「彼は反骨精神のある男だね」という上司のセリフは、ほめ言葉でしょうか?それとも…? 「反骨精神」とは「権威や権力、時代風潮などに逆らう気力や気概」のこと。広い意味では、上司も「権威や権力」に含まれますから、状況次第ということでしょうか。今回は「反骨精神」の詳しい意味と、「反骨精神」をもつ人の特徴を説明します。
【目次】
【「反骨精神」を正しく理解するための「基礎知識」】
■読み方
「反骨精神」は「はんこつせいしん」と読みます。
■意味
「反骨精神」の「反骨」とは「権威や権力、時代風潮などに逆らう気力や気概」を指します。「叛骨」とも書き、「叛」には「背(そむ)く。謀反(むほん)する」という意味があります。不正や古い因習など、大きな権力に果敢に立ち向かい自分の信念を貫き通す、強い精神を「反骨精神」と呼ぶのです。
【「反骨精神が強い」は「ほめ言葉」?その「特徴」は?】
「反骨精神」をもつ人の特徴について考察してみましょう。
■権力に盲従しない
「反骨精神」の根幹はこの「大きな権力に抵抗する気概」にあります。「盲従」とは是非の判断をせず、ひたすら従うこと。「反骨精神」の持ち主は、自分の考えや信念をしっかりともっているため、たとえ周囲が「仕方ない」と割り切っていたり諦めていたりするようなことであっても、周りに流されず、信念を貫きます。
■メンタルが強い
組織の権力者、身近なところでは上司に刃向かうことで周囲にどう思われるか、あるいは自分がどのような扱いを受けるのかという懸念よりも、信念を貫くことを優先する強いメンタルをもっています。
■自分の考えに自信がある
リスクを冒してまで、不正や古い因習、あるいは組織の方針に反旗を翻すのは、「自分が正しい」という確固たる自信があるからにほかなりません。
■自らの考えをしっかりと伝える
たとえ自分が所属する組織の幹部や目上の人に対してであっても、相手が間違っていると確信すれば、自分の考えをしっかりと伝える気持ちの用意があります。
■「弱きを助け強きを挫(くじ)く」の精神
基本的に「弱い者を救い、横暴な強い者をこらしめよう」という気概に満ちています。そのため、上の立場の人に媚びることなく、自分より弱い立場の人に対しては優しく接することができます。
ビジネスシーンにおいて、「反骨精神がある」ことが高評価となるか否かは、上に立つ人の考え方やキャラクターによるところが大きそうです。上司が「頼もしい」と感じてくれればいいのですが、「目障り」と思われてしまえば「出る杭は打たれる」状況になりかねません。「反骨精神旺盛な人」に必要な資質は、常日頃の謙虚さと自分の前を歩む人をリスペクトする姿勢なのかもしれません。
【「使い方」がわかる「例文」3選】
■1:「反骨精神こそが、抑圧された状況を打ち破る原動力となる」
「反骨精神」で立ち向かうのは権力だけではありません。時代の風潮や因習も、その対象です。
■2:「『長い物には巻かれよ』ということわざがあるが、最近では反骨精神のかけらもなさそうな大人しい新人ばかりだ」
「長いものには巻かれよ」は「勢力・権力のある者には、逆らわないほうが得である」という意味のことわざです。「反骨精神」とは真逆の意味ですね。
■3:「古い考えに立ち向かう反骨精神は、これからの会社経営者にとってますます必要な資質となるだろう」
【「類語」「言い換え」表現】
「反骨精神」と似た意味の言葉をご紹介しましょう。
■不屈の精神
不屈の精神とは「どんな困難にぶつかっても、意志を貫く気持ち」のこと。こちらも強いメンタルが想像できる言葉ですね。
■気骨 ■意欲 ■気概
この3つの言葉には「積極的に物事に取り組もうとする強い気持ち」という共通した意味があります。「意欲」は進んで何かをやろうとする意志を指しますが、「気概」と「気骨」は、どちらも困難にくじけないという気持ちを含み、特に「気概」は、「必勝する気概をもつ」のように、具体的な行動となって表されるような強い気持ちを表します。ただし、この3つに「何かに逆らう」という意味は含まれていません。
■野心
「野心」は「密かに抱く、大きな望み。また、身分不相応のよくない望み」を意味します。ネガティブな意味で使われることもありますから、「反骨精神」同様、「彼は野心家だね」というセリフには微妙な響きがあります。
■「ハングリー精神」との違いは?
「反骨精神」と同じような意味で使われる言葉に「ハングリー精神」があります。「ハングリー精神」は、「現時点での自分のレベルに満足できずに、強く向上を望む様子。上を目指そうとする向上心」のこと。権力など、何かに逆らうニュアンスは含まれていません。また「反骨精神」には「ハングリー精神」のような上昇志向のニュアンスはありません。もちろん「反骨精神」と「ハングリー精神」を兼ね備えた人は存在しますし、どちらも強いメンタルの持ち主ですから、混同されやすいのかもしれません。
【英語で言うと?】
「反骨精神」を意味する英語は[a spirit of defiance]や[a rebellious spirit]でしょう。[defiance]と[rebellious ]は、ともに「反抗的(な態度)」という意味で、[spirit]は「精神」を表しますから、どちらも「反抗的な精神」という意味になります。
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「反骨精神」という言葉からは、強靭なメンタルや不屈の精神といったイメージが思い浮かびます。権力に媚びない姿勢は周囲からの憧憬や賞賛の対象となることも少なくありません。とはいえ、強い意志の持ち主は、一歩道を誤れば「自分の考えを撤回できない頑固者」となってしまいます。組織の上部からよい印象をもたれるとは限らないので、「自分は巻き込まれたくないな」と距離を置く人もいるでしょう。ビジネスシーンでは、自分の中に存在する「反骨精神」を上手に利用して、ポジティブなエネルギーに変えていけたらいいですね!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) :