「先例に準ずる」や「待遇は正規会員に準ずる」などの文言を見かけたことはありませんか?「同様」や「同等」「倣う」などの意味を持つ「準ずる」、あるいは「準じる」という言葉は、人事関係者ならなじみがあるかもしれませんね。今回はこの「準ずる」について、正確に意味を理解して正しく使用できるように解説します。
【目次】
【「準ずる」の基礎知識…「読み方」「意味」「語源」も!】
■読み方
「準ずる」で「じゅんずる」と読みます。
■意味
「準ずる」には、「ある基準のものと同様に考える」「手本、見本とする。のっとる。ならう」「つりあいをとる。はかりくらべる。比較する」といった意味が。一般的に「〇〇に準ずる」といったら、「〇〇と同様・同等に」という意味になります。
■語源
そもそも「準」という漢字は、「目安(=基準)」、「なぞらえる・手本にする(=準拠)」という意味があり、「水平」や水平を測る道具「みずもり(=水準器)」のことも表します。なるほど、そう考えると「準ずる」の意味もよくわかりますね。
「準」という漢字は、単体でも「じゅん」、「準備」「標準」「基準」「準拠」などほかの字との組み合わせでも「じゅん」と読むことが多いのですが、人名で「ひとし」と読ませることも。これは「準という漢字には、公平のほか、等しいというニュアンスもある」ため。「等(ひと)しい」のひとし、と考えれば納得ですね。
■「準ずる」と「準じる」の違い
「準じる」という言い方がありますが、これは「準ずる」を言いやすくしたもの、同じ言葉と捉えていいでしょう。「準ずる」のほうがかしこまったニュアンスです。
■「準ずる」「准ずる」「順ずる」の違い
「準ずる」と「准ずる」は同じ言葉として使用できます。一方、「順ずる」は教えや戒律などに「従う」という意味なので、“倣う”“同じ感じにする”というニュアンスの「準ずる」に比べてかなり強め。「従順」という言葉がありますが、「順ずる」はそんなイメージです。ビジネスシーンでは基本は「準ずる」が使われます。
【「使い方」がわかる「例文」6選】
「準ずる」は、規約や契約書などフォーマルな文書で使われることが多いので、使い方を例文でしっかり理解しておきましょう。
■1:「業務内容や報酬は、正社員に準ずるものとする」
■2:「地震や火災などの緊急時には、自治体や居住地域が定める防災マニュアルに準じた行動を速やかにとることが大切だ」
■3:「前例や慣例に準ずることが最善ではない」
■4:「勤続年数に準じたベースアップが望めない時代になってきた」
■5:「今回は最優秀賞に準ずる作品が複数ある」
■6:「納税額は前年の収入額に準じて算出される」
【「準ずる」の「類語」「言い換え」】
■従う
主にルール、規則などで使用します。
例:当社規定に準ずる=当社規定に従う
■基づく
「起因する」「それを根拠・基盤とする」の場合に。
例:会員規約に準じた利用=会員規約に基づく利用
■応じる
「変化に合わせて対応する」「適合する」という意味を強調したいときに。
例:経験に準じた業務=経験に応じた業務
■倣う(ならう)
「真似てする」「同じようにする」というニュアンスで。
例:前例に準ずるのを見直す=前例に倣うのを見直す
■則る(のっとる)
「規準・規範として従う」場合に。
例:法に準じて裁く=法に則って裁く
■踏襲する
「そのまま受け継ぐ」という意味合いで。
例:伝統に準ずる=伝統を踏襲する
【「準ずる」の「英語表現」】
・conforming to this manual(このマニュアルに準ずる)
・according to precedent(先例に準ずる)
・I am following his rules.(私は彼のルールに準じている)
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「準ずる」「準じる」は、類語や言い換え表現を確認してみたら意外に広い意味をもつ言葉でしたね。ビジネス文書ではよく使われるので、言い換えも含めてその場に応じて適切に使用してください。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『新選漢和辞典 Web版』小学館/『デジタル大辞泉』(小学館)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)/『情報・知識imdas』(集英社) :