「厚かましいお願いで恐縮ですが…」というフレーズ、ビジネスシーンでよく使いませんか? 定型文のように気軽に用いているかもしれませんね。実際、大変便利な言葉ではあるのですが…。なじみのある言葉やフレーズこそしっかり意味を把握して、的確に使用したいもの。今回は「厚かましい」について学び、語彙力をアップしていきましょう。

【目次】

「厚かましい」の多用はご法度!
「厚かましい」の多用はご法度!

【「厚かましい」を正しく理解するための基礎知識】

■意味

「厚かましい」とは、「行動や態度に慎みがない」「ずうずうしく遠慮がない」「恥知らず」など、行為の様子を表す形容詞です。

■語源・由来

構成は「厚」+「かまし」で、「厚」をもとにして形容詞にした言葉です。
「厚」という漢字は、暑い、大きい、多い、重い、長い、濃いなどを示すもの。
「かまし」は、「やかましい」などにも使われる形容詞をつくるための接尾語。この「かまし」を接尾語にもつ形容詞はネガティブな意味が多く、「厚かましい」もそのひとつです。

「厚かましい」は、「面(つら)の皮が厚い」という意味から「厚皮」、それが「厚かわしい」と転じ、「厚かましい」へと発展したといわれています。しかし語源説はいくつかあり、「面厚構へしく(つらあつかまへしく)」の略とする説や、図々しいことを意味する「厚顔(こうがん)」から「厚かましい」という言葉ができたとも。

■類似語「厚かましい」「図々しい」「ふてぶてしい」の微妙な違い

「他人の迷惑を顧みず、自分勝手で無遠慮である」という意味で、「厚かましい」「図々しい」「ふてぶてしい」は類似語ですが、微妙にニュアンスが異なります。

・厚かましい:恥知らずで遠慮がない
・図々しい:相手の都合や気持ちを考えない身勝手な振る舞い
・ふてぶてしい:無遠慮かつ大胆で、怖いもの知らず

■似ているようで違う「おこがましい」

「おこがましい」は、思い上がっているさまを表す言葉。漢字では「烏滸がましい」あるいは「痴がましい」と書きます。「おこがましい言い分と思われるかもしれませんが」などと使います。

また、図々しいさまを示す形容詞に「えげつない」がありますが、こちらは「図々しく(さらに)下品である」様子を表す際に使用されます。


【「厚かましい」を使用した「シーン別ビジネス例文」】

では、実践に役立つ例文を見ていきましょう。シチュエーションやシーンを想定してご紹介します。

■通常の依頼などに使える「日常的な例文」

・厚かましいお願いで恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。

・厚かましくも、今回はご好意に甘えさせていただきます。

■こちらの都合を優先してほしい「おねだり系の例文」

・ご多用のところ厚かましくて大変恐縮ですが、明朝までに仕上げていただけませんでしょうか。

・厚かましいのは承知のうえで、お願い申し上げる次第です。

■相手の都合を無視して、無理を承知でお願いする「緊急・非常時の例文」

・貴殿のご都合も顧みず厚かましくも申し上げますが、どうぞお力をお貸しいただきたくお願いいたします。

・厚かましいにも程があると承知のうえで、この度ばかりはおすがりするしか手立てがございません。

■申し訳ない気持ちを伝えたい「平身低頭な例文」

・厚かましいお願いで大変申し訳ございません。

・厚かましくも勝手を申しまして、大変恐縮に存じます。


【「厚かましい」と同じ意味の「言い換え例文」】

■言い換え例文1:「このたびのぶしつけなお願いをお聞き入れいただき、誠にありがとうございます」

■言い換え例文2:「ご迷惑なお願いとは存じますが、ご高配くださいますと幸いでございます」

■言い換え例文3:「無理をご承諾いただき、感謝の念に堪えません」

■言い換え例文4:「非礼なお願いをお許しくださいませ」

■言い換え例文5:「部下の図々しい依頼を、未熟者の熱意と受け取っていただけましたら幸いです」


【出身地によって違う?方言としての「厚かましい」】

地域によっては「厚かましい」が方言として使われているのでご紹介します。基本的には好ましい状態を表すものではないのでご注意を!

・京都府、岡山県、徳島、香川など → 騒々しい、うるさい、煩わしい

・兵庫県の一部地域 → 乱雑、粗末、下品、忙しい、そそっかしいなど

・徳島県の一部地域 → 立派、厳めしい


【ビジネスシーンでの「厚かましい」の「注意点」

・自分自身(あるいは身内)の行いに対してのみ使う

・何かを依頼する際に、申し訳ないという気持ちを込めてへりくだって使う

・使いすぎは禁物!

 

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仕事とはいえ、無理なお願い事をするのは気が引けるものですよね。そんなときに気持ちを奮い立たせてくれるフレーズのひとつが「厚かましいお願いで恐縮ですが」ではないでしょうか。毎回毎回では効力もありませんが、ここぞというときにはぜひ! 

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :