「憤り」は「強い不平や恨み、怒りなどをいだくこと」ですが、そこには「恨みや怒りで心が晴れず悩み苦しむ」強い感情が含まれています。「怒り」や「立腹」などとの違いや使い方、「憤り」の理解を深める例文をご紹介します。
【目次】
【「読み方」と「意味」】
■「読み方」
「憤り」は「いきどおり」と読みます。「ど“う”り」でなく、「ど“お”り」、送り仮名は「憤おり」でなく「憤り」なので注意。
■「意味」
「憤り」は動詞「憤る」が名詞化した語です。「憤」という字の音読みは「ふん」。「心中もだえて、はけ口を求めている状態」を指し、「憤慨」「憤怒」「鬱憤(うっぷん)」「憤懣(ふんまん)」など、強い不平や恨み、怒りなどを表す熟語に多く使われています。そして「憤り」は、「強い不平や恨み、怒りなどをいだくこと。心が晴れないで悩み苦しむこと。また、そういう気持ち」を表す言葉です。非難する気持ちから恨み怒ることであり、多くは他人にはわからない内にこもった感情であるとされています。
【「憤り」の理解を深める「例文」4選】
「憤り」と対で使われる動詞は「感じる」「覚える」「わく」「抑える」などです。他人には理解しがたい感情だけに、「やり場のない」と修飾されることも多くあります。
■1:「理不尽な対応にやり場のない憤りを感じた」
■2:「彼の傍若無人なふるまいに憤りを覚えた」
■3:「被害者が苦しんでいる一方で、加害者がのうのうと暮らしている現実に憤りを禁じ得ない」
■4:「陰でこそこそとルールを破る卑劣なやり方に、憤りを隠せなかった」
【「憤り」の「類語」「言い換え」表現】
「憤り」の類語には「怒り」や「腹立ち」「立腹」が挙げられます。共通点は「怒っていること」ですが、「憤り」以外の3語は「他人にも腹を立てている状態がわかる」のに対して、「憤り」は他人にはわからない内にこもった感情であることが多く、感情の発露がない、あるいはわかりにくい状態です。「怒り」は「怒りを招く」と使いますが、「憤りを招く」とは言わないので注意。また、目上の方のことを「お怒り」「お腹立ち」「ご立腹」と表現しますが、「ご憤慨」や「お憤り」とするのは誤用です。「憤慨されている」「憤っていらっしゃる」が正解です。
■怒り ■腹立ち
■立腹(りっぷく)
「立腹」は「腹を立てること。怒ること」。「無責任なやり方に立腹した」などと使います。
■憤怒(ふんど・ふんぬ)
元来は「ふんぬ」と読まれていましたが、現在では「ふんど」が一般的。意味は文字通り「憤り怒ること」。多く書き言葉として使われます。
■憤慨(ふんがい)
「憤慨」とは「憤り、嘆くこと。ひどく腹を立てること」。「憤怒」同様「強い怒り」を表現した言葉ですが、こちらは話し言葉としても使用されます。
【「憤り」を英語で言うと?】
「憤り」を表す英単語は[anger]や[indignation]です。[indignation]は、特に不正や不公平に対する怒りに使われます。
・He could not contain his anger in the face of such an unfair handling of the matter.(そのような不当な処置に憤りを禁じ得なかった)
・He rushed out of the room in indignation.(彼は憤慨して部屋を飛び出した)
・He was indignant at his friend's betrayal.(彼は友人の裏切りに憤慨していた)
・He was indignant with the children for throwing stones at his dog.(彼は犬に石を投げた子供たちに憤慨していた)
【「憤り」の「使い方」の注意点「まとめ」】
■「憤り」は他人にはわかりにくい、内にこもった強い恨みや怒りに苦しむこと。
■「お憤り」とは用いない。
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「憤り」という言葉には「怒り」や「腹立ち」では表現しきれない、内から湧き上がるような強い感情が込められています。軽々しい気持ちでは使えない言葉ですが、それだけに、怒りの強さ、コトの重大さを伝えたい、「ここぞ」という場面では大きな威力を発揮する言葉といえそうです。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『新選漢和辞典Web版』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) :