「出精値引き」というビジネス用語をご存知でしょうか。業界や業種によっては「?」な人もいるかと思いますが、見積りの作成や予算立てには欠かせないワードです。今回はその使い方などを見ていきましょう。

【目次】

「出精値引き」を要求してはいけません!
「出精値引き」を要求してはいけません!

「出精値引き」とは?「読み方」と「意味」 】

■読み方

「出精値引き」と書いて「しゅっせいねびき」と読みます。

■意味

『デジタル大辞泉』(小学館)には、「出精値引き」は「見積書の明細に使われることのある項目」「経費の見積を出した側が、自らの努力によって値引きしたことを表す項目」とあります。「出精値引き」とは、「出精=精を出して努めること」による値引きなのことなのです。例えば、予算100万円の仕事に対して見積り額が110万円になった場合、「出精値引き10万円」として金額を100万円に収める場合に用います。この「出精値引き10万円」は、品質やサービスの質などを落とさず、見積もりを出す側の努力で行われるもの。値引きの明細には言及しませんが、相手には「出精値引き」によって予算内で収める努力をしていることが伝わります。また、「出精値引き10万円しての100万円」は、「精一杯頑張って100万円」という意思表示でもあり、「これ以上予算を削るのは勘弁してください」という意味も含まれていると読んでいいでしょう。


【「出精値引き」の「使い方」】

■どう使う?

見積書の中で使われるワードです。見積り金額を記載したうえで「出精値引き」という項目の金額の頭に「▲」か「-」を付けるのが一般的。色を変えたりほかの記号を使うケースもありますが、初めての取引など慣れない相手の場合には、間違いのないように「▲」か「-」を用います。値引き前の金額(総額)も記載し、出精値引がいくらなのかをはっきりさせておくことが大切です。

■誰が使う?

見積りを作成する職種や立場の人なら使うことがあるでしょう。気を付けたいのは、「出精値引き」の要求は下請法に抵触する可能性があるということ。「前回同様、予算をオーバーしそうなぶんは出精値引きでよろしく」などと要求してはいけない、ということです。信頼関係があるうえでの配慮であることを覚えておきましょう。


【「出精値引き」はどう言い換える?「例文」3選】

見積書の項目では「出精値引き」と明記すべきですが、口頭やメールなどでそれについて言う際に、「出精値引きしましたので」と表現するのがはばかられることもあるでしょう。そんなときには、下記のように言い換えても相手に伝わるはずです。

■1:「予算内に収める努力をしました」

■2:「少々オーバーしましたが収めました」

■3:「オーバーしたぶんは丸めてご予算に見合わせました」

「出精値引き」は企業努力による値引きですが、ビジネスシーンでは「数字を丸める」という行為が行われることがあります。これは、数値を扱いやすくするために、端数を切り上げたり切り捨てたりすること。どの桁から「端数」とするかはケースバイケースです。「この金額、丸められませんか?」は、基本的には割引きを求めているということ。どの桁を丸めるのかによって金額は大きく変わるので、意思疎通が肝心です。


【「値引き」「割引き」「値下げ」の違いをチェック!】

「値引き」「割引き」「値下げ」は、どれも定価や予定額より低い金額で取り引きされることを示しますが、明確な違いがあるのをご存知でしょうか。会計上のそれぞれの意味を確認しましょう。

・値引き

商品やサービスの質に問題がある場合に、その代償として代金を安くすること。賞味期限や消費期限が近付いている商品を「30%値引きする」などと使います。

・割引き

期限以前に支払いがあった場合に代金を安くすること。もともと掛代金には後払い期間に応じた利息が含まれているので、支払いが早まった期間に応じて利息相当分を割り引きます。

・値下げ

品質やサービスに問題はなくても、売り切るために値を下げること。閉店セールは、値下げして在庫処分することです。

上記はあくまでも会計上の使い分けで、街にあふれる「値引き」「割引き」「値下げ」が明確に使い分けられているとは言いがたいですが、知識としてもっておくと雑談の折りにも使えそうです。そして「出精割引き」はワンワードとして、「質を落とさず、企業努力によって金額を下げること」としっかり覚えておきましょう。

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日常的なビジネス用語だと思っていても、異業種や職種の違う人にとっては聞き慣れない場合も。普段自分が使わない用語も、知っておいて損はありません。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『ビジネス用語図鑑』(WAVE出版) :