フードスタイリストの城 素穂さんが、器から始まる食卓の楽しみ方をご紹介する『器と料理の素敵な関係』シリーズ、今回のテーマは「大皿」です。

(写真右上より時計回りに)安藤雅信さんのオランダ輪花鉢LL【直径32㎝】¥30,000、伊藤 環さんの錆銀彩オーバル皿【縦23×横32㎝】¥20,000、辻 和美さんのガラスプレート【直径27㎝】¥15,000(すべて税抜)、右下の皿/私物
(写真右上より時計回りに)安藤雅信さんのオランダ輪花鉢LL【直径32㎝】¥30,000、伊藤 環さんの錆銀彩オーバル皿【縦23×横32㎝】¥20,000、辻 和美さんのガラスプレート【直径27㎝】¥15,000(すべて税抜)、右下の皿/私物

器の大きい、器―。

仕事柄、日々、器に触れ、器について考えていると、器が人のように感じることがあります。各々にキャラクターがあって、毎食、違うメンバーでチームを組んで食卓に並ぶわけですが、盛り上げ役的な器もあれば、キリッと緊張感を与える楚々(そそ)とした器もあります。

そんななか、どんな組み合わせでもすっと馴染むものがあって、そんな器は、なんて「器が大きいのだろう」とつくづく感じてしまいます。どっしりと安定感のある大皿もまた、そんな器のひとつです。

大皿料理の概念は、もともと中国の円卓を囲んでの食事スタイルにあるといわれています。食卓の中央に置かれた大皿は、四方八方から視線が向けられます。そのときに、どこが正面ということもなく、どこから見ても“いい顔”でなくてはなりません。

「八方美人」という、ややイヤなニュアンスを含んだ言葉がありますが、まさに大皿は、よい意味で八方美人である必要があります。

その他のキャラクターの違いはお好みで。大胆な柄や形の、登場すれば、その場の空気すべてをもっていってしまうようなカリスマ的な存在の大皿も大切ですし、その脇で、控えめに、でも絶大な安定感をもつ、縁の下の力持ち的な存在の大皿も大切。

まだどこか男社会に偏りがちな中で、キリッと華を添える、艶やかで女性的な存在の大皿も大切です。いろいろな形や材質の器を器用に組み合わせて使える、日本人ならではのセンスで、大皿を楽しんではいかがでしょうか。

大きく、重さもあるものですから、買うにも、使うにも、躊躇(ちゅうちょ)してしまいがちかもしれません。ですが、大皿は使ってみると、案外、その“器の大きさ”に助けられることが多いと思います。

なんにせよ、大皿を囲んで、たくさんの人と同じ料理をいただく、そのシチュエーションこそが器と料理の、最も豊かで素敵な関係なのではないでしょうか。

<今回のアイテム:大皿>一般的に1尺(約30㎝)以上のものを呼ぶが、現代では家族形態の変化などから8~9寸皿も大皿と呼ぶことも。かつて、神饌を盛るため1尺以上の「皿鉢(さはち)」が使われたことから、江戸時代にはハレの日の食事や宴席料理で、本膳料理の前後に大皿料理が供された。大皿料理を円卓で囲む長崎発祥の卓袱(しっぽく)料理は江戸や上方でも流行し、冠婚葬祭の料理に発展。瀬戸焼の「石皿」は茶屋などの煮しめ皿に使われた。

■安藤雅信さんのオランダ輪花鉢

一見、上級者向けのように感じる器ながら、オランダのデルフト皿を模した大皿は存在感があり、器だけを飾っても、ちぎったパンなどゴロゴロとした食材や雑貨を盛っても様になる。オランダ輪花鉢LL 直径32㎝ ¥30,000(税抜)

■伊藤 環さんの錆銀彩皿

青みがかったマットな黒の錆銀彩は、伊藤さんならではの表現。オーバル型は、大胆に盛った肉・魚料理をはじめ、パスタなども受け止める万能な器。錆銀彩オーバル皿 縦23×横32㎝ ¥20,000(税抜)

■辻 和美さんのガラスプレート

金沢でガラス作品をつくる辻さんが、「赤」をテーマとした個展を行った際に製作したプレート。目を惹くきれいな色の器は、食卓に華やぎを添えてくれる。ガラスプレート 直径27㎝ ¥15,000(税抜)

問い合わせ先

  • ギャルリ百草(安藤雅信さんのオランダ輪花鉢) TEL:0572-21-3368
  • ラ・ロンダジル(伊藤 環さんの錆銀彩皿) TEL:03-3260-6801
  • OUTBOUND(辻 和美さんのガラスプレート) TEL:0422-27-7720
この記事の執筆者
TEXT :
城 素穂さん スタイリスト
2017.9.1 更新
1978年生まれ。デザイン事務所、スタイリストのアシスタントを経て独立。主に食まわりのスタイリングを中心に、雑誌や書籍で活動。2008年から1年間、ベルギー・アントワープのレストランで、食ともてなしを学ぶ。将来の夢は、おばあさんになったら、小さな食堂のマダムをやること。 好きなもの:食べること、つくること、旅行、器、古いもの、食に関する学術書、職人
クレジット :
撮影/濱松朋子 スタイリング・料理・文/城 素穂