2021年に開催された東京2020オリンピック・パラリンピックは、大会理念に「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」を掲げ、聖火の最終点火者には「D&Iの象徴」として、テニス女子の大坂なおみ選手が選ばれました。現在では働き方改革の柱としてよく耳にする「ダイバーシティ」ですが、あなたは正確な意味を知っていますか? そもそもの意味も詳しく解説しますので、ビジネスを活性化するカタカナ用語として、ぜひ活用してみてくださいね。

【目次】

これからのビジネスに於いて、「ダイバーシティ&インクルージョン」はとても大切!
これからのビジネスに於いて、「ダイバーシティ&インクルージョン」はとても大切!

【「ダイバーシティ」の「基礎知識」】

■「ダイバーシティ」を簡単にいうと「多様性」ってこと!

まずは言葉本来の意味をチェックしてみましょう。「ダイバーシティ」[diversity]には3つの意味があります。

  • ① 多様性。相違点。
  • ② 企業で、人種・国籍・性別・年齢を問わずに人材を活用すること。
  • ③ 携帯電話などで、複数のアンテナで電波を受信し、受信状況のよい方を使う技術。

何かを「こうあるべき」と型にはめたり、型にはまらない人を切り捨てたり、といった考え方とは、真逆に位置するのが「ダイバーシティ」です。「ダイバーシティ」は、「多様性を受容し、それぞれの価値を生かすこと」と理解しましょう。

■ビジネスシーンで使われるときの意味

ビジネスシーンでは、主に②の意味で使われていますが、実はこれ、正確には「ダイバーシティ&インクルージョン」[diversity and inclusion(多様性と受容)]を指しています。

社員一人ひとりの違い(人種・国籍・性別・年齢・宗教など)を「多様性(=ダイバーシティ)」として受容し、それぞれの価値を尊重し生かし合う(=インクルージョン)こと。組織の生産性や競争力を高める経営戦略として認知されています。

もともとはアメリカで、女性や多様な人種、性的マイノリティなどの率先的な採用、平等な処遇の実現を目的に広がった考え方ですが、現在では年齢や価値観、障害の有無なども含めた、より幅広い多様性を意味する言葉として、世界的な広がりを見せています。

日本でも、少子高齢化による労働人口の減少やさまざまなニーズに対応した人材確保の観点から、高齢者や外国人などの雇用を増やすなど、大企業を中心に積極的に取り組むようになってきています。


【別な言葉に言い換えられる?「類語」表現は?】

■多様性  ■バラエティ  ■共存共栄

「バラエティ」も「多様性」と訳されますが、こちらは「種類が豊富な」といった意味で使われることが多い言葉です。「ダイバーシティ&インクルージョン」の特徴は、単に多様な人材が集まるだけでなく、「共存共栄」することといえます。


【ビジネスでの一般的な「使い方」がわかる「例文」3選】

■1:「当社もダイバーシティに配慮した取り組みを積極的に進めるべきだ」

「ダイバーシティ」は組織改革の目標として使われることの多い言葉ですが、同時に組織のイメージアップ戦略の一環として活用される側面もあります。

■2:「ダイバーシティがこれほど話題になっても、わが社の役員には女性がひとりもいない」

組織の人事制度について言及するとき、「ダイバーシティ」の概念が取り上げられます。

■3:「ダイバーシティと“女性の活躍”という言葉は、同義ではない」

「ダイバーシティ」は、性別だけでなく、人種や年齢、価値観、障害の有無なども含めた幅広い人材の活躍促進を意味する言葉です。日本では、女性の「ジェンダーギャップ指数」が低い(『世界経済フォーラム』より)ことから、“女性の活躍”という、限られた意味で使われるケースも見受けられるようですが、同義ではありません。


【知っておきたい「ダイバーシティ」関連「用語」】

■「ダイバーシティ・マネジメント」とは?

「多様な人材活用」のこと。性別、年齢、国籍、人種・民族、宗教、障害の有無、性的指向・性自認といったあらゆる属性について、ダイバーシティ(多様性)を理解・評価して人材を活用する経営手法です。「ダイバーシティ&インクルージョン」とほぼ同義に使われています。

■「ダイバーシティ教育」とは?

「ダイバーシティ」の考え方をを理解し、相互に尊重する態度や行動を促す教育です。

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東京2020大会で注目を集めた「ピクトグラム」誕生のきっかけは、1964年の東京オリンピックでした。「多言語対応のベース」として、今や世界中で進化&発展している「ピクトグラム」が日本発祥だなんて、なんとなく誇らしい気分です。一人ひとりの個性を生かし、能力を発揮できる組織、国をつくることは、組織の利益を生むだけでなく、最終的に私たち個々が生きやすい社会をつくることにつながります。これからも「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」を、正しい意味で広げていきたいですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館)/『現代用語の基礎知識』(自由国民社)/『「知ったかぶり」を解消する! ビジネス用語図鑑(WAVE出版)//『これ1冊であとはいらない! 大人の語彙力大全』(中経の文庫)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP)/『カタカナ語 すぐ役に立つ辞典』(河出書房新社)/『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』(宝島社) :