「原材料費の高騰や電気料金の値上がりなどで、町の小売店の経営は軒並み疲弊しています」――こんなニュースを何度見聞きしたことでしょう。今回取り上げる「疲弊」という言葉の意味は「心身が疲れて弱ること」ですが、企業や自治体、国などに対しても使われますね。使い方を間違えないよう解説します。
【目次】
【「疲弊」という言葉をしっかり把握!基礎知識】
■読み方
「疲弊」は「ひへい」と読みます。
■意味
「疲弊」はふたつの意味をもちます。
人の状態を指して言う場合は「心身が疲れて弱ること」を意味し、「神経が疲弊する」などと言います。人間に対してだけでなく、「経済状態などが悪化して活力をなくしてしまうこと」として、国力や経済力などが弱まった状態にも使います。また、費用がかさんで困窮することにも「財政が疲弊する」のように使います。
【「疲弊」の「使い方」がわかる「例文」7選】
「疲弊」という言葉は普段の会話ではあまり聞かないので、「どのようなシーンで使うべきかわからない」という人もいるかもしれませんね。例文で使用シーンをシミュレーションしてみましょう。
■1:「人手不足による仕事量の増加で、新人からベテランまで疲弊する日々が続いている」
■2:「売り上げ減少、経費削減、リストラ…疲弊する話題ばかりだ」
■3:「慣れない現場での慣れない仕事に疲弊しないよう、みんなでサポートし合ってください」
■4:「イベントの縮小や中止が相次いでいる自治体は、財政が疲弊しているのが明らかだ」
■5:「国力が疲弊すれば国民の幸福度も下がるでしょう」
■6:「疲弊感が漂う上司のもとでは、やる気が出ないのも仕方ない」
■7:「疲弊気味に見える従業員には積極的に声をかけて、フォローをお願いします」
6の「疲弊感」は疲れによって勢いが衰えた感じを言い、7の「疲弊気味」は疲弊の傾向にあるということ。似ているようで微妙に違う──日本語の難しいところですね。
【日常会話なら「疲弊」より「言い換え表現」のほうがハマります!】
疲れることの多い現代社会です。「疲弊」というストレスを溜めないためには、日ごろから“疲弊アピール”しておくのも自衛のために必要かもしれません。「疲弊」の類語や言い換え表現もマスターして、それとなく周囲に“疲弊アピール”してみては?
■「疲弊」の類語
・疲労(ひろう):筋肉や臓器あるいは精神機能を使いすぎた結果、機能が減退してだるさなどを感じるようになること。「金属疲労」というように、何度も使われて壊れる状態になることも言う。また、財政難や貧しくなることも表します。
・憔悴(しょうすい):心配や疲労・病気のためにやせ衰えること。
・逼迫(ひっぱく):行き詰まって余裕がなくなること。事態が差し迫ること。例:「財政が逼迫する」「情勢が逼迫する」
・過労(かろう):身心を損ねるほど疲れが溜まること。例:「過労から病気になる」
・倦怠(けんたい):心身が疲れてだるいこと。
■「疲弊」の言い換え表現
口語では、下記のような言い換え表現のほうがなじみがあるでしょう。ただしビジネスシーンで使う際は、親しい間柄の人との会話にとどめておくのが“大人の語彙力”です。
・くたくた ・へとへと ・ぐったり ・へたばる ・ばてる ・あっぷあっぷ
【「疲弊」を「英語」にすると…?】
■exhaustion
心身の極度の疲労・消耗や、疲労困憊を表す名詞です。
例:He's in a state of exhaustion.(彼は疲労している)
■impoverishment
人や社会などを困窮させる、質や能力などを低下させるという意味の「疲弊」には〔impoverishment〕を。
例:It's difficult to recover from the impoverished economy.(疲弊した経済の回復は難しい)
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心身ともに疲れている状態をいう「疲弊」ですが、体が疲れていれば心も弱り、精神的につらいときには体も弱るもの。どちらも元気でいるためには無理は禁物です!
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『すぐに使えて、きちんと伝わる 敬語サクッとノート』(永岡書店)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社) :