「エスパス ルイ・ヴィトン大阪」で開催中のジャコメッティ展が話題です。ひと目で「ジャコメッティだ」とわかる個性的な彫刻作品は、どんなメッセージを放っているのか―。その目で、心で感じる絶好の機会!
雑誌『Precious』6月号では、ジャコメッティについてや、会場でのおすすめの見方など、美術ライター・浦島茂世さんのナビゲートでご紹介しました。
ひたすらに人体の“本質”を追求したジャコメッティ。唯一無二の造形を美しい展示室で鑑賞したい
芸術機関「フォンダシオンルイ・ヴィトン」のコレクションから〈棒に支えられた頭部〉〈3人の歩く男たち〉〈ヴェネツィアの女 III〉などジャコメッティを象徴する7点の彫刻作品を展示。
画面左〈大きな女性 立像 II〉は晩年の傑作。2.77mの仰ぎ見るような大きさと共に、削ぎ落とされた細部のリアリティに目が離せない。エレガントな展示風景も見どころ!
個人的な思い出ですが、私の地元では県下一斉で美術の筆記試験が行われており、当時、ジャコメッティは頻出問題でした。美術に関心がなくても、この極端に細い人物造形を見れば、誰もが「ジャコメッティ」と答えられる。それほどに唯一無二の表現ですよね。
「その人物だけがもつ本質を取り出す」というのが、ジャコメッティの意図です。それで、こんなに細長くなってしまった。これは1950年代当時の思想ともマッチしていて、哲学者サルトルも「これこそが実存だ!」と感動したとか。本質を求めるべく削ぎ落として削ぎ落とした結果なんですね。
「エスパス ルイ・ヴィトン大阪」で開催中の展覧会では、7点のジャコメッティ作品が並んでいます。ジャコメッティの作品を所蔵・展示している美術館は日本国内にも複数ありますが、男性像あり、女性像あり、頭部だけの像もありと、異なるバリエーションの作品が同時に観られるのは貴重な機会。同時に複数の作品を見比べることで、思わぬ発見もあるはずです。
明治以降の日本において、「彫刻」という芸術は、西郷隆盛像やハチ公像のような顕彰のために制作されるものも多く、リアル=上手い、素晴らしいという鑑賞の仕方がされがちです。絵画と比べると彫刻は鑑賞のハードルが高いのかもしれません。でもそれはもったいない!
「どう観たらいいかわからない」という方は、とにかく360度あらゆる角度から観てみて、「私はこの角度が好きだな」というポイントを探してみることをおすすめします。ぜひ楽しんでほしいですね。(文・浦島茂世さん)
また、編集部が展覧会に伺った際のレポート投稿を公式Instagramにて公開中です。こちらも合わせてチェックしてみてください!
〈展覧会詳細〉
- 会期/2023年6月25日(日)まで
- 会場/エスパス ルイ・ヴィトン大阪
- 開館時間/12:00~20:00
- 料金/入場無料
- TEL:0120-00-1854
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- PHOTO :
- (C)Jérémie Souteyrat/Louis Vuitton
- EDIT :
- 正木 爽・宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)
- 取材・文 :
- 剣持亜弥(HATSU)