仕事のお付き合いやビジネスシーンでの会話で、「何か違う?」と感じる敬語表現ってありませんか? 敬語を重ねて使う二重敬語や、身内を立ててしまう「ウチソト敬語」、そして敬語の種類を間違って使用する例など、日本語の敬語表現はとっても複雑で難しいもの。今回は、日常会話でもビジネス会話でも頻出する「食べる」という単語の敬語表現について学びます。
【目次】
【「食べる」の尊敬語・謙譲語・丁寧語】
まず確認しておきたいのは、敬語は5種類あるということです。ざっとおさらいしならが「食べる」の敬語表現を見ていきましょう。
■敬語1:尊敬語
「尊敬語」は、相手や第三者を敬って使うもの。その人を立てて行為や状態を表します。「食べる」の尊敬語は「召し上がる」「お食べになる」「食べられる」「あがる」など。
例)どうぞお召し上がりください。/どうぞおあがりください。
■敬語2:謙譲語Ⅰ
「謙譲語」は、自分側の行為や物事を低めることで行為の及ぶ先を高め、敬意を示します。「食べる」の謙譲語は「頂戴する」「頂く」。「頂戴する」のほうがややかしこまった表現です。
例)ありがたく頂戴いたします。/ありがたくいただきます。
■敬語3:謙譲語II
「謙譲語II(丁重語)」は、自分側の行為や物事を話や文章の相手に対して丁重に述べるものです。「参る」「いたす」「おる」などの語を使います。
■敬語4:丁寧語
「丁寧語」は、話し手の丁寧な気持ちを表現するもの。語尾に「です」「ます」「ございます」」を用います。「食べる」の丁寧語は「食べます」となります。
例)毎日朝食を食べます。
■敬語5:美化語
言葉の頭に「お」「ご」を付け、物事を美化する表現です。「お水」「お料理」「お食事」などとなります。
【とっさに使える「食べる」の謙譲表現「例文」3選】
「食べる」の敬語表現として使う機会が多いのは、尊敬語の「召し上がる」と、謙譲語の「頂戴する/頂く」でしょう。なかでもすすめられた際のリアクションとして、謙譲語は大人なら瞬時に口から出るべきワードです。
■1:「遠慮なく頂戴します」
外出先でお茶など出された際に。「いただきます」に置き換えも可能ですが、目上の相手ならより丁寧に「頂戴いたします」を使いたいところ。
■2:「先ほどいただきましたので、どうぞお気遣いなく」
出先で昼食に誘われたときなどに。「頂戴しましたので」に置き換えも可能。
■3:「十分いただきましたので、もう結構です。ありがとうございます」
お代わりをすすめられた際などに。「頂戴しましたので」に置き換え可能です。感謝の気持ちを表す「ありがとうございます」を添えるとよりエレガントな表現に。
【「飲む」の謙譲語は「食べる」と同じ?】
「食べる」同様、さまざまなシーンで使う「飲む」の敬語はどうなるでしょうか?
「飲む」の尊敬語は「召し上がる」「お飲みになる」「飲まれる」「あがる」。謙譲語では「頂戴する」「頂く」となります。この連載「大人の語彙力強化塾」の第58回で取り上げた「頂戴する」でも解説していますが、「頂く」には複数の意味があります。例えば、「1.頭にのせる」「2.敬意を表して高くささげる」「3.敬って自分の上の者として迎える」「4.もらうの謙譲語」「5.食う、飲むの謙譲語」「6.苦労もなく手に入れる」「7.しかられる」など。このように「頂く」はビジネス会話やメールで重宝するワードなのです。
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大変身近な行為である「食べる」や「飲む」の表現は、会話やメールなどでの頻繁に使うことがあるからこそ正しく用いたいもの。相手によって言い方が変わる敬語はややこしいこともありますが、自信をもって使いこなせたらすてきです!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『敬語マニュアル』南雲社/『敬語ネイティブになろう!!』(くろしお出版)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社) :