「皆さまからの協力のもと」「多くの方々のご協力のもと」などと使われることが多い「ご協力のもと」という言葉。そのあとには感謝の言葉が連なることが多いことにお気付きですか? 今回のテーマは「ご協力のもと」。改めて言葉の成り立ちや意味、使い方を解説します。一緒に学びましょう!
【目次】
- 「ご協力のもと」を深く理解するための「基礎知識」
- 「ご協力のもと」の理解を深める「例文」3選
- 「もと」を漢字表記するなら?「元」「基」「下」どれが正解?
- 「ご協力のもと」の別の言い方は?「言い換え」「類語」表現
【「ご協力のもと」を深く理解するための「基礎知識」】
■「意味」は?
「ご協力のもと」という言葉は「ご・協力・の・もと」に分けられます。「行為の主体を立てる(尊敬語)接頭語+名詞+格助詞+名詞」という構成です。「協力」は「力を合わせて“こと”にあたること」「心を合わせて働くこと」という意味の言葉です。ふたり以上の人、あるいはふたつ以上の組織が同じ目的のために力を合わせるときに使われます。「もと」は「その規則や支配力の及ぶところ」という意味で、「厳しい規律のもとで生活する」「監視のもとにおかれる」などと使われます。つまり「ご協力のもと」は「誰かからの協力を得て」「ご協力をいただいて」といった意味合いのフレーズです。尊敬の接頭語「ご」に、協力者を敬うニュアンスが感じられます。
■「使い方」は?
ビジネスで「ご協力のもと」が使われる状況は、どんなときでしょうか。イベントやプロジェクトの推進など、何か共通の目標を掲げ、協力を得ながら事にあたるシーンが連想できます。次にあげる例文を読めば、「ご協力のもと」の使い方がわかるはずです!
【「ご協力のもと」の理解を深める「例文」3選】
周囲からの協力によって得られた「成果」について語る場合、「ご協力のもと」は「協力のおかげで」といったニュアンスが強まります。
■1:「皆さまのご協力のもと、世界各地の難民、避難民への援助活動を展開してきました。ここにその成果をご報告いたします」
■2:「たくさんの方々のご協力のもと、本公演は無事に終了いたしました」
今後の予定についても、「ご協力のもと」は使われます。
■3:「今後は株式会社○○からのご協力のもとに、新規分野での事業拡大を目指していく所存です」
【「もと」を漢字表記するなら?「元」「基」「下」どれが正解?】
結論から言えば、「ご協力のもと」は「ご協力の下」が正解です。
「元」「基」「下」それぞれの漢字の意味をご説明しましょう。
■「元」は「物事のはじまり」を表す
「元」は「本」と同起源で「物事の起こり、はじまり」を意味します。「事件の元をさぐる」「うわさの元をただす」というように使われ、熟語には「復元」「湯元」「家元」などがあります。「使ったら、必ず元の場所に戻してくださいね!」といったフレーズは、一度は使ったことがあるのでは?
■「基」は「物事の土台や基礎」を意味する
「基」は「物事の土台や基礎、根本、根拠」「原因」を表す言葉です。「医学の基を築く」「国の基を定める」などと使われ、熟語には「基礎」「基板」「基幹」「基地」などがあります。ビジネスシーンでは「既存のビジネスを基に新規事業を考案する」といった使い方も目にしますね。
■「下」は「その力の及ぶところ」という意味
前述の通り、「下」は「その規則や支配力の及ぶところ」という意味で、「厳しい規律の下で生活する」「監視の下におかれる」などと使われます。「上下」の「下」を意味する漢字で、熟語には「部下」「下手」「下段」などがあります。「ご協力」の接頭語「ご」にも表れているように、「ご協力のもと」は協力してくれる相手を敬うニュアンスを帯びています。
【「ご協力のもと」の別の言い方は?「言い換え」「類語」表現】
まずは「ご協力」を言い換えてみましょう
■ご尽力 ■お力添え ■ご援助 ■ご支援
「〜のもと」の言い換え表現もいくつかあります。
■「〜のおかげで」 ■「〜を得て」 ■「〜していただき」 ■「〜を賜り」
3つの「例文」を言い換えてみましょう。
■1:「皆さまからご協力いただき、世界各地の難民、避難民への援助活動を展開してきました。ここにその成果をご報告いたします」
■2:「たくさんの方々のご協力のおかげで、本公演は無事に終了いたしました」
■3:「今後は株式会社○○からのご協力を賜り、新規分野での事業拡大を目指していく所存です」
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「ご協力のもとに」の漢字表記は「ご協力の下」ですが、「下」はひらがなで表記されることがほとんどです。とはいえ、正しい知識を得ることで、自信をもってその言葉を使うことができます。「協力」をあおぐ相手への敬意と感謝の気持ちを忘れずに、円滑なコミュニケーションの構築を目指すこと。これ大人の語彙力”の成果ともいえそうです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) :