「公私混同」は「公事と私事を区別せずにゴッチャにしてしまうこと」。ビジネスシーンでも時折耳にする言葉です。例えばあなたが「それは公私混同では?」と言われたとすると、そこには多少なりとも非難のニュアンスが込められています。今回は「公私混同」の意味や使い方、類語のほか、具体的な「公私混同」の例をご紹介します。

【目次】

少々古風な響きの言葉です。
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【「公私混同」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「公私混同」は「こうしこんどう」と読みます。

■意味

「公私混同」は「公(おおやけ)のことと私事(わたくしごと)の区別をせずに、一緒に扱うこと」。「公私」は社会的なことと個人的なこと。「混同」には「区別しなければならないものを同一のものとして扱うこと」という意味があり、つまり「公私混同」は本来区別しなければいけないものであるにも関わらず、区別できていない状態をネガティブに表現した言葉です。


【ビジネスシーンにおける「公私混同」とは「具体的」にどういうこと?】

言うまでもなく、ビジネスシーンは社会的責任を負って業務を行う公の場。「公私混同」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、過剰な接待費や社内恋愛などでしょうか。

■1:会社の経費を私的に使う

交際費と称して私的な付き合いに経費を使ったり交通費を不正請求したり。経費の不正使用は横領罪や詐欺罪などの刑罰に問われる可能性もあります。「公私混同」のなかでも、最もやってはいけないことのひとつですね。

■2:社内恋愛

同じ組織に属する人との恋愛が問題なのではなく、業務に私情(恋愛モード)を持ち込むことが問題なのです。痴話げんかのイライラを仕事に持ち込んだり、反対に人目もはばからずにベタベタしたり。公私の線引きが大切です。

■3:依怙贔屓(えこひいき)

ビジネスシーンにおける依怙贔屓とは、自分の気に入りの部下や交流のある社員だけの肩をもつこと。ミスの見逃しなどがあれば、結果的に会社の不利益につながるケースも少なくありません。

■4:パワハラまがいな行動をとる

3の逆とも言えるパターンです。業務以外のシーンでも、部下に対して威張り散らしたり命令したりするなど、行きすぎた上下関係は「公私混同」のひとつと言えるでしょう。

■5:個人使用のPCやスマホの充電など、私物の持ち込み

リモートワークが進んで、業務とプライベートの区別が曖昧になっている人は少なくありません。オフィスはあなたのリビングではないのですから、私的な興味でネットを検索したり、動画を見たりするのは「公私混同」と言えるでしょう。また、会社の備品を家に持ち帰るのも「公私混同」であり、状況次第では横領ですよ。


【「使い方」がわかる「例文」4選】

■1:「A氏は長い間ワンマン社長として君臨してきたが、親しい女性との公私混同問題などが表沙汰となり、取締役会で解任された」

■2:「約900の公益法人を調査した結果、約100の法人に、公私混同や無駄な支出などの問題があったと報告された」

■3:「企業にとって交際費は業務遂行上必要不可欠の側面がある。しかし、あまりにもその支出が多額な場合、公私混同の可能性もあり、社会的な問題になることが多い」

■4:「A氏は出張に家族を同伴させて、ホテル代を経費にして浮かせていたらしい。まったく、公私混同も甚だしい話だ」


【「英語」の表現は?】

「公私混同」を英語で表現すると[mixing of private and public matters]や[private and public confusionとなります。

・It is an outrageous mixing of public and private matters.(公私混同も甚だしい)

・Don't mix private and public matters.(公私混同しないでください)


【「公私混同」の「類語」「言い換え」表現】

■公私混交 ■公私混淆

どちらも「こうしこんこう」と読みます。「混交」と「混淆」は、「異なるものが一緒になること。ごちゃごちゃになること」です。よく知られている四字熟語の「玉石混交」は「良いものと悪いものとが入りまじっていること」。「公私混交」と「公私混淆」は、「公私混同」同様、「仕事とプライベートの区別がつかないこと」を言います。

■職権乱用

「職権乱用」本来の意味は「公務員が、その職務についての権限を越えたり、悪用したりして国民の権利を犯すこと」。ここから、現在では「職務上の権限を越えたり、悪用したりすること」を広く「職権乱用」と表現することもあるようです。


【「公私混同」の「反対語」】

「公私混同」の明確な反対語はありませんが、挙げるとすれば…。

■無礼講

「公私混同」は、本来区別しなければいけないものを区別できていない状態を、ネガティブな意味で表現した言葉です。これとは反対に、本来区別しなければいけないものをあえて区別しない状態を、ポジティブな意味で表現すると…「無礼講」はいかがでしょうか。「無礼講」は「身分・地位の差や、礼儀作法を無視して行う宴会」のことです。

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「公私混同」しがちな人は、そもそも「仕事とプライベートを分ける」という概念が欠けていることが多いようです。「職場の人とは適度な距離感を保とう」という意識にも乏しいため、同僚は友達、あるいは恋人に発展しがち。自然と業務に私情を持ち込むシーンが増えてしまいます。社会人として公私のけじめをつけるのは当然のこと。この機会に「自分は公私混同していないか」見直してみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
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