「弄って」。皆さんはこの漢字が読めますか? 難しいですよね! よく耳にする言葉としては、「いじって」がありますが、書き言葉として漢字表記されることは稀かもしれません。今回は「弄」という文字にスポットをあて、さまざまな読み方と意味を解説します。あなたは幾通りの読み方を知っているでしょうか?

【目次】

一般的な訓読みは「もてあそーぶ」。
一般的な訓読みは「もてあそーぶ」。

【「弄って」にはふたつの読み方があるんです!】

「弄って」という言葉には、ふたつの読み方があります。それぞれご紹介しますね。

■ひとつめは「いじって」  

「弄って」は「いじって」と読みますよ。ただし、漢字表記はそれほど一般的ではありません。口語的な言い方で「いじくって」という言葉もあり、同じように使われます。そもそも「弄って」は、ラ行五段活用の動詞「いじる」の連用形である「いじり」に、接続助詞の「て」がついたかたちです。「いじりて」が促音便(つまる音)に変化し、「弄(いじ)って」となりました。

■ふたつめは「まさぐって」

「弄って」は「まさぐって」とも読みます。こちらも文法的には「まさぐる」+「て」→「まさぐりて」→「まさぐって」と変化したかたちです。


【「いじって」「まさぐって」それぞれの意味は?】

まずは「弄」という文字の意味を見てみましょう。

「弄」という文字は、両手で玉(ぎょく)を持つかたちを表しており、ここから「もてあそぶ」の意となり、「手でいじくる。おもちゃにする」「遊ぶ。娯楽」「鑑賞する」「からかう。侮る」「(音楽を)奏でる」と、多様な意味をもつようになりました。

■「いじって」の意味

「いじって(いじる)」には、4つの意味があります。

1)指先や手で触ったりなでたりする。
2)物事を少し変えたり、動かしたりする。
3)盆栽や庭、骨董のほか、楽器やPCなどを趣味として楽しむために、あれこれと手を加えたり、調べたり、操作したりする。
4)おもしろ半分に相手いじめたり、からかったりする。

3の意味での「弄る」は、自分の行為や趣味を「謙遜」して使われることもあります。4の意味で使われる例としては、「いじられキャラ」があります。ムードメーカーと言えば聞こえがいいですが、執拗な「イジり」で誰かの気持ちを傷つけるようなことがあってはいけません。

■「まさぐって」の意味

「まさぐって(まさぐる)」は、「手先であちこち探す。指先でいじる。もてあそぶ」という意味の言葉です。


【「使い方」がわかる「例文」6選】

■「いじって」の例文

上記で挙げた4つの意味で使われている例文を、それぞれご紹介します。

1)「会議の最中、彼は落ち着かないのか、始終ネクタイをいじっていた」
2)「クライアントの要望を少しでも叶えるために、イベントの構成を差し障りのない範囲でいじってみた」
3)「私は外出があまり好きではなく、休日はもっぱら趣味のパソコンをいじって過ごしています」
4)「身体的な特徴やジェンダーに関することを興味本位に話題にあげ、いじっておもしろがるような人とは距離をおくべき」

■「まさぐって」の例文

5)「彼は少し酔っていたのか、玄関の前で鍵が見つからず、必死でバッグの中をまさぐっていた」
6)「母は葬儀の間、数珠(じゅず)をまさぐりつつ、呆然とした様子で経を唱えていた」


【「弄ぶ」の「読み方」と「意味」】

■「読み方」

「弄」は音読みで「ろう」、訓読みでは「いじ-る」「まさぐ-る」のほかに、「もてあそ-ぶ」とも読みます。

■「意味」は?

「もてあそぶ」も、4つの意味をもっていますよ。

1)手に持って遊ぶ。手であれこれいじる。
2)心の慰みとして愛する。
3) 好き勝手に扱う。楽しむかのように、思いのままに操る。
4)人を慰みものにする。なぶる。

3と4の意味で「もてあそぶ」が使われた例文をご紹介します。
・「彼は運命にもてあそばれるかのように、波瀾万丈な生涯を送った」
・「他人の気持ちをもてあそぶような人には、心の痛みなど理解できないのだろう」


【「弄する」の「読み方」と「意味」】

さらにもうひとつ、「弄」の読み方をご紹介しましょう。

■「読み方」

「弄」は「ろうーする」とも読むんです!

■「意味」は?

「弄する」は、「もてあそぶ。思うままに操る」「あざける。からかう。なぶりものにする」という意味となり、「弄(もてあそ)ぶ」の類義語です。例えば、「策を弄する」で、「不必要な、もしくは不純な策を好んで用いる」という意味になります。「手玉に取る」という意味をもつ熟語である「翻弄(ほんろう)」にも使われていますよ。

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いかがでしたか? 「弄」という漢字は、いくつかの読み方と意味をもつ語です。読み分けのポイントとなるのは、「弄」のあとに続く「送り仮名」。「弄(いじ)る」「弄(もてあそ)ぶ」「弄(ろう)する」と、読み方が変わると意味も少しずつ変わります。とはいえ、状況次第ではあまりいい意味では使われない言葉となりますので、慎重に使ってくださいね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『新選漢和辞典Web版』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) :