雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は、アパレル&コミュニティーブランド「ouca」代表 田村優季さんの活動をご紹介します。
障がい者の困りごとから商品を開発、ストンとした筒状の靴下が人気
視覚障がい者のためにつくられた「ouca」の靴下。表裏がなく、かかともないので、どの向きからでも履けるのが特徴だ。ペアの1足ではなく、1本、3本の奇数売り。片方だけでも買える。
「視覚障がいのある人って、靴下をなくすことが多いそうなんです。探すのもすごいストレスだと。うちの靴下は1本余分にセットになっているので気持ちも少しは楽なはず。当事者の方からは『心が自立できた』と喜ばれました。障がいのない人にも便利なんですよ。足のサイズが異なる家族でも共用できますし、忙しいママも助かる。マイノリティの声を聞くことで、実は多くの方の悩みごとも解決できた、というよい例です」
幼い頃から服をつくるのが好きだった田村さん。国内外でファッションを学び、縫製技術者として腕を磨き続けてきた。’18年、祖母のあるひと言が転機となる。
「目も見えず耳も聞こえない祖母が『スクラップにしてくれ』と。そのときから、ファッションと『生きたいと思えること』を結びつけたいと考え始め、インクルーシブデザイン(※)にたどり着きました」
ネイルチップに点字を施した「点字ネイル」、筋ジストロフィーなど筋力の弱い人でも着やすいショーツやキャミソール、そして靴下。自分自身も含めて肌が弱い人のために、素材にもこだわる。
「障がいのあるなしにかかわらず参加できる商品開発やイベントも企画しています。コミュニケーションを通じて互いに気付きを得ることができれば、と。凸凹があるからこそ助け合い、共生できる」
ブランド名の「ouca」には「人生を謳歌しよう」という想いを込めた。誰かの不便をみんなの価値に。田村さんの挑戦は続く。
【SDGsの現場から】
●表裏、前後がなくどこからでもはける靴下
●お金や性の勉強会、盲ろう者施設でのイベントも
※インクルーシブデザインとは…従来、顧客対象から排除されてきた人を、デザインプロセスの初期から積極的に巻き込んでいく手法。1990年代のイギリスで提唱された。
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- PHOTO :
- 香西ジュン
- WRITING :
- 剣持亜弥(HATSU)
- EDIT&WRITING :
- 正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
- 取材 :
- 木佐貫久代