関連する資料などを取引先や上司に渡す際に使われる「ご参考になれば幸いです」。正しい敬語表現なのですが、なかにはあまりよい印象をもたない方もいるようです。今回は「ご参考になれば幸いです」に関する懸念材料を解説し、適切な言い換え表現をご紹介します。

【目次】

正しいけれど不快になる人もいる…要注意フレーズです。
正しいけれど不快になる人もいる…要注意フレーズです。

【「ご参考になれば幸いです」を使いこなすための「基礎知識」】

■「意味」は?

「ご参考になれば幸いです」の意味を正しく理解するために、まずは「ご参考になれば」と「幸いです」を分けて考えてみましょう。

「ご参考になれば」は、名詞「参考」に相手を高める接頭語の「ご」をつけ、仮定のかたちにしたもの。
「幸い」は「その人にとって望ましく、ありがたいこと。また、そのさま」。「幸福」。

つまり「ご参考になれば幸いです」は、「もしも(あなたにとって)なんらかの参考になれば(私も)うれしいです」という気持ちを表すフレーズです。

■「ご参考になれば幸いです」を取引先や目上の方に使ってもいい?

「ご参考になれば幸いです」は丁寧な表現ですので、取引先や目上の人に対して使っても問題ありません。

ただし、「参考」は「資料など形のあるものから、他人の意見や考え、過去の事例まで、すべての物や事柄を自分の考えを決める手掛かりにすること」。日本語としては正しい表現なのですが、目上の方に対して使うときには注意が必要です。

そもそも、こちらが渡す情報が相手にとって有益か否かは先方が決めること。「ご参考になれば」という言葉を「幸いです」で結ぶフレーズを、一方的な「上から目線」「押しつけがましい」と不快に感じる方もいるようです。このことを念頭に、相手によっては使用を避ける判断も必要かもしれません。


【「ご参考になれば幸いです」の「例文」3選】

「ご参考になれば幸いです」は、ビジネスメールで使われることの多いフレーズですが、口頭でも使えます。
対面のシーンであれば、参考資料などをお渡しする際に。ビジネスメールであれば、参考になりそうなサイトのや文書ファイルを添付して使うのが一般的です。

■1:「資料をご用意いたしましたので、ご参考になれば幸いです」

■2:「資料を添付いたしますので、ご参考になれば幸いです」 

■3:「関連するURLをご案内いたします。ご参考になれば幸いです」 

1は対面で、2、3はメールで使える例文です。


【目上の人に使える「言い換え」表現】

■1:「こちらが詳しい資料となっております。ご参考になさっていただければ幸いです」

「なさってください」は「してください」をより丁寧にした敬語表現です。

■2:「こちらが詳しい資料となっております。ご参考にしていただけますと幸いです」

■3:「こちらが詳しい資料となっております。ご参考になりましたら幸いです」

「〜になれば」を「〜にしていただけますと」「〜になりましたら」とすることで、印象を和らげています。


【同じような意味で使える言い回しとNGフレーズ】

■1:「ご参考にはならないかもしれませんが、資料をご用意いたしました」

■2:「あくまでもご参考程度に、ご一読いただけますと幸いです」

■3:「ご参考までにと思いまして、資料をお持ちいたしました」

「までに」には、【動作・作用がそれ以上には及ばない意】という意味があります。2の「程度に」と同様、「ご参考にはならないかもしれませんが…」といったニュアンスが込められます。

■4:「よろしければご参考になさってくださいませ」

「よろしければ」「差し支えなければ」などの言葉をつけ加えることで、より丁寧なニュアンスの表現にすることができます。

■NG:「ご参考くださいませ」

「ご参考」の「ご」は相手を立てる接頭語です。この接頭語の用法として、「ご〜ください」というものがあります。「〜」に入るのは名詞ですが、この場合、「する」をつけて動詞としても使える名詞に限られているのです。例えば、「ご購入ください」「ご着席ください」などです。どちらも、「購入する」「着席する」と、動詞にすることができますね。「参考」とよく似た意味の「参照」も、「ご参照ください」として使うことができます。

では「参考」は、どうでしょう。「参考する」という日本語はありません。以上のことから、「ご参考ください」は、日本語の文法として誤っているのです。

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「ご参考になれば幸いです」は正しい日本語表現です。ただし、人によっては「一方的」「上から目線」と感じる人もいるようなので、目上の人に対して使う際には注意が必要です。ビジネスパーソンのマナーとして、「正しい敬語表現」を使うことはもちろん大切ですが、相手に不快な思いをさせない表現を選択することも重要。思いを伝えるフレーズをバリエーション豊かに使いこなしたいですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『とっさに使える敬語手帳』(新星出版社) :