LINEのやりとりや、さまざまなSNSの投稿などで「よき」、あるいは「よきよき」といったコメントを見たことはありませんか?「よき」は「いいね」など肯定の意味で使われる若者言葉です。今回は「よき」の由来を始め、使い方も解説します。

「【目次】

プラスの価値判断を示す感嘆の言葉です。
プラスの価値判断を示す感嘆の言葉です。

【「よき」ってどういう意味? 由来など「基礎知識」】

■意味

「よき」はSNSや口頭で、「よい」「いいね」という意味で使われる感嘆の言葉です。何かをほめたり、人におすすめする際に、「よきよき」「よきです」あるいは「よきかな」のように用いられます。「よき+名詞」で、例えば「よき1日」「よき隣人」「古きよき時代」といった使い方は以前から一般的でしたが、若者言葉の「よき」は必ずしも名詞と一緒に使われないのが特徴です。

■漢字で書くと?

平仮名で「よき」と書くのが一般的ですが、「いいね」という意味から「良き」という漢字が当てはまります。

■由来は?

「よき」は古語の「よきかな(善哉)」を略した言葉だと言われています。「よき」は形容詞「よし」の連体形。「よし」はプラスの価値判断を示す語で、「優れている」「立派な」「美しい」「栄えている」「教養がある」「上品である」「巧みである」「好ましい」「縁起が良い」「正しい」「ちょうどいい」などなど、さまざまなニュアンスで使われていました。若者世代が「よき」についてここまで深く考えて使い始めたとは思えませんが、結果的に「よき」は特定のものをなんらかの理由で「いいね!」とほめるには、ぴったりの言葉なのです。「かな」は「…だな〜」という詠嘆を示す終助詞。つまり、「よき(かな)」で「ほんと、いいね〜」という意味になります!

「よきかな」というセリフで思い出すのは、映画『千と千尋の神隠し』。オクサレさまと呼ばれていた川の神様が、体に刺さった棘を千尋に抜いてもらったあとに元の姿に戻り「よきかな〜」と言って去っていくシーンが印象的でしたね。この映画の公開は2001年。「よき」が「女子高生流行語大賞」(めざましテレビ)で2位にランクインしたのが2016年ですから、この映画を幼少期に観た世代が無意識に流行らせた可能性も考えられますね!また、古文では「よきかな よきかな」と重ねて使われることも多く、これが「よきよき」という新語につながったとも言われていますよ。


【「使い方」がわかる「例文」5選】

■1:「今日買ったバッグ、お気に入りのワンピにも合って、よき!」

■2:「美術館に行ってきた。素敵な作品ばかりでよきよきでした」

■3:「新発売のファンデめっちゃよき。使ってみて」

■4:「今日はお天気がいいから気分もよきです♡」

■5:「来週、映画行かない?」「よき〜」


【「類語」「言い換え」表現】

■いいね

■すごい

■立派

■綺麗

■素敵

■うまい

■好き 

■センスがいい

■ちょうどいい

■美味しい

■大丈夫

古語の「よし(よき)」がさまざまな意味をもっているように、ほめ言葉としてありとあらゆるニュアンスを、「よき」ひと言で伝えることができます! 「大丈夫」「OK」といった肯定の意味としても使われます。


【「反対語」は?】

古語であれば「よき」の対義語は「悪(あ)しき」となりますが、若者言葉としての「よき」と対になる言葉は特にありません。強いて挙げるとすれば「ない(な・ね)」にになるでしょうか。

■「この服どう?」「(それは)ない」

「ない」はこのように使われます。「よき」同様、具体的な理由は明かさず、なんとなく「NG」を伝える言葉です。

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「よき」と言えば、時代劇などで耳にする「よきにはからえ」がありますね。このフレーズも、「任せるから好きにしていいよ」という意味で若い世代に使われているようです。「よき」は「ヤバい」同様、非常に幅広い意味で使われる便利な言葉ではありますが、語彙力が衰えそうで、少々心配にもなりますね。何事も白黒はっきりつけず、曖昧にすることでお互いを尊重しあう、現代の若者世代らしい言葉遣いだとも言えそうです。

この記事の執筆者
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参考資料:『全文全訳古語辞典』(小学館) 『すぐに使える! 教養の「語彙力」3240」(西東社) /『現代用語の基礎知識』(自由国民社) :