2018年1月にフランス・パリで催された人気ブランドの新作ハイジュエリー・コレクション発表会を、パリ在住のライター&エディター安田薫子さんがレポートします。シャネル、ディオール、ショーメ、ショパールから登場した、ダイヤモンドやサファイアがまばゆい新作ジュエリーたちをご覧ください。
■Chanel(シャネル)
獅子座の女ガブリエルの象徴、ライオンがテーマ
シャネルは、カンボン通り31番地のアパルトマンに飾られているライオンの像からインスパイアされたコレクション「L'Esprit du Lion(レスプリ デュ リオン)」を発表しました。ガブリエル・シャネルは獅子座の自分に関係のあるモチーフや、肉親と縁が薄い寂しい子供時代を送ったせいか、”麦の穂”などの幸福をもたらすと言われているモチーフを生涯、身近に置いていました。彼女のアパルトマンには、こうしたオブジェやアート作品が多数残されています。
シャネルのハイジュエリーの特徴は、まずデザイン優先だということ。通常ジュエラーは、先に素晴らしい宝石を見つけて、そこからデザインを起こすのですが、シャネルの場合は、デザインを起こし、そのデザインに合う宝石を探すという行程を踏むのだそうです。
今回は、さまざまな表現が「チェーン」でなされているのが新しい点。ゴールドのデザインを遊んだり、ダイヤモンドをちりばめたり。ネックレスには、ゴールドのベルトとしても使えるアイテムも!
さらに、シークレットウオッチも展示されていました。これからバーゼル ワールドに展示されるとのことで、本展覧会が世界初公開となりました。
女性のエレガンスと強さを表現した、シャネルらしいハイジュエリーがそろっていました。
■Dior(ディオール)
秘密に彩られたヴェルサイユ宮殿のミステリアスな魅力
「Dior à Versailles, pieces secretes(ディオール ア ヴェルサイユ, ピエス スクレ)」。ヴェルサイユ宮殿はメゾン ディオールにとって、いつもインスピレーションの源だったそう。36ピースに及ぶ本コレクションは、ヴェルサイユがテーマのシリーズ3部作の最終作に当たり、隠し通路と秘められた私室からなるヴェルサイユという迷宮に誘います。デザイナーのヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌはいつも、ハイジュエリーとは思えない自由な発想のクリエーションを見せてくれます。
「死を思え」という意味のラテン語、メメント・モリの象徴であるスカルモチーフが使われています。リュクスなだけでも、かわいいだけでもない、ヴィクトワールの「怖可愛ラグジュアリー」 の世界観がユニーク。コンテンポラリー・アートに通じるような気がします。
■Chaumet(ショーメ)
北の国とジョゼフィーヌのロマンティックを表現
「レ モンド ド ショーメ」コレクション プロムナード アンペリアルとして、最も大きく取り上げたテーマは、ロシア。ショーメとロシアは友情の歴史で結びついているからだそうです。
メゾンの歴史を紐解くと、多くのロシアの王侯貴族がショーメのジュエリーを購入しているのがわかります。このシリーズで注目なのは、ペンダントをブローチとして使えるなど、ひとつのジュエリーが何通りかの方法で身につけられるという点。
続くテーマは、「ジョゼフィーヌ」コレクション エグレット アンペリアル。ナポレオンの妃 ジョゼフィーヌをイメージしたジュエリーです。情熱的な彼女らしく、宝石には、真っ赤なピジョンブラッドのルビーを採用。
淡いピンクのパパラチアサファイア、ピジョンブラッドのルビーなど、女性が心引かれるフェミニンなコレクションでした。
■Chopard(ショパール)
オートクチュールにオマージュを捧げた繊細なハイジュエリー
ショパールの共同社長兼アーティスティック・ディレクター、キャロライン・ショイフレは、ハイジュエリーにチタンを使うなど革新的なデザインで知られていますが、今回は意外にもクラシック・エレガンスに回帰。題して「Precious Chopard Collection(プレシャス ショパール コレクション)」。イノベーションもクラシックもどちらも好きだからだそうです。
見どころは、メタルと宝石をギピュール・レースのように繊細に仕上げたクリエイティビティーと職人技。これはオートクチュールとハイジュエリーのミクスチャーを意味するそう。メタルはすべてホワイトゴールドで、輝きを最大限まで引き出します。
宝石自体のクオリティー、職人技、デザインのクリエイティビティー。そのすべてがそろって初めて完成するのがハイジュエリー。極限までの美意識が求められる世界には、感嘆するほかありません。
- TEXT :
- 安田薫子さん ライター&エディター