日々の業務のなかで、上司や取引先、プロジェクトのメンバーなど、関わる相手に対して「報告する」のはビジネスの基本です。報告をする際に「ご報告します」など、相手に「これから報告しますよ」と前置きしますよね。今回は、この「ご報告」という言葉について解説します。毎日のように使っている言葉だからこそ、使い方や注意点などもしっかり確認していきましょう。

【目次】

「ご報告」と「ご連絡」はどう違う?
「ご報告」と「ご連絡」はどう違う?

【「ご報告」とは?「正しい意味」をチェック】

■言葉の「なりたち」

「ご報告」という言葉は、名詞の「報告」に接頭語の「ご」をつけ、尊敬語としても謙譲語としても使える言葉です。

■意味

『デジタル大辞泉』に「報告」は、「告げ知らせること。特に、ある任務を与えられた者が、その経過や結果などを述べること。また、その内容」とあります。「出張の報告」や「決定事項を報告する」、「研究の中間報告」などのように、その時点で完了している事柄について告げることを意味します。

■「報告」と「連絡」の違い

「連絡」も同様に「ご連絡」として敬語として使われ、意味も似ているので混同しないよう注意しましょう。

「報告」は、与えられた任務などの現状を関係者に正しく伝えること。「義務が伴う行為」です。

「連絡」は、予定や発生した事実などを関係者に知らせること。「事実を周知させる」ことが目的です。


【「ご報告まで」は正しい敬語?「目上」の人には失礼?】

「ご報告」という単語を使った例文はのちほど紹介しますが、先に「ご報告まで」というフレーズについて解説しましょう。

■「まで」ってどんな言葉?

「まで」は、範囲や限界、程度を表す副助詞です。「ご報告まで」の場合の「まで」は、「報告にとどめる」という意味。そのため、結びのフレーズとしてよく使われます。

■いつ、誰に使える?

「報告」は、部下から上司へというように、一般的には関係や立場が上位の相手へ、結果や経過を告げ知らせること。「ご報告まで」も文法的に間違ってはいませんが、「~まで」には、偉そうだったりぶっきらぼうだったりするイメージがあり、不躾な感じを与えてしまうかもしれません。基本的には「ご報告いたします」が正解と心得て。あるいは「まずはご報告まで。のちほど改めてご連絡いたします」など、フォローフレーズをプラスすれば目上の相手へも失礼ではないでしょう。


【「ご報告いたします」は「二重敬語」ではない?】

■「ご報告」+「いたします」で二重敬語疑惑?

接頭語「ご」を用いて敬語表現にした「ご報告」と、「する」の謙譲語である「いたす」の敬体(です・ます調)「いたします」と、ひとつの文章にふたつの敬語表現が使われていることから「二重敬語では?」と不安に思う人もいるかもしれませんね。しかしひとつの語に「同じ種類の敬語」を二重に用いる場合のみ二重敬語となってNGなので、「ご報告いたします」はOKです。

■「ご報告させていただきます」ではなく「ご報告申し上げます」で!

「報告」は義務の要素が強く相手に許可を得てする行為ではないため、一般的に「ご報告させていただきます」はふさわしくはありません。

「ご報告いたします」より強い敬語表現にしたいなら、「ご報告申し上げます」が適当でしょう。なお、「ご報告差し上げます」は上から目線的な表現と受け取られる可能性があるのでNGです。


【ビジネスでの「使い方」がわかる「例文」5選】

■1:「ただいま3分ほどよろしいですか? 本日のA社との打ち合わせの内容をご報告したいのですが」

■2:「商品の納入が滞りなく終了しましたのでご報告いたします」

■3:「昨日ご報告いただきました進捗状況について、弊社各部署で共有いたしました」

■4:「事故がなく終了しましたことを取り急ぎご報告いたします。データ集計後に改めてご報告申し上げますので、少々お時間くださいませ」

■5:「先日の申請について、許可が下りましたのでご報告いたします」

今回は「ご報告」という尊敬表現を取り上げましたが、ビジネスシーン、しかも取引先や上司など上位の相手に必ず「ご」をつけて「ご報告」としなくてはいけないわけではありません。

「報告いたします」や「報告申し上げます」、場合によっては「報告させていただきます」なども、「ご」抜きの敬語表現は可能。敬語は、「尊敬語」「謙譲語(2種類)」「丁寧語」「美化語」という5つの種類があり、「ひとつの語に同じ種類の敬語を用いなければ二重敬語にはならない」とはいえ、重ねるほど回りくどく、真意や誠意が伝わりにくくなるのでご注意を!

***

なんらかの組織に所属して働く場合は、「報告」「連絡」「相談」の「ほう・れん・そう」が重要だということを再認識しながら、“大人の語彙力”を磨いていきましょう。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社)/『大人の語彙力大全』(KADOKAWA) :