誰かに何かを頼むとき、あるいは入社や転勤などで組織に新たに加わるとき。私たちは必ずといっていいほど、自然に「よろしく願いいたします」と口にしています。日々のビジネスメールにおいても、「よろしく〜」を書かない日などないのでは? 今回は私たちの生活に欠かせない「よろしく」がテーマです。知ってるようで知らないこの言葉を、一緒に学びましょう!

【目次】

どちらが正しい? 答えは「常用漢字表」にありました!
どちらが正しい? 答えは「常用漢字表」にありました!

【「よろしく」と「宜しく」はどう違う?覚えておきたい「基礎知識」】

■そもそも「よろしく」ってどういう意味?

まずは『デジタル大辞泉』で、「よろしく(宜しく)」の項を見てみましょう。

1 ちょうどよいぐあいに。程よく。適当に。
2 人に好意を示したり、何かを頼んだりするときに添える語。
3 「よろしくお伝えください」の意で、別の人への好意を伝えてもらうときに用いる語。
4 (「よろしく…べし」の形で)当然。ぜひとも。
5 上の内容を受けて、いかにもそれらしく、の意を表す。

私たちが日常使用している「よろしく」は、主に2と3の意味でしょうか。まれに「よろしく取り計らってくれ」のように、1の意味でも使われています。ごくごく親しい人との会話では、単に「よろしく!」と使うこともありますが、これは2のように、本来は【人に何かを頼むときに添える語】だった「よろしく」の、あとに続く「お願いします」が略されたフレーズだったのです。

■「宜しく」の表記は漢文由来だった!

上記の4、【当然。ぜひとも】の意味で用いられる「宜しく」は、実は漢文の訓読語からきています。もともと「宜」という漢字を「よろしく…べし」と読んでいたことから、現在でもこう表記されているのです。言葉としては「よろしく」と「宜しく」は同じ意味です。


【ビジネスで「宜しく」を使ったほうがいいシーンはある?】

結論からいえば、ビジネスでは「よろしく」の表記が正解です。

■「よろしく」を使うのが正解とする根拠は?

私たちが一般的に使用している漢字は、「常用漢字」と呼ばれています。実はこの「常用漢字」は、「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示す」「内閣告示第2号」として、一覧表が告示されています。そして、この「常用漢字表」が現在、公的な場での漢字使用の目安となっているのです。

常用漢字表で「宜しく」を調べてみると、記載がありません。ただし、「宜」の音読みである「ギ」は、記載されています。おわかりいただけたでしょうか? 公用文では、「常用漢字表」に従って漢字を用いることが定められているため、「宜しく」の使用は望ましくないとされるのです。


【「よろしく」の理解を深める「例文」4選】

「よろしく」がよく使われる4つのシーンに分けて、例文をご紹介しましょう。

■1〈自己紹介の挨拶〉:「○○社の△△と申します。どうぞよろしくお願いいたします」

■2〈仕事などの依頼〉:「新企画についてご提案させていただきました。ご検討の程、よろしくお願いいたします」

■3〈文末の締めとして〉:「今後とも、どうぞよろしくお願いいたします」

■4〈別の人への好意を伝えてもらうとき〉:「○○さんに、よろしくお伝えください。


【「よろしく」の「言い換え」表現は?】

挨拶の言葉である「よろしく」は、言い換えが難しい言葉です。記事の最初にあげた1の意味であれば、「程よく」「適当に」などが挙げられます。

■程よく ■適当に ■首尾よく

「よろしく」は「よろしくお願いします」を略したフレーズですから、「お願いします」と言い換えることも可能です。

■お願いします ■頼みます

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「よろしく」と「宜しく」。なんとなく、漢字のほうが正式なのでは…と勘違いしていた方も少なくないのでは? この連載では「知っているつもり」の日本の言葉を詳しく解説していきます。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!

この記事の執筆者
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参考資料:「公用文における漢字使用等について」(平成22年11月30日付け内閣訓令)/「常用漢字表」/『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :