博物館や美術館を訪れる際の楽しみのひとつとして、国宝や重要文化財などの「貴重な収蔵品」を目にすることを挙げられる方も多いのではないでしょうか? 目黒区の日本民藝館は、約1万7千点という膨大な所蔵品がありながら、国宝は「一点もなし」。それでありながらなお、魅力的な美術館として、多くの訪問客を集めている異色の存在なのです。

それもそのはず、こちらの収蔵品のほとんどは、思想家として名高い柳 宗悦が選び抜いた「無名の工芸品」がメインとなっているから。そんな不思議な美術館・日本民藝館の魅力を、美術史家で、明治学院大学教授の山下裕二さんに伺いました。

日本民藝館で、無名の工芸品に宿る「美」に触れる

昭和11(1936)年竣工の旧館。和風建築の随所に洋風のエッセンスを取り入れた、味わいのある建物。国の有形文化財に登録されている。

約1万7千点の所蔵品のなかに、国宝は1点もなし! それこそが、日本民藝館の誇りです。『民衆が使っている日用品にこそ本当の美が宿っている』とし、それまでは取るに足らないものとされていた工芸品を「民藝」と名づけて、美意識の革命を起こした思想家・柳 宗悦。その審美眼が選び抜いた陶磁器、木工、絵画、彫刻、衣裳などは、どれも権威とは無関係の、無名の工人たちが創り出したもの。

深い交流があった棟方志功の版画など、柳 宗悦の審美眼が選び抜いた名作も数多し

柳と交流のあった同時代の芸術家たちの作品も所蔵されており、板画家・棟方志功もそのひとり。彼が世界的に知られるようになったのも、柳の存在があったから。「『華厳譜』薬師如来の柵(改刻)」棟方志功 1936年

柳自身が中心となって設計した建物(旧館)や展示ケースも竣工当時のままで、公的な美意識の公約数を集めた一般的な美術館と違い、一個人の研ぎ澄まされた美意識が、館のすみずみまで行き渡っているんです。さらに、展示のキャプションがすべて手書きというのもいい! こんな美術館、ほかにはありません。

棟方志功の作品は、2018年3月25日まで開催された特別展「棟方志功と柳宗悦」で展示されました。柳の創案によって飾られた、美しい軸装や屛風も見どころです。

山下裕二さん
美術史家、明治学院大学教授
(やました ゆうじ)『週刊ニッポンの国宝100』(小学館)の監修も務める。

問い合わせ先

  • 日本民藝館 
  • 開館時間/10:00〜17:00(最終入館は16:30まで)
    休館日/月曜日(ただし祝日の場合は開館し翌日休館)。年末年始、陳列替え等に伴う臨時休館あり。
  • TEL:03-3467-4527 (ハローダイヤル)
  • 住所/東京都目黒区駒場4-3-33

EDIT :
剣持亜弥(HATSU)
RECONSTRUCT :
難波寛彦