例えば、資料のある部分を示して「このかしょについてはのちほど担当者から詳しく説明します」と発言する際の「かしょ」に、どの字を当てますか? 「かしょ」という単語は、「漢字のみ」「ひらがなと漢字」「カタカナと漢字」と、表記が3種類。どれを使っても同じ意味なのでしょうか? それとも、それぞれ異なるもの? メールや資料などの文章で意識しないで使っている人も、これを機会に正しい使い方を身に付けましょう。
【目次】
【「箇所」「個所」「か所」どれが正解?ビジネスで使える基礎知識】
■意味
まずは意味をおさらいします。「故障のかしょ」や「景色のよいかしょ」のように、話題にしている場所や位置、特定の部分を示すのは名詞としての使い方です。また、「受付窓口は3かしょ」など、数を表す助数詞としても使われます。
■表記
漢字では「箇所」「個所」、ひらがなやカタカナを用いて「か所」「カ所」「ヵ所」「ケ所」「ヶ所」と記されます。いずれもキーボードの予測変換で出てくる表記ですが、一般的に名詞として使用する場合は「箇所」を、数を示す助数詞として用いる場合はどの表記も使われているようです。ちなみにNHK放送文化研究所によると、NHKは放送時のフリップやテロップでは「故障の箇所」、「受付窓口は3か所」というふうに表記します。NHKと新聞協会は、以前は独自に「個」を「か」と読ませて「個所」を用いていましたが、平成22年の「常用漢字表」の改定に合わせて「か」と読む「個」の使用を廃止し、「箇所」を使うことになったそう。
【「公用文」ではどれが正解?】
プレゼンやミーティングの資料やメール文程度ならどれを使っても…というところですが、公用文ではどの字が使われているのか気になりませんか? 先ほど解説した「個所」については、現在は常用漢字として扱われていないため公用文書では使用できません。「か」「カ」「ヵ」は「箇」の略字なので、やはり公用文での使用は不可。
「ケ」や「ヶ」は、「箇」の略字体である「个」をさらに略したもの。カタカナの「ケ」ではなく、漢字「个(か)」の略字なのです。だから「1ヶ月」と書いて「いっかげつ」と読むのですね。「ケ」も「ヶ」もやはり公用文では使用できません。ということは、正式には「箇所」という漢字のみがOKということ。ちなみに、「個所」は「こしょ」と読み違えやすいので気を付けて!
【ビジネスでの「使い方」がわかる「例文」6選】
■1:「ただ今ご指摘がありました箇所につきましては、部内で再検討して改めてご提案いたします」
■2:「駅前にはコンビニエンスストアが3か所ある」
■3:「問題になっているのは公園内のどの箇所でしょうか」
■4:「あの交差点は、国土交通省が“事故危険箇所”に指定していた」
■5:「1カ所だけ補足説明を願いたいのですが…」
■6:「そこが重要な箇所です」
【「類語」「言い換え」で語彙力アップ!】
前章の例文を使って、別の言葉で言い換えてみましょう。
・場所:「問題になっているのは公園内のどの場所でしょうか」
・部分:「ただ今ご指摘がありました部分につきましては~」
・ポイント:「そこが重要なポイントです」
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今回は「公用文での表記は箇所のみが使用可」というところがポイントでした。それならどんな場合も「箇所」を使用すればいいのでは、と思う人もいるでしょうか。漢字、ひらがな、カタカナを混ぜて用いるのには、その字面自体の美しさに加え、読みやすい(=伝わりやすい)という利点もあります。前後の文章や全体を眺めつつ、使い分けられるようになってくださいね。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『情報・知識imidas』集英社 :