室町時代後期、京都で創業した老舗和菓子店「とらや」。定番の羊羹はもちろんのこと、季節の移ろいに合わせて「とらや」店頭で販売される彩り豊かな生菓子も、魅力のひとつです。

現在「虎屋 赤坂ギャラリー」では、2023年9月10日(日)までの間、約200点もの生菓子の画像を展示した「和菓子でめぐる春夏秋冬展」が開催されています。

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「和菓子でめぐる春夏秋冬展」入場無料

1月から12月まで、四季折々の意匠を楽しめる展示会。本記事では、Precious.jpライターが実際に訪れた体験レポートをお届けします。

虎屋 赤坂ギャラリーにて開催中!「和菓子でめぐる春夏秋冬展」

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とらや 赤坂店

東京・赤坂にある「とらや 赤坂店」。売り場のほか、虎屋菓寮(喫茶)、ギャラリー、御用場(製造場)から成る建物で、ガラス張りの外観が特徴的です。

展示会は地下1Fの「虎屋 赤坂ギャラリー」にて開催中。木のぬくもりが感じられる店内を、地下へと降りていきます。

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たくさんのパネル展示が並ぶ「和菓子でめぐる春夏秋冬展」

出迎えてくれたのは、数多の生菓子のパネル展示。部屋をぐるりと1周するように、約200点もの生菓子の画像が立体的に並ぶさまは、まさに壮観です。

入口を入ってすぐのところにあるのは1月の生菓子。1月から12月まで、季節を追うようにパネルが展示されているので、順番に見ていくと、季節の移ろいを感じることができる仕掛けになっています。

1月から順に巡る、とらやの生菓子

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1月から始まるパネル展示

展示では、約200点の生菓子の画像と菓銘(生菓子の名前)を見ることができるほか、入口の資料には、菓銘の由来や個々の生菓子の成り立ちなども紹介されています。

例えば1月の生菓子「花びら餅」は、もともと宮中の行事食である「菱葩(ひしはなびら)」に由来するお菓子なのだとか。餅や大根、押し鮎など、固いものを食べて長寿を祝う「歯固(はがため)」という行事に由来するとも言われているそう。

ひとつひとつの生菓子の由来や、菓銘に込められた想いを、より深く知ることができる展示内容となっており、とっても興味深いんですよ。

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紅梅を表現した生菓子「寒紅梅」

冬の人気の生菓子のひとつ「寒紅梅」。冬に咲く紅梅の美しさをあらわした、とてもかわいらしい和菓子です。

花びらの絶妙なバランスをはじめ、作りの美しさがまさに職人技な「寒紅梅」。技術的にとても難しい和菓子なのだと、今回「とらや」の和菓子製造に携わっていたことのある広報担当の方が教えてくださいました。

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遠くの山々に咲く桜をあらわした「遠桜」や、散った花びらをあらわした「花莚」など

「とらや」では、数多くの生菓子を有しながらも、実際販売される生菓子は月に10種類程度、多くは半月ごとの入れ替えとなります。その年によって、販売されている生菓子が異なるそうです。

例えば「桜」ひとつ取っても、綻び始めた桜を模したものから、満開の桜、遠くの山々に見る桜や、見納めのころの桜など、多彩な生菓子が存在しています。その製法も羊羹製や、きんとん製など、味わいや食感もさまざまです。

今年はどんな生菓子が登場するのだろう、と想いを馳せてみるのも楽しいかもしれないですね。

春が終わり、そして夏へ…

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きんとん製「紫陽花」

春の季節商品である桜餅や粽(ちまき)、さらに春から初夏にかけて咲くつつじ、山吹、あやめなどの意匠が並び、そして季節は春から夏へと移ろいます。

今回ライターが特に気になったのは、こちらのきんとん製「紫陽花」。白と紫のそぼろで紫陽花を、透明感のある琥珀できらきらと光る雨露のしずくをあらわした和菓子です。琥珀も白と紫の2色で作られており、美しさへのこだわりが感じられます。

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透明感ある生菓子の並ぶ夏

夏は、琥珀製の生菓子が数多く並びます。透明感のある生菓子は、涼やかさが感じられますよね。

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琥珀製「若葉蔭」

中でも目を惹いたのは、寒天と砂糖を煮溶かして固めて作る琥珀製「若葉蔭」。水の中を泳ぐ金魚が表現されています。中の金魚は小さな木型を使って作られており、模様や表情が一匹ずつ異なるのだそう。

ギャラリーの外では来館者によるお気に入り投票が行われており、琥珀製「若葉蔭」は4月下旬時点で人気の生菓子のひとつに挙げられていました。ぜひみなさんもたくさんの生菓子の中から、お気に入りを見つけてみてくださいね。

本物と見まごう「りんご」や、たった2日のみ店頭販売される冬の生菓子も

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秋の生菓子

さらに季節は秋、そして冬へと移ろいます。菊や紅葉などの意匠や、新栗を使った生菓子などが並ぶ秋。春の桜がそうであったように、菊ひとつ取っても、さまざまな製法や意匠の生菓子を見ることができます。

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まるで本物のりんごのような羊羹製「林檎形」

こんなユニークな生菓子も! 本物のりんごと見まごうかのような、羊羹製「林檎形」。店頭でもとても人気で、発売を毎年待ちわびているファンも多いのだそうです。

まさに”SNS映え”するような意匠で、若い方にも喜ばれそうな生菓子ですが、実は初出は古く1840年(天保11年)まで遡るそう。その歴史の長さにも驚きです。

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写真右、冬至にちなんだ「柚子羹」

冬至にちなんで販売される「柚子羹」は、毎年たった2日しか店頭販売されない幻の生菓子。毎年予約限定・数量限定で販売される生菓子ですが、そのおいしさは格別。実際の柚子の皮を使い、柚子の果汁を使って作られており、なんと皮ごといただけるそうです。

この「柚子羹」を作っている期間中は、製造場が柚子の香りで満たされて幸せな気分になるんですよ、と広報担当の方がうれしそうに話してくれました。

歴史を感じる「菓子見本帳」の展示にも注目

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江戸時代に作られた菓子見本帳「御菓子之畫圖」(複製)

さらにギャラリー中央では、江戸時代(1707年・宝永4年)に作られた虎屋の菓子見本帳「御菓子之畫圖(おかしのえず)」の一部が再現され、展示されています。

菓子の絵図や菓銘のほか、原材料なども示されており、当時の製法や味を知る貴重な手掛かりとなっている冊子です。実際、こちらは手で触れて自由にめくることも可能です。

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きくらげやくわいを使った「沢辺餅」

多種多様な当時の菓子が掲載されている見本帳。中にはきくらげやくわいなど、ユニークな原材料の菓子も載っています。今ではもう見られない菓子から、現在も販売されている菓子まで、当時の様子を知ることができます。

例えば「なすび餅」や「鶉餅(うずらもち)」と書かれた生菓子は、現代に伝わり続ける伝統の生菓子。パネル展示の中にも存在しているので探してみてください。鳥の形を模した、鶉餅の意匠のかわいらしさは必見です!

古いものは1635年、新しいものは2022年!

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展示されている生菓子の中では、一番長い歴史を持つ「雪餅」

ギャラリーに展示されている生菓子の中で、一番長い歴史を持つ生菓子と、一番新しい生菓子についてお伺いしました。

一番長い歴史を持つのは「雪餅」。菓銘の初出は1635年(寛永12年)まで遡ります。

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2022年に登場した「沖の空」(右上)

一方で、一番最近作られた生菓子は「沖の空」という夏の生菓子。海の日にちなみ、2022年7月に発売されたばかりのお菓子です。涼やかな見た目とレモンの爽やかな風味が特徴なのだそう。

「とらや」では、古くからの生菓子を大切にしており、基本的に新作が発表されるのは、年の干支にちなんだ「干支菓子」と歌会始のお題にちなんだ「御題菓子」に限られていることが多いそう。そんな中での新しい生菓子は、ある意味貴重なひと品だと言えるかもしれません。

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ギャラリー入口に置かれた生菓子の一覧

それぞれの初出年などは、ギャラリー入口に置かれた冊子にて、詳しく見ることができます。生菓子の詳しい解説も載っているので、気になる方はこちらをご覧くださいね。

販売中の和菓子はギャラリー入口でも解説

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現在販売中の生菓子(※こちらは2023年4月半ばのもの)

ギャラリー入口脇には、現在販売期間中の生菓子の一覧が記されたボードが置かれています。

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展示から現在販売中のものを探すのも楽しい

販売中の生菓子は、展示の中にも見つけることができます。ボードを見て、200点余りの展示の中から「今販売されている生菓子」を探すのも楽しいですよ。

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羊羹製「岩根の錦」※2023年4月16日~4月30日限定

気に入った生菓子は、販売期間中の商品に限り「とらや 赤坂店」でそのまま購入も可能です。展示だけではなく、四季折々の美しさやおいしさを実際の商品でも楽しんでみてください(数量限定のため、販売状況は店頭へお問い合わせください)。


「和菓子でめぐる春夏秋冬展」は、2023年9月10日(日)までの期間限定開催で、入場は無料です。5月8日(月)、5月31日(水)~6月6日(火)、7月6日(木)、8月6日(日)、9月6日(水)は休館日となります。

アクセスのよい場所にあり、気軽に立ち寄ることができる「虎屋 赤坂ギャラリー」。今回の展示は写真撮影もOKとのこと。お近くにお越しの際は、ぜひ「和菓子でめぐる春夏秋冬展」で、生菓子の奥深さに触れてはいかがでしょうか。

※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

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この記事の執筆者
フリーランスの編集者・ライター。グルメやスイーツ、ライフスタイル系の記事執筆・編集を中心として活動中。元システムエンジニア、プログラマの経験を持つ。二児の母。趣味は料理、SNS、写真を撮ること、美味しいものを食べること。麺類と辛いもの、自分のために買うご褒美スイーツが特に好き。
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EDIT :
小林麻美