「顧客や株主、取引企業との信頼関係をより強固なものにするため、当社のガバナンスを見直して強化していきます」って、何を見直し強化するのか正しく理解できますか? 不祥事や事件が起きた際などに、会社の上層部や政治家、知事の会見などでもよく聞かれるこの「ガバナンス」について、わかりやすく解説します。
【目次】
【「ガバナンス」を一から理解するための基礎知識】
■もともとは「統治」や「管理」「統制」を表す英単語です
「ガバナンス」は英単語[governance]からきたカタカナ語。もともとの意味は、「統治・支配・管理・統制」などを表します。
■簡単にいうと「不正や経営暴走を防ぐ仕組み」のこと!
日本では、「コーポレートガバナンス(企業統治)」の意味で使われることの多い、カタカナビジネス用語です。
産地や原材料、製造日の偽装など、大企業による不祥事が続いた2000年頃から注目されるようになった用語です。経営陣の暴走や組織ぐるみでの不正隠蔽、情報漏えいなどによる経営リスクを防ぐには、「ガバナンスの強化」が必須というわけ。
■「ガバナンス」は具体的に何をする?
「ガバナンスを強化」するために、「リスクマネジメントを向上させる部門の設置」や「各部門の役割と指示系統を明確にする」などが行われます。これが「ガバナンス体制を構築して強化する」ということ。ときには社外機関なども介入して、監視体制を整えます。
「ガバナンス体制の強化」は、企業が成長を遂げて利益を生み続けるために不可欠な取り組みです。なぜなら、不祥事や不正を未然に防ぐだけでなく、「健全な経営が円滑に進む」「優良企業として認知される」「利害関係者の利益が上がる」といったメリットがあるからです。
【すぐに使える!「ガバナンス」の「実例」5選】
「ガバナンス」を実際に使う際にはどんな文章になるのでしょうか。「ガバナンスの強化」や「ガバナンス効果」などを用いた、下記の例文をチェックしてみてください。
■1:「ガバナンスの強化を図るため、経営戦略や事業計画を一から見直します」
■2:「コーポレートガバナンスの体制強化には、外部機関の介入も検討する必要がありそうだ」
■3:「従業員の意欲向上には、労働環境を改善するガバナンス体制が不可欠です」
■4:「不祥事や情報漏えいなどと無縁でいられる理由のひとつには、ガバナンス効果が挙げられる」
■5:「企業の不祥事は、経営陣のガバナンス欠如によるところが大きい」
【おさえておきたい「ガバナンス関連用語」と「言い換え表現」】
「コーポレートガバナンス」や「ITガバナンス」など、“ガバナンス用語”もよく使われるのでしっかり理解しておきましょう。
■コーポレートガバナンス
企業ぐるみの違法行為を監視したり、権限が一部に集中することによる弊害をなくしたりして、企業を健全に運営すること。またその仕組み。「企業統治」とも言い換えられます。
■ITガバナンス
企業のコンピュータシステムの導入・運用・管理に際し、経営的観点から適正に取り組むこと。また、その仕組みをいいます。「ICTガバナンス」とも。
■インターネットガバナンス
インターネットの運営・管理のために必要な技術を、設計・管理していくための政策・体制のこと。
■ガバナンスファンド
投資対象企業の「コーポレートガバナンス」に着目した投資方針に基づいて運用されるファンド。「企業統治ファンド」とも呼びます。
■パブリックガバナンス
政府や地方公共団体などの公的機関が適正に運営されるよう、国民がその公的機関の意思決定を規律付けること。またその仕組みのこと。
■グローバルガバナンス
主権国家だけでなく、国際機構やNGO(非政府組織)、多国籍企業などの非国家的主体の協力も含め、地球規模の問題解決を図ろうとする考え方。
【使い方にはご注意を! 「ガバナンス」の「類似語」】
似たようなビジネスシーンで使われる下記のワードにも注目して、適切なビジネス用語を使いましょう。
■コンプライアンス
「法令遵守」ともいいます。特に企業がルールに従って公正・公平に業務を遂行すること。
■リスクマネジメント
経営活動に生じるさまざまな危険を、最少の費用で最小限に抑えようとする管理手法。「危機管理」「危険管理」「リスク管理」とも。
■内部監査
企業内部に経営者に直結して置かれる職務。経営の諸活動が合法的・合理的に行われているかどうかを検討・評価して問題点を指摘し、効率の高い経営を提案します。
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ビジネスや政治・行政のシーンでよく用いられている「ガバナンス」は、現代社会に不可欠な体制を表す言葉でした。組織や個人が外部からの影響を受けることなく、自ら規律を定め、自らの意思で、自らの行動を律する「セルフガバナンス」も求められてきています。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)/『情報・知識imdas』(集英社)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『現代用語の基礎知識』(自由国民社)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP文庫)/『現代ビジネス用語事典』(日本文芸社) :