今回取り上げるのは、大切なものを失ったときや、何かが終わったときなどに感じる「喪失感」という言葉です。ネガティブワードではありますが、使用せざるを得ない際には正しい日本語として用いたいもの。例文や言い換えなどもご紹介しますので、どうぞお目通しください。

【目次】

読めるけど書けない、という人も多そうです。

「喪失感」とは?「読み方」と「意味」】

■読み方

「喪失感」は「そうしつかん」と読みます。読み方は知っていたけれど、いざ書こうとすると正しく書けるかどうか不安…という人もいるかもしれませんね。

■意味

「喪失感」は、大切な時間や思い出、人などを失った際に感じる空虚な気持ちのこと。「喪失」とは失うことですが、「記憶を喪失する」「権威を喪失する」など、抽象的な事柄についていう際に使われます。物質的なもの、例えば資料をなくしたことを「資料を喪失した」とは言いません。ものがなくなる場合には「紛失」ですね。

■英語にすると…

「喪失感」の英語は「sence of loss」となります。「sence」は「感度」や「感性」「五感」を意味するので、「大切なものを失って何も感じられない」というような状態を「sence of loss=喪失感」と言うのだとわかりますね。


【続く言葉がわかる「使用例」と状況がわかる「例文」】

・喪失感を覚える ・喪失感に苛(さいな)まれる・喪失感に見舞われる 

・喪失感に襲われる ・喪失感と向き合う  ・喪失感から立ち直る 

・喪失感から抜け出せない ・喪失感を癒す ・喪失感を埋める

 このように、「喪失感がどうである」という表現はさまざまです。次に例文を見てみましょう。

■1:「時間をかけて成功させたプロジェクトが解散し、しばらくのあいだ喪失感に見舞われた」

■2:「大切な人を亡くした喪失感から完全に抜け出すことは困難だ」

■3:「大きな喪失感を癒すのは並大抵のことではないので、時間をかけて見守っていこう」

■4:「尊敬していた上司が退職したことによる喪失感は、想像以上に大きかった」

■5:「喪失感を埋めるため、没頭できる趣味を見つけようと思う」

3や4にあるように、喪失感の程度は「強弱」ではなく「大小」を用います。「喪失感」自体が強い感情を表すので「小さな喪失感」とは言いませんが、「喪失感が小さくなってきた」のようには使います。


【「喪失感」の「類語」「言い換え」表現

■類語

・虚無感 ・欠落感 ・空白感 ・空虚感 ・寂寥感 ・虚脱感

■言い換え

前章の例文のいくつかを、「喪失感」の部分を言い換えてみましょう。

・時間をかけて成功させたプロジェクトが解散し、しばらくのあいだ心に穴が開いたようだった。

・尊敬していた上司が退職したことで感じる不安や悲しみは、想像以上に大きかった。


【Precious世代が感じやすい「喪失感」があります】

家族やペットを亡くしたり、恋人と別れたり、あるいはひとつの仕事が終了したときに感じる「喪失感」。これらはどんな世代の人でも感じる感情です。ところで、40歳前後の中年期の人が見舞われることが多い「ミッドライフ・クライシス」をご存知ですか? 人生の見通しがある程度立つこの年代は、充実感を得る一方で理想と現実のギャップを感じることも。例えば、この時期には、大変ではありつつも充実していた子育てが一段落して自分を顧みる時間を得る人もいるでしょう。加えて、ホルモンバランスが崩れやすくなり、肌質や髪質の変化、体力の衰えなども感じて感情も不安定に。そんなときに、ふと喪失感が波のように押し寄せる…。この「ミッドライフ・クライシス」をどうやってうまく乗り越えるのかが、Precoius世代のひとつの課題かもしれませんね。

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人生にはさまざまな別れがあり、「喪失感」に見舞われることもたびたびあるでしょう。「常にエネルギッシュでポジティブに!」とはなかなかいきませんが、「喪失感」のような感情も、人生の彩のひとつだと受け入れてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社) :