目にした瞬間からときめき、その小さな佳味を口にすればたちまち至福が訪れる…そんなショコラのおいしさをよりふくらませてくれるのがお酒。

雑誌『Precious』2月号では、「ショコラとお酒、魅惑のマリアージュ」と題して、定番からこの時期だけの限定チョコまで、美しいショコラととっておきのお酒のペアリングを提案しています。

今回は、味も種類も百花繚乱のチョコレートを、お酒と、よりおいしく、ヘルシーに楽しむために知っておきたいことを、3人のプロにお伺いしました。

【教えてくれたのは…】

市川 歩美さん
チョコレートジャーナリスト
5歳からチョコレート愛好家で、パリでボンボンショコラのおいしさに目覚める。長年、テレビ局ディレクターを務め、独立。カカオ生産地など国内外を取材し、チョコレートの魅力を伝え続ける。
杉山 明日香さん
ワイン研究家・唎酒師
有名予備校の数学講師を務める一方、ワインスクールの主宰、ワインや日本酒の輸出入も行う。ワインバー&レストラン「ゴブリン」や「カーヴ・ド・アスカ」、パリでもレストランをプロデュース。
清水 加奈子さん
管理栄養士
食品メーカーの研究職などを経て独立。国際中医薬膳師、調理師の資格をもち、メディアで提案する簡単で手軽なダイエットレシピも人気。監修書に『太らない食べ方』(電子版/ヘリテージ)など。

知ることでよりおいしくなる当世ショコラ事情

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チョコレートの知っておきたいこと

■1:注目ワードは贅沢感と信頼感。「プラントベース」や「国産食材」にも注目。

カカオ豆から製品になるまでを一貫して行うビーン・トゥ・バーも定番となり、より多彩を極めるショコラ。近年は、牛乳を豆乳やオーツミルクに替えるなど、動物性の材料を使わないプラントベースのものも増えている。

「最近のプラントベースのチョコはすっきりとした品のよい後味で、体にも楽。ヴィーガンではない方がおいしさやヘルシーというオプションで選ぶケースも増えています。今年のバレンタイン限定商品では、日本の生産者が育てた良質なナッツやフルーツを使ったものも豊富。アラン・デュカスのように日本の食材に刺激されたシェフのチョコにも注目です」(市川さん)

■2:商品の背景やSDGsを意識して選ぶのも大人のたしなみ

カカオハスク(外皮)で香りをつけたガナッシュ、カカオハスクを使ったカカオティーなど、ショコラ製造の過程で通常は廃棄される部分を活用したものが出てきたりと、SDGsに即した商品にも注目したい。

「カカオ産地で問題になっている貧困や児童労働の問題に取り組むなど、生産者の生活向上を考えた商品も増えています。つくられる背景を考えて選ぶことで未来を変えることができる。そんな食べ方もラグジュアリーですよね」(市川さん)

■3:ショコラとお酒、王道の組み合わせはウイスキー。ワインや日本酒は「甘口」を

お酒は製造法により、ワインや日本酒などの醸造酒、ウイスキーなどの蒸留酒に分けられ、アルコール度数約5~15度の醸造酒に対し、醸造酒を蒸留させて造る蒸留酒は約25~60度と高め。風味の強いチョコはアルコール度数の高いほうが合わせやすいそう。

「アルコール度数が高いとお酒がチョコの甘さに負けず、鼻から抜けるチョコの芳醇な香りを広げてくれます。醸造酒の場合、辛口の白ワインや日本酒だとチョコの甘さが負けてしまい、お酒の酸味を感じやすくなるので、甘みの強いお酒を合わせるとよりマリアージュを楽しめます。

また、柑橘類を使ったチョコなら、似た香りや味わいのあるお酒を選ぶなど、チョコに使われている食材の味や風味を軸にすると合わせやすいですね」(杉山さん)

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ペアリングについて

■4:お酒を飲むタイミングは、チョコを飲み込んでから?チョコとお酒を一緒に?

「チョコレートを飲み込んだ後にワインなどの醸造酒を飲むと、口中のチョコの風味とお酒がきれいに混ざり合います。ウイスキーなど度数の高い蒸留酒は、チョコと一緒に口に含むことで、チョコの甘さとアルコールの強さがお互いに和らぎます」(杉山さん)

■5:カカオポリフェノールや食物繊維には、老化予防やリラックス効果も。

「神様の食べ物」を意味する学名をもつカカオ。その代表的な栄養成分がカカオポリフェノール。苦味や渋味があるため、カカオの含有量が高いものほど苦くなる。

「カカオポリフェノールは高い抗酸化作用をもち、肌老化や動脈硬化を予防し、抗ストレス効果も期待できます。また、カカオには鉄分などのミネラルや食物繊維も多く、苦味成分のテオブロミンは脳内物質のセロトニンに働きかけ、リラックス効果も。カフェインは脳を覚醒させ、集中力を高めます。これらの成分はカカオ含有量が多いほど多く含まれています」(清水さん)

■6:1日の適量は25gまで。食べる時間は14〜16時、または食前がおすすめ。

カカオ豆の脂肪分は体脂肪として蓄えられにくいものが中心だが、カカオ含有率が高くなるほどカロリーも高くなる。糖分が多いチョコもあるため、ヘルシーに食べるなら1日25gまでを目安に。

「1日のうち体温が高く、細胞が活性化する14~16時にかけては脂肪をため込みにくいので、おやつの時間に食べるのがおすすめ。ポリフェノールの抗酸化作用は摂取後2~4時間で血液中から消失するといわれるため、昼食前・15時のおやつ・夕食前などに分けて食べるといいでしょう。お酒と楽しむ場合は、糖質やカロリーが摂取過多になりやすいので注意を」(清水さん)

■7:コーヒー×チョコ。リラックスタイムのお供も、カフェイン量に注意を。

「厚生労働省の調査(2008年)では、ハイカカオチョコのカフェイン含有量は100gあたり70~120mg、一般的なミルクチョコはその1/4〜1/3です。

カフェインは眠気や疲労、ストレスなどに効果を発揮しますが、軽い依存症になりやすいもの。カナダではカフェイン摂取量の目安は1日400mg以下とされていますが、ドリップコーヒー1杯(100mg)では60mgなので、チョコと組み合わせると意外とすぐ超えてしまいます。摂りすぎには注意を」(清水さん)

■8:バレンタイン時期に開催。マニアも熱狂するチョコレートの祭典。

今年も、伊勢丹新宿店の「サロン・デュ・ショコラ 2023」(PART1は1月19~25日、PART2は1月29日~2月5日)、阪急うめだ本店の「バレンタインチョコレート博覧会2023」(1月20日〜2月14日)、ジェイアール名古屋タカシマヤの「2023 アムール・デュ・ショコラ」(1月19日~2月14日)などが開催予定。

「サロン・デュ・ショコラにはチョコマニアも多く訪れています。百貨店が開催するイベントは日本未上陸のショコラティエのものや、近年はカカオ産地からの出店も増えています。特別な贈り物選びにもいいですね」(市川さん)

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PHOTO :
神林 環
EDIT&WRITING :
松田亜子、安村 徹(Precious)