エルメス財団主催による、クリスチャン・ヒダカ(1977年千葉県野田市生まれ、イギリス・ロンドン在住)とタケシ・ムラタ(1974年アメリカ・シカゴ生まれ、ロサンゼルス在住)の二人展「訪問者」が、2022年10月21日(金)より銀座メゾンエルメス フォーラムにて開催されます。

ふたりのアーティストがコンテンポラリー・アートのなかで見せる“現実と虚構”

日本にルーツを持ちつつも、英語圏の文化の中で育ったクリスチャン・ヒダカとタケシ・ムラタ。本展は、現実と虚構の狭間を問う制作を続けるふたりのアーティストが紡ぐ世界を通し、現代美術の中に見るフィクショナルな構造を、それぞれの“ナラティヴ”で浮かび上がらせるものです。

クリスチャン・ヒダカの作品「Tambour Ancien」
Christian Hidaka『Tambour Ancien』2021、Oil tempera on linen、251×178.5cm、Photo:Hugard & Vanoverschelde

これまで、劇場とその建築、西洋の絵画史への参照を特徴とした絵画を制作してきたクリスチャン・ヒダカ。とりわけ、ルネサンスの思想や芸術に興味を持ち、遠近法や幾何学的な空間記述といった科学的な側面に加え、異教や魔術といった古代思想との関連にも大きな関心を寄せています。

近年では、絵画と劇場の類似性を発展させ、だまし絵のような入れ子式の構造の中に、古今東西のさまざまな要素を共存させた独創的な世界を描き出しています。

クリスチャン・ヒダカの作品「Siparium」
Christian Hidaka『Siparium』2020、Oil tempera on linen、178×255cm、Photo:Vincent Everarts

本展では、シンメトリーな構造の中に、ピカソのアルルカン、フラ・アンジェリコの作品のディテール、イタリア人建築家のカルロ・スカルパのフレームなどを反復させた作品たちが、ハイブリッドな魅力あふれる不思議な世界へと誘います。

クリスチャン・ヒダカの作品「Wall Niche (Scarpa / de Caus)」
Christian Hidaka『Wall Niche (Scarpa / de Caus)』2021、Oil tempera on linen、212×135.5cm、Photo:Florian Kleinefenn

一方、主にデジタル・メディアを用いて、映像作品や立体作品などで独自のリアリズムを追求するタケシ・ムラタ。現実世界を流動的なものと捉えるムラタは、分解、溶解、消滅、オーバーラップといったCGI技術の「ディゾルヴ」を通した作品世界を繰り広げています。

タケシ・ムラタの作品「Still from Larry Loop #7」
Takeshi Murata『Still from Larry Loop #7』2022、Digital video; Continuous loop、Collaboration with Christopher Rutledge

本展に際し、ムラタは最新技術であるWeb3.0やNFTによってもたらされるメタ世界への関心から、バスケットボールをする「ラリー」という犬の映像作品を制作。

タケシ・ムラタの作品「Larry Cove」
Takeshi Murata『Larry Cove』2021、Digital video; Continuous loop、Sound by Black Dice

液体シミュレーターでレンダリングされた「ラリー」は、一見彫刻のように見えますが、メタ世界にしか存在しない、ムラタ自身の姿を映し出したものでもあります。


以上、エルメス財団主催による新たな展覧会「訪問者」についてご紹介しました。“現実と虚構”を巧みに用い、ふたりのアーティストが紡ぎ出した独創的な世界へ、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

<展覧会詳細>

※外出時には新型コロナウイルスの感染予防対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

問い合わせ先

銀座メゾンエルメス

TEL:03-3569-3300

この記事の執筆者
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WRITING :
池尾園子