【目次】

【「存じます」の「読み方」「意味」】

「読み方」

「存じます」は「ぞん-じます」と読みます。

■「意味」

「存じます」は、動詞「存じる」と助動詞「ます」に分けられます。

「存じる」にはふたつの意味があります。
「知る」「承知する」の意の謙譲・丁寧語。「私の存じることを申し上げます」のように使われます。
「思う」「考える」の意の謙譲・丁寧語。「お変わりなくお過ごしのことと存じます」のように「ます」を伴ったかたちで、主に目上の人に向かって改まった気持ちを込めた丁寧な表現として用いられることがほとんどです。

つまり、「存じます」とは、「〜と知っています」「〜と思います」「〜と承知しています」などをへりくだって表現した言葉です。


【「思います」「存じ上げます」との違い】

■「思います」と「存じます」の違いは?

「存じます」は「存じ・ます」と分解でき、「存じる」は「思う」「知る」の謙譲語、「ます」は丁寧な断定の助動詞です。つまり、「存じます」は「思っております」「知っております」「承知しております」といった意味で、「思います」の謙譲表現と言えます。

■「存じ上げます」と「存じます」の違いは?

先に説明した通り、「存じ上げます」は「謙譲語Ⅰ」の「存じ上げる」に丁寧な断定の助動詞「ます」をつけたもの。「存じます」は「謙譲語Ⅱ」の「存じる」に、同じく「ます」をつけたものです。

ちなみに「存じております」は二重敬語では?と思う人もいるかもしれませんね。二重敬語とは、ひとつの語について、同じ種類の敬語を二重に使ったもの。例としては、尊敬語をふたつ重ねた「お読みになられる(お読みになる+読まれる)」「おっしゃられる」「お帰りになられる」などがあげられます。
「敬語の指針」によれば、 2つ(以上)の語をそれぞれ敬語にして、接続助詞「て」でつなげたものは、「二重敬語」とはならず、「敬語連結」と呼ばれています。
例としては「存じております」のほか、「お読みになっていらっしゃる」「ご案内して差し上げる」なども「敬語連結」にあたります。

■改めて「敬語」をおさらい!

現在、日本語の敬語表現は5種類に分けられています。これは2007年に文化審議会が答申した「敬語の指針」に沿ったもの。1990年より以前に生まれた人の多くは、【敬語は「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3種類】と学習したはずなので、少しわかりにくいですね。5種類の敬語とは、「尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語」。大きなポイントは、以前の学校教育ではひとつにまとめられていた謙譲語が「謙譲語Ⅰ」「謙譲語Ⅱ」に分けられたことです

「謙譲語Ⅰ」「謙譲語Ⅱ」は、どちらも自分側の動作をへりくだって表しますが、「謙譲語Ⅰ」は「動作の対象(行為が向かう先)を敬う」謙譲語。敬意の対象が明確です。です。これに対し、「謙譲語Ⅱ」は動作の対象が特に何であるかを考慮しない表現です。例をあげてみましょう。

       謙譲語Ⅰ        謙譲語Ⅱ
・知る   存じ上げる        存じる
・行く   参上する 伺う      参る
・言う   申し上げる        申す

「謙譲語Ⅰ」と「謙譲語Ⅱ」の違いを、例文でみてみましょう。
(1)御社のご評判は、かねがね存じ上げております。(謙譲語Ⅰ)
(2)一般常識の範囲で、ごく基本的な情報は存じております。(謙譲語Ⅱ)

(1)は明確に「御社」に対して敬意を表していますが、(2)の敬意の対象は聞き手です。「存じております」は「知っています」よりも丁寧なだけでなく、聞き手にいっそうの敬意を示すはたらきをもっているのです。


【「使い方」がわかる「例文」】

■1:「弊社からの提案を高くご評価くださり、大変うれしく存じます」

■3:「弊社までお越しいただけるとありがたく存じます」

■4:「ご使用の感想などいただけますと、幸いに存じます」 

■5:「来週の月曜日を目処にお返事いただきたく存じます」

■6:「お忙しいと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします」

■7:「残念ながら、それは存じませんでした」

■NG:「御社のご評判は、かねがね存じております」
 →OK:「御社のご評判は、かねがね存じ上げております」

敬意の対象が「御社」と明確な場合は、「謙譲語Ⅰ」である「存じ上げる」を使います。

■NG:「業界人として、基本的な情報は存じ上げております」
 →OK:「業界人として、基本的な情報は存じております」

敬意の対象が明確ではなく、「聞き手」への敬意を占める場合は「謙譲語Ⅱ」の「存じる」を使います。

■NG:「一連の報道については、存じ上げております」
 →:「一連の報道については、存じております」

こちらも同様に「謙譲語Ⅱ」の「存じる」が正解。


【別の言い方は?「言い換え」の表現】

「存じます」の言い換え表現はいくつかあります。

■知っています

■思います

■考えます

■思われます

■拝察します

「拝察します」は推察することをへりくだっていう語です。


【ビジネスメールで使う際のマナー「注意点」まとめ】

■多用、乱発は避ける

「存じます」は聞き手(読み手)への敬意を込めた謙譲語です。とはいえ、メールの文中に何度も「存じます」が登場すると、少々大げさに感じられ、かえって誠意が伝わらないことも。例えば、「お忙しいと存じますが、明日中にお返事いただきたく存じます」という文章は、いささかスマートさに欠けます。こういう場合は、「お忙しいとは思いますが、明日中にお返事いただきたく存じます」など、「思います」との併用を。マナー違反にはなりませんよ。

また、「存じます」は上司に対しても使用できますが、その人との関係性によっては堅苦しく感じられてしまうかもしれませんね。

■「知る」の尊敬語は「ご存じ」

「存じる」は謙譲語ですが、「ご存じ(である)」は「知っていらっしゃること。御承知」を意味する尊敬語です。「○○をご存じですか?「ご存じの通り、彼女は非常に優秀です」のように使います。

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「存じます」は「思います」「知っています」という言い方をより丁寧に、聞き手(読み手)へのいっそうの敬意を示した表現です。「私は〜だと思います!」という意見の表明も、「存じます」を使うことで印象が和らぎ、強すぎる主張と受け取られにくいメリットがあります。上品な印象にも感じられますね。上手に使いこなしたいものです!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書) :