっと霧が晴れないビジネス用語のひとつ、「プラットフォーム」を取り上げます。

【目次】

さまざまな分野でそれぞれの「プラットフォーム」が存在!
さまざまな分野でそれぞれの「プラットフォーム」が存在!

【まずは「プラットフォーム」の概念を理解しよう】 

■「プラットフォーム」とは?

「プラットフォーム」とは、「基本構造」という意味で使われる言葉です。相対的な関係性を表す言葉であるため、「この△△のプラットフォームは○○だ」といったかたちで使われます。つまり、具体的に何がプラットフォームであるのかは、その対象によって異なるのです。

■語源は?

「プラットフォーム」は英語の[platform]が語源。【教壇や演壇、舞台や駅の乗降場】など、「一段高くなった平らな所」から転じて、【駅のホームやバスの乗降口】を指すようになったとされています。厚底パンプスが「プラットフォーム」と呼ばれるようになったのも、ここが語源です。

■「ビジネス用語」として使われるときの意味

ビジネスでは、「プラットフォームをつくったものが、その分野のルールを決める」といわれています(『これ一冊であとはいらない! 大人の語彙力大全』より)。

例えば、どこかの企業がiPhone用のアプリを新しく開発するとしましょう。アプリ自体は新しいものだとしても、システムの土台であるOSは、Apple のプラットフォームである『iOS』に合わせなくてはいけません。
つまり、ソフトウエアの「プラットフォーム」は、パソコンであればMicrosoftの『Windows OS』やAppleの『macOS』、スマホならばGoogleの『Android』とAppleの『iOS』が主流。これが「プラットフォーム」という概念です。

「GAFA」という言葉を目にしたことはありますか? この「GAFA」こそが、膨大な情報を収集し他の追随を許さない巨大IT企業、Google、Apple、Facebook(※)、Amazonです。このような企業は「プラットフォーマー」と呼ばれています。(※現Meta社)

また、例えば『楽天』や『Amazon』のように、オンラインショッピングを提供するシステムやアプリ・音楽・動画の配信サイトを「プラットフォーム」と呼ぶ場合もあります。
「プラットフォーム」とは文字通り、ターミナル駅のプラットホームのように、さまざまな商品や人、情報が行き交う場を指します。商取引や情報配信などのビジネスを行うための基盤なのです。


【ビジネスでの一般的な「使い方」がわかる「例文」3選】

前述の通り、「プラットフォーム」は相対的な関係性を表す言葉です。「この△△のプラットフォームは○○だ」という構造を前提として使われます。

■1:「○○に関するサービスは多様なプラットフォームで提供されています」

■2:「YouTubeは動画配信におけるプラットフォーム最大手だ」

■3:「自動車メーカーは複数の車種でプラットフォームを共有することにより、生産費用を圧縮しています」


【使われるシーンで「プラットフォーム」は変わる!】

■1:「車」関連の「プラットフォーム」

車にとっての「プラットフォーム」は、【車台(しゃだい)。シャーシー。また、自動車の異なるモデルで共通して使われる車台を中心とした基本的な構造】を指します。つまり、ボディや内装といったデザイン部分を除いた、車の土台です。

■2:「IT」「システム」関連の「プラットフォーム」

「IT用語」におけるプラットフォームは、ソフトウエアを動かすための土台、基盤を指します。例えば、文書作成や表計算などの「ソフトウエアを動かすためのプラットフォーム」は、OS(オペレーティングシステム)です。そして「OS を動かすためのプラットフォーム」は、パソコンやモバイル端末などです。

一般的に、異なる「プラットフォーム」ではソフトウエアは動作しません。例えば、Windows用のソフトウエアは、Macintosh などのOS を搭載したパソコンでは動作しません。とはいえ最近では、複数の「プラットフォーム」に対応したソフトウエアも登場しています。これらのソフトウエアは「マルチプラットフォーム」、あるいは「クロスプラットフォーム」と呼ばれます。

■3:「ゲーム」関連の「プラットフォーム」

ゲーム業界における「プラットフォームホルダー[platform holder]」は家庭用ゲーム機を販売する製造会社です。「プラットフォーマー[platformer]」とも呼ばれ、各メーカーが独自の規格で製品を製造しています。

■4:「福祉」関連の「プラットフォーム」

福祉分野においては、地域の福祉課題が複雑化・深刻化するなか、従来の自治会・町内会主体の取り組みに代わり、個々のテーマごとに活動団体やNPO(非営利組織)、企業などが、それぞれの強みを生かし、連携して課題に取り組んでいます。
こういった、地域の福祉課題を共有して協議する場を「プラットフォーム」と呼んでいます。

■シーンその5:「放送」関連の「プラットフォーム」

通信衛星放送などの運営会社、報道機関が配信したニュースをまとめて読むことができるウェブサイトやサービスのことを「プラットフォーム」と呼びます。従来のポータルサイトのほか、ニュースを掲載する専用のニュースアプリやソーシャルメディアなども含まれます。


【「プラットフォーム」の「言い換え」表現3選】

「基盤」「環境」は「プラットフォーム」と似た意味で使えます。「インフラ」も「基盤・環境」を指す言葉です。

■1:「基盤」 

「基盤」とは、【物事を成立させるための基礎となるもの】という意味です。産業基盤、経済基盤、社会基盤、のように使います。

■2:「環境」

IT分野では「環境」と言い換えることが可能です。例えば「ウィンドウズ・プラットフォーム」と「ウィンドウズ環境」は、ほぼ同じ意味。Windows OSが動作するハードウエアを指します。

■3:「インフラ」

「インフラ」は「インフラストラクチャー」の略語です。【道路や電気・水道、学校や福祉施設、電話やインターネットなどの社会基盤となるもの】を指します。「プラットフォーム」も「インフラ」も、「土台、基盤」というニュアンスで使われる言葉ですが、ITを中心とするビジネス用語としての意味合いが強い「プラットフォーム」に対し、「インフラ」は「生活に必要不可欠なもの」という点が強調されています。


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『プラットフォーム』とは、「共通の土台となる基本的な環境や設定」を意味します。ITビジネスだけでなく、一般的なビジネス戦略のひとつとしても使われる言葉です。さまざまな分野でそれぞれの「プラットフォーム」が存在するため、理解しにくい言葉ですが、「基本構造」という意味は共通しています。その場面では何を「プラットフォーム」と呼んでいるのか、前後の文脈から推測しましょう。

この記事の執筆者
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『デジタル大辞泉』(小学館)/『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)/『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館)/『イミダス』(集英社)/『外来語新語辞典』(成美堂出版)/『現代用語の基礎知識』(自由国民社)/『これ1冊であとはいらない! 大人の語彙力大全(中経の文庫)』(KADOKAWA)/『パソコンで困ったときに開く本』(朝日新聞出版) :