クライアントや取引先、あるいは社内での会話の中で、頻繁に使われる「意向」という言葉。「考え」や「気持ち」のことでしょうか? 正しく使えているでしょうか? 今回は、慣れた言葉こそ的確に使えるように、改めてその意味やふさわしいシーンなどを例文と合わせて確認していきましょう。

【目次】

「上の意向ですので…」はキラーワード?
「上の意向ですので…」はキラーワード?

【「意向」とは一体どんな「意味」?「基礎知識」】

■読み方

「いこう」と読みます。

■意味

『日本国語大辞典』によると、「心の向かうところ」「どうするかについての意志、判断」「考え」「思惑」という意味。簡単に言えば「どうするつもりか」「どうしたいのか」ということなのですが、「意」を用いた言葉には、「意思」「意志」「意図」「意見」などいくつもあるので混乱するかもしれないですね。なかでも「意向」と近いのが「意思」と「意志」。それぞれニュアンスは異なるのでしっかりチェックしておきましょう。

・意向:どうするかについての意志や判断、考え、思惑。「クライアントの意向を聞く」

・意思: 何かをしようとするときの元となる心もち。「本人の意思に任せる」

・意志:目的のはっきりした考え。あることをしたいという思い。こころざし。「本人の意志を尊重すべきだ」

上の3つの中で特に強い意味をもつのが、積極性や前向きさがある「意志」。これに比べると今回取り上げている「意向」は、ややソフトな印象です。

■使い方

・意向に沿う ・意向にそぐわない ・意向を踏まえる ・意向を聞く ・意向を探る ・意向を伝える 

名詞である「意向」に続く語もいろいろですが、上手に使い分けるのが“語彙力”というもの。次に、例文をご紹介しましょう。


【ビジネスでの「使い方」がサクッとわかる「例文」7選】

■1:「上の意向を踏まえて検討し、お返事申し上げたいと思います」

■2:「クライアントの意向にそぐわないので、プランを練り直してほしいと代理店から連絡があった」

■3:「先方の意向をもっと具体的にご教示いただけませんでしょうか」

■4:「弊社の意向をご理解いただき、ありがとうございます」

■5:「こちらの意向は伝えてあるので、しばらく様子を見よう」

■6:「正式発表前ですが、クライアントの意向を探ってみます」

■7:「両者の意向を聞いて、事態をうまく収めてほしい」


【「意向」の「類語」「言い換え」「敬語表現」】

■類語・言い換え

・意思 ・意志 ・考え ・願望 ・要望 ・希望

■敬語表現

「意向」を敬語として使用する場合の例も挙げておきましょう。

・「部長のご意向をおうかがいできますでしょうか」

・「ご意向に沿えない場合もございますので予めご了承ください」


「意向」を英語にすると…】

日本語の「意向」の意味に近い英語は[intention]です。「our intention」で「我々の意向」、「That's not my intention at all」で「そんなつもりはまったくない」となります。

また、[idea]にも「考え」や「意見」が、[view]には「考え方」や「見解」という意味があり、「意向」と同じように使える場合もあります。

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「クライアントの意向」や「意向に沿う」などは、特によく使われるフレーズですね。「意」を用いた単語はたくさんあり、それぞれそのニュアンスを理解して身につけるのは大変ですが、そこが日本語のおもしろいところ。語彙力は重要なビジネススキルでもあるので、しっかり学んでいきましょう!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社) :