「屁理屈はよしなさい!」。「屁理屈」という言葉を聞くと、子どものころ、親に失敗の言い訳をして、こんな風にたしなめられたことを思い出しませんか? 「屁理屈」は「筋の通らない理屈」「くだらない話」を意味する言葉です。詳しい意味や使い方、英語表現などを解説します。

【目次】

「屁」は「つまらないもの」のたとえです。
「屁」は「つまらないもの」のたとえです。

【「屁理屈」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「屁理屈」は「へりくつ」と読みます。

■意味

「屁理屈」とは、「無理にこじつけた理屈。道理に合わない理屈。くだらない議論」を指す言葉です。さらに言葉への理解を深めるために、「屁理屈」を分解して考えてみましょう。

「屁理屈」の「屁」は、言うまでもなく「おなら」(=放屁)のことですが、ほかに「人をののしる言葉」としても使われます。また、値打ちのないもの、つまらないものの例えとして、「屁にもならない」のように用いられます。次に、「理屈」には「物事の筋道。道理」という意味と、「無理につじつまを合わせた論理。こじつけの理論」という意味があります。

つまり「屁理屈」は、「値打ちのない理屈。つまらない、無理矢理つじつまを合わせた論理」といった意味になるのです。たとえば、自分の失敗を潔く認めず、後付けのような言い訳を重ねることを、「屁理屈を並べる」「屁理屈をこねる」などと表現しますね。これこそが「無理矢理つじつまを合わせた論理」です。「屁理屈」は、ポジティブな意味合いで使われることは少ない言葉と言えるでしょう。


【「使い方」がわかる「例文」4選】

「屁理屈」と一緒に使われることが多いのは「並べる」「こねる」です。「屁理屈」という言葉自体が「つまらない」というニュアンスを含んでいるので、「つまらない屁理屈」「くだらない屁理屈」とは厳密には言いませんが、しばしば用いられています。

■1:「お言葉ですが、それは弊社の責任ではなく、○○が〜したせいで、△△が〜して××が〜」
   「君、それは屁理屈というものだよ」

■2:「事故を起こしたあと、彼は被害者に謝罪もせず、好き放題に屁理屈を並べるだけ並べて帰って行ったよ。誠意のかけらも見られない態度に腹が立った」

■3:「彼女に失敗した理由を聞いても、屁理屈をこねるばかりで一向に原因が判明しないから困ったものだ」

■4:「小学生のころ、素直に謝らず言い訳を重ねる私に、母はピシャリと『屁理屈は止めなさい!』と叱ったものだ」


【「類語」「言い換え」表現】

「屁理屈」の言い換え表現をいくつかご紹介しましょう。

■詭弁(きべん)

「詭弁」とは「相手を言いくるめるめるためのごまかし、こじつけの議論」のこと。「屁理屈」よりも強引に、自分の意見を正当化しようとするニュアンスが含まれています。

■理屈

■小理屈(こりくつ)

「理屈」は、「すじの通った論理」の意と、「理論ばかりに偏る」という意の、よい意味と悪い意味の両方に使われます。「小理屈」は、「本質に関わらない、つまらない理屈」で、「屁理屈」同様、あまりいい意味には用いられない言葉です。

■こじつけ

■言い訳

■でたらめ


【「英語」表現は?】

「屁理屈」に相当する英語表現は[quibble]​です。名詞と動詞のはたらきがあり、「どうでもいいことについてとやかく言う様子」を指します。

■Don't quibble over trivial matters.
(つまらないことに屁理屈を言うのはよしなさい)

「屁理屈」を「言い訳」と解釈すれば、[excuse]となります。「屁理屈」に近い意味の「苦しい言い訳」は[a poor excuse]です。

■Don’t make excuses.(言い訳はやめなさい)

また、「つまらないこと、細かいこと(屁理屈)をうるさく言う」といった意味合いの動詞は[split hairs]、名詞は[hair splitting]で表現できます。 No more excuses!(言い訳はよせよ)も「屁理屈を言うな」と同じニュアンスで使えます。

■Stop splitting hairs!(屁理屈はよせよ)

***

「屁理屈」の「屁」は、値打ちのないもの、つまらないもののたとえとして使われます。少々古い言い回しに「屁の河童」というのがありますが、こちらは「河童の屁のようなもの」という意から、「極めて容易。まったく問題にならない」という意味になります。そういえば、シャルル・ペローの童話に、話すたびに口から毛虫や毒虫が飛び出す姉と、バラや宝石がこぼれ出てくる妹の話がありましたね。『仙女』というお話でした。一度口からこぼれてしまった言葉は、「なかったこと」にはできません。できることなら宝石のような言葉をひとつでも多く、“大人の語彙力”として身に付けていきたいものです。

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :