更年期の不調を少しでも和らげるために知っておきたいこと、医療ジャーナリストの増田美加さんが実体験を基にアドバイス【「更年期」にやるべき3つのTo Do】

 

女性ホルモンが旅立ちつつある今、ここから自分を守れるのは自分だけ。自分のためにできることはなんでしょうか?

医療ジャーナリストの増田美加さんにお話しいただきました。

増田美加さん
医療ジャーナリスト
女性医療ジャーナリスト。エビデンスに基づいた健康情報を患者視点で多数発信。講演やセミナーにも多数登壇する。乳がん経験者でもあり、がんや検診についての啓発活動も。著書に『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)など。

To Do 1 正しい治療法を見極めること

「更年期」の不調に悩んだら、「ホルモン補充療法(HRT)」はファーストチョイスです。

更年期の不調に悩んだら、選択肢のひとつとして真剣に考えていただきたいのが、『ホルモン補充療法(HRT)』です。“ホルモン治療”というと、なにか怖いものというイメージをもつ人もいますが、実際はごく少量のエストロゲンを補うもの。補充する女性ホルモンは生理があったときに自分の体がつくっていた3分の1ほどの量にすぎません。最小限のエストロゲンを補うことで、急激な減少カーブをゆるやかにし、症状を和らげるイメージです。

ただし、更年期の症状かな、と思っても、注意しなくてはならないことがあります。それは、別の病気ではないことを確認すること。更年期の症状のように見えて、よく似た病気という可能性もあるからです。私は手の関節の痛みが出たときに、自らリウマチを疑い病院で検査を受けました。そこで関節リウマチでないことがわかったので、更年期の治療に入ったのです。逆に、更年期の治療を行ってよくなれば、更年期の症状だったと診断できる、ということもあります。(増田美加さん)

 

To Do 2 : 我慢せず治療を受けること

自分がツライと感じたら、どんな症状も治療の対象。イライラも治療で一変する可能性はあります。

『ホルモン補充療法(HRT)』は、健康保険が使え自己負担も少ない選択肢です。一般的に、ホットフラッシュや滝汗なら2週間程度で効果が出始め、3か月くらいで改善する人が多いといわれています。骨量の低下や関節の痛みにも効果がありますし、肌の潤いなど美容面や気分の落ち込みなどメンタル面の不調にも役に立ちます。しかし、欧米では30~40%もの女性が受けているにもかかわらず、日本ではいまだ2%程度にとどまっているのが現状です。

実は、私自身は更年期とほぼ同時に乳がんを発症し、『ホルモン補充療法(HRT)』を選択できませんでした。私のような事情がある人には、『漢方薬』という選択肢もあります。さらに、精神面がツライ場合には、『向精神薬』をプラスする選択もアリです。知らない人も多いのですが、抗うつ薬や抗不安薬や催眠鎮静剤などは、婦人科でも普通に処方されます。

しないでほしいのは、我慢すること! イライラが止まらない、疲れがとれない、どんな症状でも、自分がツライと感じたら治療の対象になるのです。(増田美加さん)

 

To Do 3 : 今までの生活を変えること

食生活や運動の見直しはもちろん、生き方まで、人生を見直すチャンスです!

人生100年といわれるけれど、そうだとしたら更年期はちょうど折り返し地点、まだまだ50年も先があるのです。更年期はこれまでの生き方を見直すいい機会ともいえます。私自身は『ホルモン補充療法(HRT)』ができなかったぶん、食事や運動などの生活の改善を徹底しました。 

食事に関しては、生活習慣病の予防を考慮した内容にすることが最優先。女性ホルモンが低下すると、内臓脂肪が蓄積しやすく、高血圧、高血糖、脂質代謝異常のリスクが上がるからです。ベストといえるのはズバリ和定食! 私も玄米に味噌汁に魚、野菜という和食の基本を守っています。

次に、運動です。私は体育祭の雨天中止を願っていたほどの運動嫌いでしたが、ウォーキングから始めて、ついにはフルマラソンに挑戦するまでになりました。今も毎朝30分のストレッチと筋トレから一日をスタートします。さらに、週に4回は、ヨガやピラティスに行き、定期的に運動しています。体を動かすことは、更年期の不調を和らげるエビデンスが得られています。(増田美加さん)

PHOTO :
Getty Images
ILLUSTRATION :
ミヤギユカリ
EDIT&WRITING :
木更容子、佐藤友貴絵(Precious)