ビジネスのさまざまなシーンで「お気遣いなく」と言ったり言われたり…ということ、ありますよね。メールで使うことも多いのいでは? 今回はこの「お気遣いなく」についての解説です。目上の人への言い方や、言い換えのバリエーション、返答などについて、例文とともに「お気遣いなく」を確認していきましょう。
【目次】
- そもそも「お気遣いなく」ってどんなフレーズ?…基礎編
- 相手によって変化する「お気遣いなく」…実践編(1)
- メールでも使える!「お気遣いなく」の「例文」8選…実践編(2)
- 「お気遣いなく」の言い換え・バリエーション…応用編
- 「お気遣いなく」にはどう返す?…実践編(3)
【そもそも「お気遣いなく」ってどんなフレーズ?…基礎編】
■意味
「お気遣いなく」というフレーズは、「気を遣わないでください」や「心配しないでください」という意味です。
『日本国語大辞典』によると、「気遣い」は「気をつかうこと。心づかい。気がかり。また、そのようなさま。心配。懸念(けねん)」とあります。
■使い方
一般的には、相手の厚意や気遣いを辞する際にありがたい気持ちを込めて「感謝」のフレーズとして使います。
ところが「遠慮」や「断り」、また「相手を気遣う」という場合にも使うため、「お気遣いなく」と単体で使うのは危険! あなたの気持ちを正しく伝えるには、後述する例文のように「何に対して」「どうだから」などを添えて使うのが“大人の語彙力”というものです。
【相手によって変化する「お気遣いなく」…実践編(1)】
「お」という接頭語がついているので敬語表現ですが、上司や取引先の偉い人などにも使えるのでしょうか? 同僚や部下などにはどうする? 相手による言い回し例をご紹介します。
■同僚や仕事仲間など同等の相手へは「お気遣いなく」
■目上の相手への敬語表現では「お気遣いなさいませんように」「お気遣いくださいませんように」
「お気遣いなく」はぞんざいな印象を与えかねないので、目上の人へは前後も含めて配慮が必要です。
■部下や後輩などへは「気遣いは不要」
【メールでも使える!「お気遣いなく」の「例文」8選…実践編(2)】
■1:「追加修正の件、承りました。ほかにも何かございましたらお気遣いなくご連絡くださいませ」
■2:「体調はすっかり快復しましたので、お気遣いなくお申し付けください」
■3:「申し訳ございませんが少々遅れてしまいそうなので、どうぞお気遣いなく始めてください」
■4:「先日はお土産まで頂戴しまして恐縮です。皆でおいしくいただきました。ありがとうございました。ただ、今後はお気遣いくださいませんよう、どうぞお願いいたします」
■5:「気遣いは不要なので、忌憚のない意見を聞かせてほしい」
■6:「今回の件は不慮の事故ですので、お気遣いなく今後ともよろしくお願いいたします」
■7:「故人の遺志もあり、家族葬を執り行います。ご参列やお香典、ご弔電、お供物などお気遣いいただきませんよう、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます」
■8:「返信の(は)お気遣いなく、よろしくお願いいたします」
【「お気遣いなく」の言い換え・バリエーション…応用編】
・お気になさらず ・お気兼ねなく ・ご心配なく ・お気持ちだけ頂戴します
・お気遣いには及びません ・お構いなく ・結構です
いずれも「お気遣いありがとうございます」など、感謝のフレーズとともに使用したいもの。特に「結構です」は突き放した印象と受け取られる場合があるので、親しい間柄への使用にとどめるのが無難です。
口癖になっている人もいるかもしれませんが、同じようなシーンで使われる「大丈夫です」や「いいです」は稚拙なフレーズ。ビジネスシーンでは使用不可と心得ましょう。
【「お気遣いなく」にはどう返す?…実践編(3)】
「感謝」や「遠慮」、「断り」に「逆気遣い」、あるいは「社交辞令」なんてケースも考えられる「お気遣いなく」というフレーズ。会話のなかでのことなら「承知しました」や「そういたします」などの受け答えでOKですが、メールの場合は迷いますよね。「返信お気遣いなく」であれば受け取って終了でよし。そのほかの場合は、もうひと言「承知しました。今後ともよろしくお願いいたします」や「ご連絡いただきまして恐縮です。こちらこそ、何卒よろしくお願いいたします」など、短く返信して終わりにしてはいかがでしょう。
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取引先やお客さまへの訪問などで相手から「日本茶とコーヒー、どちらがよろしいですか?」と聞かれることもありますよね。そういったときに、すぐにどちらかを答えるのもビジネス時短として正解ですが、いったん「ありがとうございます。どうぞお気遣いなく…」と答えるというのも正解です。時節柄そのままになることも少なくありませんし、それでも勧められれば、「では〇〇をいただきます、ありがとうございます」と続ければいいのです。また、新年のご挨拶の訪問や簡単な打ち合わせなどで本当にすぐにおいとまする場合には「急いで戻らなくてはいけませんので、どうぞお気遣いなくお願いいたします」と、滞在が短時間であることを告げて辞退するのもエレガントです。ふだんは何気なく使っているかもしれませんが、「お気遣いなく」は、なかなか奥深いフレーズでした。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店)/『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 働く人のための言いかえ図鑑』(サンマーク出版) :