仕事中の会話で「お名前は存じ上げておりました」など、「存じ上げる」というフレーズを使うことがありますよね。「知っている」といった意味の“丁寧な言い方”や“敬語”という認識でしょうか。今回はこの「存じ上げる」について解説します。実は間違った使い方をしていた…なんてことがあるかもしれません。しっかり確認して、「存じ上げる」の正しい使い方をマスターしましょう。
【目次】
- 「存じ上げる」をしっかり理解するための「基礎知識」
- 「会話」「メール」「否定形」も!このまま使える「例文」4選
- 「存じ上げる」の「類語」「言い換え」
- 「存じ上げております」と「存じております」の使い分け
- 「存じ上げる」使用上の「注意点まとめ」
【 「存じ上げる」をしっかり理解するための「基礎知識」】
■意味
「存じ上げる」とは、いったいどんな言葉なのでしょうか?
「知る」「思う」の謙譲語「存ずる(存じる)」に、相手への敬意を高める「上げる」を付けたもの。「知っています」「思っています」の敬語表現です。2007年に文化審議会の答申によって、日本語の敬語は「尊敬語」「謙譲語I」「謙譲語II(丁重語)」「丁寧語」「美化語」の5つに分類されました。「存じ上げる」は“うかがう・申し上げる型”ともいわれる「謙譲語Ⅰ」にあたり、自分の行為や物事などをへりくだることによって相手を高め、敬意を表した表現です。
■使い方……使えるのは「人」だけ!
「知っています」「思っています」の謙譲表現ですが、“対象は人に限定”という点が重要です。「〇〇さんを知っている」「△△さんの状況について知っている」などと、人に対してのみ使うことができます。「その件につきましては存じ上げております」と言いたいところですが、この場合は「その件につきましては存じております」が正解! 間違った使い方をしていた…という人も多いのではないでしょうか。
■漢字表記
「存知上げる」や「ご存知」という表記を見かけることはありませんか? 意味を考えたら「知」の字を当てたくなりますが、「ぞんじ」は「存ずる(存じる)」が変化した謙譲語でしたね。ビジネス文書やメールでは、正しく「ご存じ」と記すようご注意を。
【「会話」「メール」「否定形」も!このまま使える「例文」4選】
■1:「〇〇さまにつきましては、以前よりお名前を存じ上げておりました」
■2:「御清祥にてお過ごしのことと存じ上げます」
■3:「△△さんを存じ上げているのですが、御社の方ではありませんか?」
■4:「申し訳ございませんが、◇◇さまについては存じ上げておりません」
気を付けたいのは、「知らない」「わからない」と否定を意味する「存じ上げない」という表現。これも相手、あるいは話題になっている人に対する謙譲表現ですが、「存じ上げません」や「存じ上げておりません」と丁寧にしても少々突き放した印象に…。4のように「申し訳ございませんが」や「恐縮ですが」などの“クッション言葉”を活用すると、ニュアンスが和らぐのでおすすめです。
【「存じ上げております」の「類語」「言い換え」】
■「類語」「言い換え」を使った肯定例文
・〇〇さまのお名前は承知しております。
・〇〇さまのお名前はうかがっております。
・〇〇さまのお名前はお聞きしております。
■「類語」「言い換え」を使った否定例文
・〇〇さまというお名前は承知しておりません。
・〇〇さまという方についてはわかりかねます。
【「存じ上げております」と「存じております」の使い分け】
上で説明した通り、目上の人のことを知っている、という場合は「存じ上げております」を。物事について知っている、という場合は「存じております」を使います。また、その人の事情について知っている、という場合は敬語が向かう先は人なので「存じ上げております」となります。ちょっとややこしく感じるかもしれませんが、何(誰)に対しての敬語表現なのかを考えればスッキリ! 「人=存じ上げる」「物事=存ずる(存じる)」と覚えましょう。
【「存じ上げる」使用上の「注意点まとめ」】
・対象が「人」の場合は「存じ上げております」「存じ上げています」
・対象が「物事」の場合は「存じております」「存じています」
・否定の場合はクッション言葉で和らげる
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会話でもメールでも、直接相手に、あるいは間接的にと、今回も使用頻度が高い敬語表現を見てきました。今までどんなときにどう使ってきたか…見直してみてくださいね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『心理学的に正しい! 人に必ず好かれる言葉づかいの図鑑』(宝島社)/『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 働く人のための言いかえ図鑑』(サンマーク出版) :