奈良時代や平安時代に花開いた、日本独自の仏教文化芸術の最高峰とも言える仏像。そのなかでも「普段は観られない」仏像が集う展覧会が、東京国立博物館 平成館で開催されました。

その名も、『仁和寺と御室派のみほとけ―天平と真言密教の名宝―』展。

歴代の天皇家に代々大切にされた仁和寺(京都市右京区)に伝わる国宝の秘仏や、天皇の直筆の書。仁和寺を中心とした真言宗御室派の寺院に所蔵され、普段は公開されていない美しい仏像。これらレアな仏像を間近で観ることができる展覧会でした。

■1:「にんなじ」「おむろは」って何⁉

ところで『仁和寺と御室派のみほとけ―天平と真言密教の名宝―』と言っても、そもそもその読み方がパッとはわかりませんよね。仁和寺は「にんなじ」、御室派は「おむろは」と読みます。あまり聞き慣れない、でも、なんだかありがたい感じのするコトバですが…。

仁和寺外観
仁和寺外観

「仁和寺=にんなじ」は、京都市右京区の石庭として有名な竜安寺のすぐ近くにある、由緒あるお寺です。平安時代の仁和4年(888年)に、字多天皇により創建され、開祖は空海、真言宗のお寺です。この字多天皇が譲位(引退)後、ここに僧坊(御室=おむろ)を造営して隠棲したため、仁和寺の流れをくむ一派を「御室派=おむろは」と呼ぶようになったのです。

今回始まった『仁和寺と御室派のみほとけ―天平と真言密教の名宝―』展は、この仁和寺の創建時の本尊・国宝「阿弥陀如来坐像および両脇侍立像」をはじめ、御室派の寺院が所蔵する名宝が東京にやってくるのです!

■2:2大スター仏像について学んでおこう!

なんといっても最大の目玉は、仁和寺創建(888年)当時の本尊である、国宝『阿弥陀如来坐像』。腹前で両手を重ね合わせる定印という手の形は、制作年のはっきりしている日本の阿弥陀如来像のなかでは、最古のもの。表情も優美で、もとは中国から伝来した仏像の様式が、次第に日本的な〝和様彫刻〟へと変わりつつあることを証明しています。

国宝「阿弥陀如来坐像」平安時代・仁和4年(888) 京都・仁和寺蔵
国宝「阿弥陀如来坐像」平安時代・仁和4年(888) 京都・仁和寺蔵

次に、大阪の葛井寺(ふじいでら)所蔵の国宝『千手観音菩薩坐像』。天平彫刻の最も完成された作品として高く評価されている秘仏です!

国宝「千手観音菩薩坐像」奈良時代・8世紀 大阪・葛井寺蔵 展示期間:2月14日~3月11日
国宝「千手観音菩薩坐像」奈良時代・8世紀 大阪・葛井寺蔵 展示期間:2月14日~3月11日

本展覧会には、ぜひオペラグラスを持っていくことをおすすめします。というのも、この、『千手観音菩薩坐像』は、大手・小手あわせて1041本をそなえており、さらに、それぞれの小手の上に、超絶技法がこらされたミニマムな仏像や宝物がズラリと載っているからです!

しかも、小手はひとつひとつ、微妙に指の形(印の形)が異なるという凝りよう。オペラグラスがあれば、その凄さを実感しやすくなります。ちなみにこの、千手観音菩薩坐像の公開期間は2月14日~3月11日の約1か月間限定となっていますので、ご注意を。

■3:ほかにも国宝や重要文化財がズラリ

仁和寺所蔵の国宝『薬師如来坐像』も見逃せません。白檀をミリ単位で精緻に彫りあげ、そこに金箔で細やかな装飾を施した、息を飲むほど美しい秘仏なのです! 火災によって焼失したものを、1103年に、当時の第一線の仏像制作集団であった仏師・円勢とその子・長円が、すぐさま造り直した名品です。

その他、兵庫県西宮市の神呪寺(かんのうじ)所蔵の秘仏本尊である重要文化財『如意輪観音菩薩坐像』も必見!一本の木から彫りあげた「一木造」で、細い身体をしなやかにくねらせた見事な造形美を誇ります。神呪寺では、毎年たった1日、5月18日にだけ公開される秘仏です。

「一木造」の逸品といえば、こちらの大阪・道明寺の国宝『十一面観音菩薩立像』も名品中の名品です。

国宝「十一面観音菩薩立像」平安時代・8~9世紀 大阪・道明寺蔵
国宝「十一面観音菩薩立像」平安時代・8~9世紀 大阪・道明寺蔵

一本の木から、どうやったらこんなに美しい衣服のひだや、垂れ下がった、ひらひらしたリボンのようなものが彫り出せるのか?! 平安時代の彫刻のレベルの高さに、ため息が出てしまいます。

■4:撮影OKの仁和寺観音堂再現コーナー

会場内には、現在改修工事中の仁和寺の観音堂を、精緻な高精細画像で再現したコーナーが。しかも、京都の観音堂にある仏像たちをそのまま安置してあり(仏像は本物!)、ここだけは撮影も自由。パートナーやご友人と記念撮影をするのにもぴったりの場所です。

以上、『仁和寺と御室派のみほとけ―天平と真言密教の名宝―』展の魅力を主に4つのポイントでご紹介しました。

問い合わせ先

  • 特別展『仁和寺と御室派のみほとけ-天平と真言密教の名宝-』 
  • 会期/2018年1月16日~3月11日 ※終了
  • 会場/東京国立博物館 平成館
  • 住所/〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
  • 開館時間/9:30〜17:00
  • (金・土曜日は21:00まで、入館は閉館の30分前まで)
  • 休館日/月曜日(ただし、2月12日は開館)、2月13日
  • 入館料/¥1,600(一般)
  • TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
この記事の執筆者
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WRITING :
古澤史朗
EDIT :
谷 侑希美