例えば、大人が子どもの面倒をみたり高齢者の世話をしたり、屈強な騎士がお姫さまを命をかけて守ったり──そこにはたらくのが「庇護欲」です。今回は 「守ってあげたい」という感情・欲求のことをいう「庇護欲」について解説します。

【目次】

弱き者を守ったり助けたりする側も「欲求」を満たしているのです。
弱き者を守ったり助けたりする側も「欲求」を満たしているのです。

「庇護欲」ってどんなもの?「読み方」や「意味」など基礎知識】

■読み方

「庇護欲」は「ひごよく」と読みます。

■意味

「庇護」は「庇(かば)い守ること、いたわり守ること」という意味です。したがって「庇護欲」とは、「自分より弱い者や弱い立場の人を守りたいという欲求」ということになります。

年齢・身体・体力・能力的に弱い人が対象になるだけでなく、経済的に困窮している人や、立場の弱い人を守り助けたいという欲求も「庇護欲」のひとつ。いずれも状況としては誰かの助けになっているのですが、助ける側にも「庇護欲」が満たされるという利点があります。

■語源

「庇」という漢字には「庇(かば)う」「いたわる」「助ける」という意味があります。「護」にも「庇い守る」「助ける」「救う」「見守る」などの意味があるため、漢字からみても「庇護」はとても心強い言葉だと言えそうです。


【「庇護欲」の使い方がわかる「例文」5選】

■1:「か弱く見える女性に対して、多くの男性は庇護欲が掻き立てられるのではないだろうか」

■2:「いつも気丈で明るく元気な人の、ふと見せる弱気や曇った表情などが庇護欲を刺激する」

■3:「強がりで人に甘えることが苦手な人は、それが人の庇護欲を掻き立てていることに気づかないものだ」

■4:「楽しいばかりではない子育てを放棄しないでいられるのは、庇護欲が満たされることが一因かもしれない」

■5:「親が子どもに捧げる愛情には庇護欲も含まれているが、高齢になった親に対して子どもがもつ感情にも庇護欲が含まれているようだ」


【「庇護欲を掻き立てる」ってどういうこと?

大人が子どもや高齢者に、保護が必要な立場や状況にある人になど、社会的弱者に対してもつ感情が「庇護欲」だということがわかったでしょうか。ところがこの「庇護欲」は、下記のような人に対しても掻き立てられることがあります。

・不器用 ・人に頼らない ・信じやすい ・遠慮がち ・弱みを見せない ・強情 ・寂しがり ・常に明るい ・ポジティブ思考 ・面倒見がいい

「掻き立てる」とは「そそる」こと。これらを意図的に行って相手の庇護欲を掻き立てる、庇護欲を刺激すると「あざとい」ということになりますね。


【「庇護欲」を言い換えると?

まずは「庇護」の類語を確認しましょう。

■保護(ほご)

危険などから、弱いものを助け守ること。気を付けて守ること。庇うこと。

■擁護(ようご)

侵害や危害から、庇い守ること。なお、同音の「養護」には「養い教育すること」という意味があるため、「庇護」とはニュアンスが異なります。「庇護欲」と「保護欲」「擁護欲」は類語ということになりますが、いずれもあまり日常的に使う言葉ではありませんね。「庇護欲」をもっとナチュラルに言い換えてみましょう。

■守ってあげたい

■目が離せない

■そばにいてあげたい


【「庇護欲」や「守ってあげたい」を英語にすると?】

■desire to protect

[protect]には保護や庇護の意味があるので、「庇護欲」で[desire to protect]となります。。

■want to protect

「守ってあげたい」を英訳すると[want to protect]に。余談ですが…松任谷由実の名曲「守ってあげたい」に「You don't have to worry,worry♪守ってあげたい」という歌詞がありますね。まさにこの「心配しなくていいよ、私がついているからね」という気持ちが「庇護欲」とも言えるでしょう。

***

「庇護欲」は、親が子に、男性が女性に対してもつだけではないことがわかったでしょうか。身体的・体力的な違いはあっても「女性は弱い、男性は強い」のではありません。弱っている人、困っている人には、年齢や男女の別なく、手を差し伸べられる人になりたいものですね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :