「推敲を重ねる」や「もう一度推敲してから提出する」などのように使われる「推敲」とは、文章をよく練ったり、吟味して練り直したりすること。「校正」や「添削」との違いはわかりますか? 微妙な違いをよく理解して「推敲」という言葉を正しく使用できるよう、解説していきます。

【目次】

書き手自身で練り直すのが「推敲」です。
書き手自身で練り直すのが「推敲」です。

「推敲」とは?「読み方」「意味」「由来」】

■読み方

「推敲」と書いて「すいこう」と読みます。

■意味

詩や文章をつくるにあたり、その字句や表現をよく練ったり練り直したりすること。

■由来

推敲は、中国唐代の詩人・賈島(かとう)が、「僧は推す月下の門」という自作の詩句について、「門を推(お)すではなく、敲(たた)くにしたほうがいいのかどうかと迷っていたときに、偉大な文学者の韓愈(かんゆ)に助言されて、敲くを選んだ」という故事に由来します。韓愈のアドバイスは、「(門を)推すは約束をしていた友がやって来たという感じだが、敲くとすると、ふいに友人がやってきて喜びもひとしおである、というニュアンスになる」ということ。月の美しい夜の来客を喜ぶ詩なら、確かに「敲く」のほうが風情がありますね。この故事から、詩や文章をよく練ることを「推敲」といいます。「月下推敲(げっかすいこう)」という四字熟語もありますよ。


【「推敲」と似ている「校正」との違いは?】

文章とは、他者に何かを伝えたり記録を残したりするものですから、伝わるということが大切です。ビジネスメールや報告書など、身近な文章もしかり。業務のなかで文章を書く機会がある人なら「推敲」すべき、ということですね。

ここで似た言葉の「校正」についても解説しましょう。

「推敲」は文章や語句をよく練ること。伝えたい相手に正しく理解してもらうために、表現や言葉遣いを検討することで、文章そのものを変更することもあります。書いた本人が行うものです。一方の「校正」は、誤字脱字や誤った表現を正すこと。書いた本人以外の人が行う場合もあります。出版業界で例えると、推敲するのは作家ですが、校正は編集者や専門の校閲者が行います。


【「正しい使い方」がわかる「例文」6選】

■1:「新製品の発表資料をつくるのに、何度も推敲した」

■2:「推敲を重ねていくと、スッキリとした文章になってわかりやすくなるものだ」

■3:「会議資料を推敲する時間が足りなかったので、現場でのフォロー解説よろしく!」

■4:「このプレスリリースは、もう少し推敲する必要がありそうだ」

■5:「提出期限までまだ時間があるので、もう少し推敲してみよう」

■6:「始末書、顛末書、反省文は、特に念入りに推敲しなくては」


【「推敲」の「言い換え表現」や「類語」をおさらい】

「推敲」のように文章を見直すことを表す言葉はいくつかあります。「推敲」をもっとわかりやすくした「言い換え」や、「類似語」をおさらいしてみましょう。

■言い換え表現

・文章を練る ・文章を磨く ・文章を見直す ・表現を変える ・完成度を高める

■類語

・校正:文字や文章を比べ合わせ、誤りを正すこと。 印刷物の仮刷りと原稿を照合し、誤植や体裁の誤りを正すこと。「試し刷りを校正する」

・校閲:文書や原稿などの誤りや不備な点を調べ、検討し、訂正したり校正したりすること。「専門家の校閲を経る」

・添削:詩歌や文章、答案などに手を入れ、加えたり削ったりして改め正すこと。「答案用紙を添削する」

・リライト:文章を書き直すこと。また、ある文章を目的に合わせて書き直すこと。「新聞記事を放送用にリライトする」

***

手書きで文章を書く機会は激減しましたが、オンでもオフでも、なんらかの文書をつくる機会は増えたのではないでしょうか。ビジネス文書以外でも書きっぱなしではなく、相手に伝わりやすいか、誤って受け取られる可能性はないかなど、「“大人の語彙力”を発揮して文章を仕上げる=推敲する」ことが大切ですね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社) :