銀行や病院、調剤薬局などの窓口で「少々お待ちください」と言われることはよくありますよね。訪問した会社の受付や、通された会議室など、仕事の現場でもよく用いられています。慣れたこのフレーズですが、改めて考えてみると「少々」ってどのくらい? 正しい敬語? 目上の人に対して失礼じゃない? など、疑問がいっぱい! 今回はその「?」をスッキリ解決します。

【目次】

イラっとしない「少々お待ちください」の待ち時間はどれくらい?
イラっとしない「少々お待ちください」の待ち時間はどれくらい?

【「少々お待ちください」の基礎知識】

■意味

大きくは「少々」と「お待ちください」からなる、「少しだけ待ってください」と時間の猶予を告げるフレーズです。「少々」は名詞としても副詞としても使われますが、具体的にはどういう言葉なのでしょう。名詞の「少々」はわずかな分量や数量を示し、「塩少々を加える」などと使います。また「少々のことは大目に見る」などと、特に取り立てるほどでもない程度のことも表します。一方、副詞の「少々」も 、分量や程度が少しであるさまを示します。例えば、「お金が少々足りない」「もう少々詰めてお座りください」などと使います。「少しばかり」や「いくらか」「ちょっと」などに言い換えられます。また、「ほんのしばらく」や「ちょっとの間」という時間のことも表し、今回の「少々お待ちください」のように使います。

■程度

「少々お待ちください」の「少々」ってどれくらいの時間なのか気になるところですが、明確な指針はありません。しかし、ビジネスシーンで使用する場合には「すぐに対応しますので」が省略されていると思ってよし! 放っておかれて延々と待つことになる、とは考えなくていいでしょう。受付窓口の対応としては、お客様など相手の前からちょっと席を外すといった場合にも「少々お待ちください」と声をかける、ということのようです。

時間の感覚は個人差がありますが、「少々お待ちください」と言われたら、1~2分、長くて5分程度といったところでしょうか。10分、15分となると「少々ではない!」という感覚の人が多いかもしれませんね。そういう場合には「15分ほどお待ちください」など、目安の時間を示すほうが親切です。


【「少々お待ちください」は敬語?より丁寧な表現は?】

「お待ちください」は尊敬を表す接頭語「お」と、丁寧語である「~ください」を使用した語。「少々お待ちください」は正しい敬語なのですが、相手に有無を言わさない…というニュアンスもあるため、場合によってはより敬意の高い表現や、丁寧な言い回しのほうが適切です。

・「少々お待ちくださいませ」

・「少々お待ちいただけますか」

・「少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」

また、このフレーズの前に下記のような“クッション言葉”を挟むのも効果的です。

・「大変恐縮ですが、少々お待ちいただけますでしょうか」

・「申し訳ございませんが、少々お待ちくださいませ」


【ビジネスでこのまま使える「例文」4選】

■1:「ただいま担当者がまいりますので、少々お待ちください」

■2:「確認いたしますので、少々お待ちくださいませ」

■3:「すぐにご用意いたしますので、あちらにおかけになって少々お待ちください」

■4:「〇〇と代わりますので、少々お待ちください」

1~3は対面シーンを想定しての例文、4は電話での一例です。「少々お待ちくださいませ」という言葉、実はメールでの使用には注意が必要です。対面や電話はリアルタイムでの接触なので「少々」というワードも使えますが、メールの場合は送信側と受信側にタイムラグが生じますし、「少々」の感覚に大きな違いが生じかねません。例えば、なんらかの依頼を受けて、上司などとの相談や確認などで返答の時間の猶予が欲しい場合、相手が「これは数日かかるかな?」と確実に理解してもらえるとわかっているケースを除き、「検討いたしますので少々お待ちください」ではなく、「1~2時間以内に」「明日までには」などと、具体的な時間や日数を提示したほうがビジネスマナーとしては正解です。あるいは、「検討いたしまして、明日までにはご連絡いたします。少々お待ちください」など、時間を明記したうえで「少々お待ちください」を使ってみてください。


【「少々お待ちください」の「類似」「言い換え」表現】

「少々お待ちください」同様に、「そんなに長くはお待たせしませんので…」といった意味のフレーズもチェックしておきましょう。

・「しばらくお待ちください」

・「しばしお待ちください」

・「少しお時間いただけますでしょうか」

・「少々お時間いただけますと幸いです」

・「2、3分お時間よろしいですか?」

・「少しだけお時間ちょうだいできますか?」


【「少々お待ちください」にはこんな返答が正解!】

対面や電話の場合には、うなずいたり「はい」「わかりました」「承知しました」と短く返答すればOKです。メールの場合も「承知しました」と返信したり、「今週中にはお返事いただけますと幸いです」など期限を示した返信をするとよいでしょう。

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ビジネス使用なら、曖昧な表現や誤解を生みそうな言い回しは避けて正解。けれど今回の「少々お待ちください」は、円滑なコミュニケーションにおける“クッション”としての役割も担ったフレーズです。上手に使いこなしてくださいね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社) :