「なまじ○○だったばっかりに…」といったフレーズで耳にする「なまじ」は、それだけで事態の悪化を連想させる言葉です。なんとなく理解しているつもりでも、正確な意味を問われると、少々曖昧になっていませんか? 今回は「なまじ」について、その意味や由来、言い換え表現を解説します。
「【目次】
【「なまじ」を正しく理解するための「基礎知識」】
■意味
「なまじ」は「中途半端だったり、いいかげんな様子」や「しなくてもいいことを中途半端にすると、かえって悪い結果を招いてしまう状態」を意味します。例えば「なまじ会うと、よけいに話がこじれてしまいそうだ」など。また、何かを無理に進めて、「しなければよかった…」という気持ちで用いられることも多い言葉です。
■方言なの?
「なまじ」という言葉の語感から、なんとなく「方言?」と思う人もいるかもしれませんね。新潟県や島根県、岐阜県などでは「むしろ」という意味で「なまじ」が使われ、静岡県では「ついでに」「だいたい」という意味で使われることもあるとか…。ただし、「中途半端」や「悪い結果を招いてしまう」といった意味の「なまじ」は、方言ではありません。
■漢字で書くと?
「なまじ」を漢字で書くと「憖(なま)じ」。音読みすると「ギン」「キン」となり、「したくもないことを無理に」「無理矢理願う」といった意味をもっていますが、一般的に「なまじ」と平仮名表記で使われます。
■語源は?
「なまじ」は「なまじ(生強)い」が音変化したものとされています。「生(なま)」には「未熟であること」「中途半端なさま」という意味があり、「強いる」は「相手の意向を無視して、無理にやらせる。強制する」の意。つまり「生強い」は「中途半端なのに無理に物事をやろうとする」という意味になるのです。
【「使い方」がわかる「例文」5選】
まずは「中途半端な」という意味で「なまじ」を使った例文をご紹介しましょう。
■1:「部長は一度言い出したら人の意見など聞かない性格だ。なまじな理由では納得しないだろう」
■2:「彼の今の地位は、なまじな努力で手に入れたものではない」
■3:「彼はなまじ頭がいいだけに、努力はしないでプライドだけ人一倍高いから困ったものだ」
次に挙げる例文は「何かを中途半端に進めると、かえって事態の悪化を招く」という意味で「なまじ」を用いています。
■4:「なまじ自分の能力に自信がある人ほど、過信して失敗するものだ」
■5:「なまじ“英語がわかる”と言ったばかりに、仕事が増えてしまった」
【「なまじ」の「類語」「言い換え」表現】
■なまじっか
「なまじっか」は「なまじ」の派生語で、より俗語的、口語的に使われています。
■生半(なまなか)
■生半可(なまはんか)
「生半」「生半可」は、「中途半端なこと」の意味で「なまじ」の類語です。
■やぶへび
■逆効果
■裏目
余計なことをして「かえって悪い結果になる」という意味での類語です。
【「なまじ」の誤用に御用心!】
■「なまじ」の漢字表記は「生地」ではありません!
■「なまじ」には「ある程度」や「非常に」といった意味はありません!
「ある程度」の意味で「なまじ間違いではない」と使ったり、「なまじ頭がいいから努力しない」を「とても頭がいいから努力がいらない」という意味のつもりで使うのは誤用です。注意してくださいね。
***
「なまじ」という言葉には「中途半端」という意味があり、さらに「悪い結果」を連想させる言葉です。少なくともポジティブな印象ではありませんので、ビジネスシーンで使用する際はくれぐれも慎重にお願いします!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『新選漢和辞典Web版』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :