日本画や美術工芸品に彩られたミュージアムホテル「ホテル雅叙園東京」では、2022年9月25日(日)までアートイルミネーション「和のあかり×百段階段2022 ~光と影・百物語~」が開催中です。
会場の文化財「百段階段」は旧目黒雅叙園の3号館にあたり、1935年に建てられた木造建築で、2009年には東京都指定有形文化財に指定されました。現在この場所では、年に数回企画展が行われていますが、「和のあかり」は2015年に初開催されて以来、人気企画展のひとつ。今年で7回目を迎えます。
2022年の展示テーマは「光と影」。光によって生まれる影という異なるふたつの要素が織り成すコントラストを楽しめるほか、今回はストーリーテーマとして「百物語(怪談)」が設けられ、歩みを進めるうちに更なるストーリーを体験することが可能です。
百物語では、百番目の怪談が語り終えられたときに本物の怪異が現れるとされますが、今回階段を上り終えた先には何が見えるのでしょうか。
写真撮影OKな本イベントの、撮影ポイントや見どころを中心に、現地レポートで詳細をご紹介いたします。
知れば、より楽しめる!「和のあかり×百段階段2022~光と影・百物語~」の見どころ
■1:夏らしい灯りと音色に癒やされる「エントランスホール・プロムナード」
「和のあかり×百段階段2022」の入り口となるエントランスホールは、夕暮れをイメージし、金魚ちょうちんの温かみのある灯りが迎えてくれます。
山口県柳井市の民芸品である「金魚ちょうちん」は、2015年の第1回から登場している夏らしさを感じる可愛らしいちょうちんです。
エントランスホールからすぐのプロムナードは風鈴のエリアで、ちょっと夜風が吹いてきた夕方から夜にかけての時間帯をイメージ。
天井いっぱいに吊るされているのは、ガラス製の江戸風鈴、色とりどりの短冊がついている小田原風鈴、モダンなデザインの鋳物・真鍮風鈴の3種類で、美しい音色にうっとりしてしまいます。
風鈴の音色が届く範囲は魔除けになると考えられ、家の四方に置いて厄を払ったと言われていますが、本イベントでもこちらの風鈴エリアには「この場所で清めてから中へどうぞ」という意味があるそうです。
■2:照明作家が作り出す自然の怪しさや生命力を観る「十畝の間」
階段を上り最初の部屋「十畝の間」は、夜の入り口「薄暮のあかり」をテーマに、照明作家・弦間康仁さんによる展示が。
中央には松明(たいまつ)に見立てたあかりのモニュメントが出現。日中には見えなかった影が、松明のあかりによって欄間に映し出されます。障子には、木の蔓(つる)をイメージした照明のアートがなされ、そこはかとなく漂う自然の怪しさや生命力が光と影で描かれています。
暗さに目が慣れてくると、畳に映し出される「蜘蛛の巣」や「蝶」などもくっきり見えるようになるので、ゆっくり見てみてくださいね。
■3:息をのむほど煌びやかな竹あかりの世界「漁樵の間」
怪しさに包まれた夜の入り口を抜けると、次は思いもよらぬほど華やかな世界が広がります。
そんな煌びやかなあかりを作るのは、竹アートを通じて、良好な生態系、里地里山での人と自然の共生、そして周辺と自然とのつながりを取り戻し、後世に伝えることを目的に活動している「アカリノワ」。
放置竹林により生じる深刻な環境問題を、この竹あかりアートで活用することで明るい未来を目指し、展示を終えた竹灯籠は資源として再利用を行う同団体のサステナブルな取り組みにも注目です。
■4:歌舞伎に観る創造的なあかりを堪能したい「草丘の間」
煌びやかな部屋の次は、美しくも悲しくも怪しくもある「恋の情念」を、歌舞伎の世界を作る松竹衣裳及び歌舞伎座舞台により「創造的なあかり」として特別展示された部屋になります。
蜘蛛の巣や女性の側に、歌舞伎の演目で度々登場するという井戸も展示されていますが、中を覗き込むと、お面と目が合う怖い演出も。
井戸手前にスマホを置いて写真を撮ると、「お面・部屋の天井画・自分」を一緒に写すことができるので、試してみてください。
■5:造形作家が作る3つのオブジェに惹き込まれる「静水の間」
夢か現実か幻か……ただ心に問う静かな夜の世界を作り上げたのは、造形作家・中里繪魯洲さん。
「今地球には人間の手が加えられた馬しかおらず、野生の馬はいないと言われています。3つのオブジェは馬頭を載せた樹。生命の精霊のようなものが黙って存在する恐ろしさや、樹と人間、馬と人間の立場を逆さまに置き換えてみることも大切かもしれない……などの思いを感じてもらえたら」と、中里さんは話します。
一番手前にあるオブジェの球体にカメラを向けると、3つすべてのオブジェが綺麗に逆さまに映ります。これは、中里さんご本人に教えていただいた撮影ポイントなので、おすすめですよ。
■6:「アート×物の怪」の作品が多数観られる「星光の間、清方の間」
草木も眠る丑三つ時をイメージしたエリアは、創業200年以上の歴史あるちょうちん屋「伊藤権次郎商店」による、百物語の世界にふさわしい妖怪提灯の通路を抜けると、物の怪たちが宴会をする世界が広がります。
実は本当にこんな世界があるのかもしれない……と想像を膨らませながら、ひとつひとつゆっくり観たいアートが並びます。
そして、百物語の99の怪談話のラストに現れる青行燈の幽霊を描くのは、日本画家の園田美穂子さん。水墨画の技法と日本画の技法を合わせて、一筆一筆思いをこめて描いたという作品は、吸い込まれるような美しさです。
■7:花を生けるように装飾された、陽の光あふれる「頂上の間」
階段を上り終え、夜を抜けてたどり着いたのは、物の怪たちがいない陽の光あふれる朝でした。生命の息吹を感じる朝のひかりを手掛けたのは、華道家・大塚理航さんです。
大塚さんは「空間をひとつの器に見立てて、花をいけるように作る」と話されていましたが、部屋全体に施された華やかな装飾に心癒やされます。今までの部屋とはガラリと違った優しい色合いの作品を、存分に堪能してみてくださいね。
今回初の試みとして、いないはずの生き物の声や物音などが階段付近で聞こえるようなしかけが施されているそうです。初めての方はもちろん、一度行かれた方も毎回新たな発見ができるような楽しい企画展ですよ。
涼を誘う百物語と幻想的なあかりアート空間を楽しめる本イベントは、例年にも増して暑さが厳しい今年の夏におすすめしたいおでかけスポットです。この夏は「ホテル雅叙園東京」の百段階段で、ご家族やご友人とゆったりと涼やかな時間をお過ごしください。
問い合わせ先
- ホテル雅叙園東京
- 「和のあかり×百段階段2022~光と影・百物語~」
開催期間/~2022年9月25日(日) ※会期中無休
開催場所/東京都指定有形文化財 「百段階段」
営業時間/11:30~18:00(最終入館17:30) ※8月21日(土)は17:00まで(最終入館16:30)
料 金/当日券 ¥1,500 - TEL:03-3491-4111(代表)
- 住所/東京都目黒区下目黒1-8-1
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 篠原亜由美
- EDIT :
- 小林麻美