「よしんば」という言葉をご存じですか? 文字で見れば意味がわかる人でも、会話の中で唐突に使われたら、咄嗟に戸惑ってしまうかもしれませんね。今回は「よしんば」の意味と共に、その使い方を理解するための例文や類語をご紹介します。

【目次】

「もし」よりも強い仮定を想定します。。
「もし」よりも強い仮定を想定します。

【「よしんば」を正しく理解するための「基礎知識」】

■意味

「よしんば」は「たとえ〜だったとしても」「もし〜だったとしても」という意味の副詞です。「例え」を用いて、自分の気持ちを強調する際に使われますが、少々古めかしい印象ですね! 「逆接の仮定条件」を示す書き言葉として主に使われますが、「逆説の仮定条件」については、のちほど例文でご説明します。

■漢字

「よしんば」を漢字で書くと「縦しんば」もしくは「縦んば」となります。「縦(たて)」が向きを示すことはご存じかと思いますが、「縦(よし)」には「たとえ〜であっても」という意味があり、「縦しんば」はこの「縦」を強めた語なのです。そのため「もし〜だったとしても」と意味は同じであっても、「よしんば」は話し手がそれを肯定しがたい思いでいることを強めて示しています。この点についても、詳しくは例文でご説明しますね。

■英語で言うと?

「よしんば」を英語で表現する際によく使われるのは、[even if]や[even so]です。

・Even if it's true, what you did is still impermissible.(よしんばそれが真実だとしても、君のしたことは許されない)

・Even so, that doesn't justify what you did.(よしんばそうであっても、君のしたことは正当化されない)


【「よしんば」の「使い方」がわかる「例文」7選】

まず、「よしんば」が「逆説の仮定条件」を示す副詞であることについてご説明しましょう。

■1:「よしんば彼の意見が正しいにせよ、私は絶対に賛成できない」

■2:NG「よしんば彼の意見が間違っているにせよ、私は絶対に賛成できない」

この例文の意図は「彼の意見には賛成できない」が核となっています。「もし正しくても賛成できない」は逆説の文章として成立しますが、「もし間違っていても賛成できない」は文章的におかしいですね。

■3:「よしんば彼の意見が間違っていても、私は賛成するよ」

■4:NG「よしんば彼の意見が正しくても、私は賛成するよ」

1や2のように、文末に否定形を置く以外にも、「たとえ〜であっても、〜だ」という使い方もできます。前後の文章が意味として逆の関係になっていれば、使い方として問題ありません。

■5:「よしんば徒労に終わったとしても、私はチャレンジしてみたいのです」

「徒労に終わったとしても」と例えを用いて、「チャレンジしたい」という自分の気持ちを強調しています。

■6:「よしんば今回はよい結果を出せなくても、私はあなたの実力を信じています」

「よしんば〜」は、話し手が「〜」の事実に対し、肯定しがたい思いを抱いていることを示しています。

■7:「よしんばあなたが私を騙しているのだとしても、私はあなたが好きだから、ずっとそばにいます」

この例文は、話し手が「騙されているとは思っていない」もしくは「騙されているとは思いたくない」気持ちを表現しています。


【「よしんば」の「類語」表現】

■たとえ

「たとえ嵐になったとしても、その日は出張しなければならない」のように、「たとえ」は「よしんば」同様、仮定された条件で逆接で続く場合に用いられます。「よしんば」はやや古めかしく、口語では「たとえ」が多く使われます。

■万が一 ■万一

「万が一」もしくは「万一」は、何かを仮定して言う場合、その仮定の実現性を小さいもの、滅多に起こらないものとして言うときに用いる語です。

■もし ■仮に

「もし」は、確定していない状況、事実に反する状況などに広く用いられます。仮定された条件が順接で続くことが多く、「もし晴れたとしても、出張には行かなくていい」のように、逆接で続くことは少なく、この場合には「たとえ」を用いるのが一般的です。「仮に」は、「仮に明朝が嵐の予報であれば、出張には行かない」のように、「明朝が」のような仮定の状況をはっきり示しているときに用いることが多い言葉です。

***

「よしんば」は少々古めかしくなじみのない表現ですが、それだけに効果的に使うことができれば、自分の強い気持ちを表現することができます。「逆説的に用いる」という原則を念頭に、「ここぞ!」というときに使ってみてくださいね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『さりげなく、折り目正しく「こころ」を伝える 美しい「大和言葉」の言いまわし』(三笠書房) :