【目次】

【「お気遣いなく」は「敬語」?「意味」】

■意味

『日本国語大辞典』によれば、「気遣い」とは「気を遣うこと。心遣い。気がかり。また、そのようなさま。心配。懸念(けねん)」という意味。「お気遣いなく」は、この「気遣い」に「なく」をつけて、「私に対して、気を遣う必要はありませんよ」「ご心配には及びません」という気持ちを、丁寧に表現したフレーズです。一般的には、相手の厚意や気遣いを辞退する際に、感謝の気持ちを込めて使われます。

■「お気遣いなく」は敬語?

「お気遣いなく」の「お」は、尊敬や丁寧、美化などの意味を表す接頭語です。この場合は「気遣い」をしている相手への敬意を表す「尊敬語」として使われているので、「お気遣いなく」は正しい敬語表現といえます。


【ビジネスでそのまま使える「例文10」

■お茶を出されたときなどに:「ありがとうございます。お気遣いなく」

■お土産などを渡す際に:「ほんの気持ちですので、くれぐれもお気遣いなく」

■メールの結びの言葉として:「返信はお気遣いなく」

■食事の際、相手の料理が先に出てきたとき:「お気遣いなく、お先にどうぞ」

■メールのやりとりで:資料の件、ご確認ありがとうございます。修正はこちらで対応いたしますので、どうぞお気遣いなく。

■体調不良の連絡を受けて:ご無理なさらずお気遣いなくご静養ください。

■手土産をいただいたとき:差し入れまでいただき、恐縮です。今後はどうかお気遣いなく。

■見送りを受けたとき:わざわざお見送りまで…お気遣いなく、どうぞお戻りください。

■手助けを断るとき:お気持ちはありがたいのですが、本当にお気遣いなくお願いします。

■上司から謝られたとき:お詫びのお言葉まで頂戴し恐縮です。お気遣いなく、全く問題ございません。


【目上の人にそのまま使うと失礼!ていねいな言い回し】

「お気遣いなく」というフレーズには、動詞が省略されています。そのため、目上の人に対してそのまま使ってしまうと、少々ぞんざいな印象に「お気遣いなさいませんようお願いいたします」と言葉を添えたり、「相手の気遣いを辞する理由」など、状況を説明するための言葉を捕捉して使うのが、大切なポイントです。例文をご紹介しましょう。

■1:「追加修正の件、承りました。ほかにも何かございましたらお気遣いなくご連絡くださいませ」

■2:「体調はすっかり快復しましたので、お気遣いなくお申し付けください」

■3:「申し訳ございませんが少々遅れてしまいそうなので、どうぞお気遣いなく始めてください」

■4:「先日はお土産まで頂戴しまして恐縮です。皆でおいしくいただきました。ありがとうございました。ただ、今後はお気遣いくださいませんようお願いいたします」

■5:「今回の件は不慮の事故ですので、お気遣いなく今後ともよろしくお願いい申し上げます」

■6:「故人の遺志により家族葬を執り行います。ご参列やお香典、ご弔電、お供物などお気遣いなさいませんよう、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます」


【「類語」「言い換え」表現】

・お気になさらず ・お気兼ねなく ・ご心配なく ・お気持ちだけ頂戴します 

・お気遣いには及びません ・お構いなく ・結構です

いずれも「ありがとうございます」「恐れ入ります」など、感謝のフレーズとともに使用するのが正解です。特に「結構です」は突き放した印象と受け取られる場合があるので、親しい間柄への使用にとどめるのが賢明です。


【言われたときの返事の仕方】

「感謝」や「遠慮」、「断り」に「逆気遣い」、あるいは「社交辞令」なんてケースも考えられる「お気遣いなく」というフレーズ。実際に対面で言われたら、返事に迷いますね。

■対面の会話では

・「承知しました」

・「こちらこそ、お心遣い感謝申し上げます」

・「「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきます」

・「そう言ってもらえると助かります。では今回は遠慮しておきますね」

■メールの場合は

・「返信お気遣いなく」 → 受け取って終了でOK。

・「○○の件に関しては、お気遣いなく」などに対しては……
 「承知しました。今後ともよろしくお願いいたします」
 「恐縮です。こちらこそ、何卒よろしくお願いいたします」
 「ご丁寧なお言葉、ありがとうございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします」

等々、ごく短い返信を返しておくとスマートです。

***

「お気遣いなく」は、相手からの気遣いを遠慮する際に、感謝の気持ちを添えて使用する言いまわしです。相手のご厚意を「お気遣いなく」と一旦ご遠慮して、それでも「そんなことおっしゃらずに、どうぞ」と言われたら、素直に「ありがとうございます」と受け取ればよいのです。「儀礼的だなぁ」と思うかもしれませんが、これも「大人の語彙力」のひとつです。一方で、口癖になっている人もいるようですが似たようなシーンで使われる「大丈夫です」や「いいです」は稚拙なフレーズ。ビジネスシーンでは使用不可と心得ましょう。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店)/『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 働く人のための言いかえ図鑑』(サンマーク出版) :