冬ならでの味覚といえば、鍋料理ですよね。大人数で楽しみながら食べるものですが、親しき仲にも礼儀あり。知らずに無作法なふるまいをすれば、「この人とは二度と一緒に食事したくない!」と、同席者から白い目で見られることにもなりかねません。
そこで、ホスピタリティー・マナー講師の松澤萬紀さんから、鍋料理屋さんでやらないほうがいいNGマナーと、上品な大人の女性が必ずやっている習慣について、ご指南いただきました。
■鍋料理屋ではNGなファッション8か条
鍋料理屋では堅苦しいドレスコードはありません。とはいえ、楽しく、かつエレガントに会食するために、下記のNGマナーは押さえておきましょう。
(1)大ぶりのネックレスや指輪をつける
大ぶりのネックレスや指輪は、器を傷つけてしまうおそれがあります。会食時のアクセサリーは小ぶりのものにしましょう。
(2)コートを着たままお店に入る
コートを着たまま入店すると、お店のなかに外の埃を持ち込むことになります。アウターは席についてからではなく、お店の外や入ったときに脱ぐようにしましょう。
(3)口紅やグロスを厚塗りする
口紅やグロスでお店のグラスや器を汚さないようにするのも、マナーの一環です。もし、口紅などがついてしまったら、親指で拭い取り、汚れた指はティッシュや懐紙で清めるようにしましょう。
(4)トップスの脱ぎ着ができない
鍋料理は食べているうちに、体がどんどん温まります。汗をかきながら食事をするのはエレガントではありませんので、カーディガンなど簡単に温度調節ができるようなトップスを選ぶようにましょう。
(5)モヘアのセーターやカーディガンを着る
ふわふわのモヘア素材は、鍋料理屋など湯気の出る場において、埃が舞うおそれがありますので、避けたほうがいいでしょう。
(6)お座敷席でタイトスカートをはく
お座敷席の場合、座りやすいフレアスカートのほうがベターな選択です。
(7)長い髪を束ねない
髪を下ろしたままにしていると、鍋に髪の毛が落ちそうで、一緒にお鍋をつつく人を不快に感じさせてしまうおそれが……。長い髪は束ねるようにしましょう。
(8)ストッキングの予備がない
お座敷に上がった際、ストッキングに伝線が……という事態に備えて、ストッキングの予備を携帯しておくのがベターです。
■鍋料理屋でやりがちな5つのNG「お箸」マナー
松澤さんが以前に「他人のマナーで気になることはありますか?」というアンケートを実施したところ、実に90%以上の人がお箸のマナーを挙げたといいます。誰も口には出さないけれど、意外と見られているお箸の使い方。とりわけお鍋の席では、下記5つのNGマナーが嫌われるとのことです。
(1)逆さ箸
個々人の箸で鍋をつつくのではなく、取り箸を使うのは、鍋料理屋でのマナーの基本中の基本。とはいえ、ごく親しい仲間内の集まりでは「直箸でもいいよね」ということもあるかもしれません。
その際、気遣いのつもりでやりがちなNGマナーが「逆さ箸」。お箸を逆さにしても、手で持っていた部分を鍋につけることになり、不衛生であることに代わりはありません。やはり、お店では取り箸を使うのが最適。また、ホームパーティーを主宰する場合は、取り箸を用意するようにしましょう。
(2)ねぶり箸
具材が煮えるのを待つ間に、無意識のうちに箸を口に運んでしまったり、食事中に箸先の汚れが気になってねぶってしまったりするのも、よくあるマナー違反。箸先の汚れが気になる場合は、懐紙で拭きとるようにしましょう。
(3)指し箸
箸で人や料理を指すのは失礼にあたることは、よく知られています。ただ、おいしいお鍋とお酒でテンションが上がってくると、話しながらついお箸の先を相手に向けたり、「それおいしそう」「そろそろ煮えてるんじゃない」などと、料理を指したりするマナー違反をやりがちです。盛り上がるのはいいことなのですが、気分が乗ったときほど、箸の向きに注意しましょう。
(4)迷い箸
お鍋のうえで「どれにしようかな」と箸をうろうろ動かす迷い箸も、鍋のシーンでやりがちなマナー違反。鍋を目で確認して「あれを食べる」と目的を定めてから、箸を向かわせましょう。
また、一度、自分の取り皿にとった具材は、生煮えだとわかっても、鍋に戻してはいけません。もちろん、生煮えを無理に食べる必要はありませんが、そのまま残しておき、見苦しくないように懐紙で隠すとよいでしょう。
(5)渡し箸
上記(1)~(4)については、地雷を踏まないという人でもやってしまいがちなのが、渡し箸。食事中や食後に、箸を取り皿など器の上に置くのはマナー違反です。食事中に箸を一旦おきたい場合は、箸置きを使うようにしましょう。そして、食事が終わったら、箸袋に戻しますが、その際、箸袋の端(閉じのほう)を折っておくと、お店の人に使用済みであることを知らせることができ、マナーに叶っています。
「食後に箸を箸袋に収め、袋の端を折るのは、使用済みを知らせるだけでなく、”ごちそうさまでした”という気持ちを残すという意味があると思います。鍋料理に限らず、日本食では“箸に始まり、箸に終わる”といわれるほどお箸のマナーは大切。食べ終わるとつい気が緩みがちですが、お箸のマナーは食事が終わった後も続くと心得ましょう。ここまでできれば、より洗練された素敵な大人の女性に見えますよ」(松澤さん)
■鍋料理屋でやりがちだけどNGな3つの「行動」
お箸に続いて、お鍋をつつくときについやってしまいがちな、マナー違反な行動についてまとめました。
(1)相手のペースを考えずに取り分けをする
仲間内であれば気楽なのですが、目上の人と食事する場合、取り分けしたほうがいいのかどうかは判断に迷うところ。どのように振る舞うのが正解なのでしょうか?
「取り分けをしたほうがいいかどうかはケース・バイ・ケースでしょう。目上のかたであっても、自分のペースで食べたい、好き嫌いがある、かえって気を遣ってしまうなどの理由で、取り分けを望まないかたも多いようです。
ただ、自分が鍋の近くの席の場合は、最初の1杯は様子見で取り分けしてみるといいかもしれません。相手の好みや食べられないものをしっかり確認しながら、取り分けるようにしましょう。
くれぐれも、相手のペースを考えずに、よそいすぎないように。取り分けをする、しないという形式的なルールよりも、その場で相手とコミュニケーションをとることが何よりも大切です」(松澤さん)
(2)手皿をする
松澤さんによれば、鍋料理屋で意外とやってしまいがちなNGマナーのNo.1が、「手皿」だといいます。
「箸で料理を口に運ぶ際に、左手を食べ物の下に添える動作は、テレビのグルメレポーターがやっているのもよく見かけます。でも、手皿は実はマナー違反ですので、汁などが垂れそうな場合は、左手を直接添えるのではなく、左手で懐紙を持って、懐紙で受け止めるようにしましょう」(松澤さん)
(3)”もろおこし”をする
器と箸を同時に取り上げる“もろおこし”は、粗相のもとで、マナー違反とされています。器と箸を持つ際は、以下の順序を守りましょう。
1:器を両手で持ち、安定させる
2:器から右手を離して、箸を取る
3:器を持つ左手の薬指と小指の間に箸先を挟み、右手をすべらせて箸を持つ
■上品な大人女性がお鍋を食べる際に必ずやっている「仕草」とは?
さきほどから、何度もNGをフォローする手段として登場している懐紙。実は、懐紙は上品な大人女性が、鞄に忍ばせておきたい必須アイテムなのです。松澤さんによれば、懐紙は以下のような役割を果たしてくれるとのこと。
(1)口元をぬぐう
(2)魚の骨を出す際などに口元を隠す
(3)箸だけでは扱いにくい魚、カニなどを押さえる
(4)受け皿のかわりにする(手皿はNG!)
(5)料理の残り物、魚の骨や皮などを隠す
(6)布巾のかわりにする
(7)熱い器を持つ
「以前、客室乗務員をしていた頃の話なのですが、職場の会食で鍋料理を食べていた際、私がうっかり汁をこぼしてしまったことがあります。そのとき、隣にいた後輩が鞄から懐紙を即座に取り出して拭いてくれて、汚れた紙を自分の鞄にそっとしまった光景が、今でも忘れられません。
このようなさりげない心遣いこそが、マナーの真髄だと思います。懐紙はさまざまな役割を果たしてくれますし、お店で探せば素敵なデザインのものもがたくさんありますので、ぜひ大人女性は携帯しておきましょう」(松澤さん)
最後に、松澤さんはこのように力説します。
「マナーというと堅苦しいイメージもありますが、食事の席の最高のマナーは“笑顔とポジティブな言葉”です。もちろん、お箸の使い方なども大切なのですが、まずは食事を楽しんで“このお出汁おいしいね”とか“今年初めての鍋で嬉しい!”など、心からのほめ言葉を口にしましょう。それこそが、一緒に食事をする人にとっても、お店の人にとってもマナー美人になる秘訣です」
身も心も温まる鍋料理。より味わい尽くすためにも、今回ご紹介したマナーをぜひ押さえておきましょう。
『100%好かれる1%の習慣』松澤萬紀・著 ダイヤモンド社刊
『1秒で「気がきく人」がうまくいく』松澤萬紀・著 ダイヤモンド社刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美