雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は、慈善団体「アンパラ」代表 マリア・インマクラーダ・ベセリルさんの活動をご紹介します。
刑務所で暮らす母と幼い子を外の世界とつなげるサポートを
マリアさんは、女性受刑者とその子供(※)を訪問するボランティア活動を30年にわたり続けている。
「通っていた教会の神父様に連れられて女性刑務所を訪れたのが最初でした。恐々とした気持ちでしたが、行ってみてわかったのです。受刑者と自分の差はほんのわずかだということに。私はたまたま教育を受ける幸運を得たけれど、彼女たちのような環境で育っていたら、同じことをしたかもしれない。これは助けなければ、と」
スペインでは、女性受刑者に子供がいる場合、3歳までは刑務所内で子育てができる。マリアさんたちは、刑務所内の母子を訪問し、一般の子供が経験するのと同じように、誕生日やクリスマスを祝ったり、週末には子供を動物園や遊園地に連れて行ったりする。
「一度、こんなことがありました。ある修道院に出かけたとき、古い建物の取っ手の付いた扉に興奮して、何度も開閉をせがんだ子供がいました。刑務所内の扉はすべて職員が自動で動かす仕様なので、自分で開け閉めできることに驚いたのでしょう。日常の些細な動作も、刑務所の中しか知らない子供には刺激的なのだということに、改めて気付かされました」
子供を連れ出す時間は、刑務所内での子育てという特殊なストレスにさらされている母親たちにとっても、貴重な息抜きとなる。刑務所内で母親に料理などの講習や、子育てに関するカウンセリングをするボランティアもいる。
8年前、14名の有志が集まり慈善団体「アンパラ」を立ち上げた。現在は男性の受刑者をも含めた職業訓練講習なども行っている。
「手を差し伸べられた、という経験をすることが、彼らの今後の人生に、とても大切だと思うのです」
【SDGsの現場から】
●大学と連携し学生ボランティアも随時募集
●活躍するNGOを表彰するイベントで子供支援部門受賞
※スペインの刑務所事情とは…スペイン全土でおよそ70人の子供が刑務所内で母親と暮らしている。「アンパラ」が訪問している刑務所には30人弱の乳幼児がいる。
- PHOTO :
- Javier Peñas
- EDIT&WRITING :
- 正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
- 取材 :
- Yuki Kobayashi