「あなたって本当にお人好しね!」と言われたことはありますか? こんなフレーズのあとには大抵「(……だから都合のいいように使われちゃうのよ)」という言葉が隠れているものです。なぜなら、「お人好し」と言われる人は気がよくて、人に何か頼まれるとついつい引き受けてしまう性分だからです。今回は「お人好し」と言われる人の性格の長所と短所、「優しい人」との違いや「言い換え表現」などを解説します。

【目次】

多くは「呆れ」や「皮肉」のニュアンスとともに使われます。
多くは「呆れ」や「皮肉」のニュアンスと共に使われます。

【「お人好し」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「お人好し」は「おひとよし」と読みます。「御人好」と書いても正解ですよ。

■「意味」は、良くも悪くも「いい人」ってこと!

「お人好し」とは、簡単に言えば「気のよい人」のことです。この場合の「気」とは「気質」や「性格」。性格がよくて大人しく、他人に「NO!」と言わない人を指して「お人好し」と言うのです。


【「お人好し」な人の「特徴」】

さらに具体的に、「お人好し」な人の特徴を見ていきましょう。

■人に何か頼まれると断れない

■他人の言葉や行為などを、なんでも善意に捉える傾向がある

■楽観的

■どんな人に対しても友好的である

■人に逆らわない

■人から頼られるのが嬉しい

■自己主張が控えめで大人しい


【「お人好し」の「長所」と「短所」】

「お人好し」とはほめ言葉なのでしょうか? 一概にそうとも言い切れないことが、「お人好し」な人の「長所」と「短所」から見えてきますよ。

■「長所」

・人の心の弱さや優しさに共感できる
・円滑な人間関係を築くことができる
・どんな人や事柄に対しても偏見をもたない
・人に尽くすことをいとわない
・人を羨んだり妬んだりしない
・損得勘定で動かない
・人を許すことができる
・人に意地悪をする、仕返しをするといった発想に乏しい
・我慢強い

■「短所」

・人に何か頼まれたら断れない
・誰にでもいい顔をするので八方美人になりがち
・理屈に合わない、非合理的とわかっていても、ものごとを論理的に判断できない
・いろいろな人の思惑が気になって、大きな決断ができない
・優柔不断
・周囲におだてられ「ついうっかり」な行為をしがち


【「損をする」「嫌われる」と言われる理由は?】

「お人好しは損をする」と言われていますが、その原因はなんでしょう。

■本当は都合が悪い、あるいはやりたくなくても、人に頼まれると断れない

■雑用に忙殺されがち

■他人に利用されたり、だまされたりやすい

■騙されたり利用されても懲りずに繰り返す

■人のためにリスクを負い、失敗すると責められる

■周囲の都合で振り回されやすい

■ストレスを溜め込みやすい

「お人好し」な人は他人に対し寛容であり親切です。人を疑うことがなく、人に尽くすことをいとわない、ある意味「いい人すぎる人」であることも大きな特徴。そのため、だまされやすく、利用されやすい側面も。さらに、つらい目に遭ったとしてもそれを許せてしまう性格のため懲りずに同じことを繰り返す傾向にあります。このため、この言葉は「君のお人好しぶりには呆(あき)れるよ」などと、少々ばかにしたり皮肉を込めて使われます。つまり、「お人好し」はネガティブな言葉ではありませんが、「ほめ言葉」とも言い切れません。

また、「お人好し」な人は、人の顔色を常に窺っているため、決断力に乏しい一面があります。「自分が好きか嫌いか」も状況次第では明言できないため、論理的にものごとを考える人からしてみると、その優柔不断さがなんとも歯がゆく、「人が好すぎて自分の意見がない」「お人好しを見ているとイライラする」、結果「お人好しは嫌われる」といった連鎖も見られるようです。


【「優しい」人との違いは?】

以上のように、「お人好し」は何か頼まれると依頼者のことをことを思いやり、本当は断りたくても毅然とした対応ができません。とはいえ、ビジネスシーンにおいては、「情」よりも「理」を重んじなければならないシーンは多いものです。頼まれたから、可哀想だからという感情で判断や行動をした結果、ビジネスがうまく運ばず、結果的には依頼者だけでなく、ほかの誰のためにもならなかった…なんてことも起こり得ます。

依頼を断るなど、一見、厳しい対応に見えても、最終的には依頼者や周囲のためになる行動を取ることができるか否か。ここが「優しい人」との違いかもしれません。言い方を変えれば、「誰からも嫌われたくない」「いい人に思われたい」という感情が根底にある「お人好し」は、「優しさ」から人に親切にしているとは言い切れず、毅然とした「強さ」にも欠けた人、と言えるのではないでしょうか。


【「類語」「言い換え」表現】

「言い換え表現」は、「お人好し」の「長所」を重んじるか、「短所」に重きを置くかによって変わってきます。いくつかご紹介しましょう。

■お目出度(めでた)い人

「お目出度い」とは「お人好しで考えが甘い」こと。「よく言えばお人好し、悪く言えばお目出度い人だね」と言われたら、「性格がいいのは確かだが、考えが甘いし周囲の悪意に対して鈍感(楽観的)だな」と言われているのと同義です。

■愚直な人

「正直なばかりで臨機応変な行動を取れないこと。ばか正直」という意味の言葉が「愚直」です。

■善人

「善人」は、文字通りの「性格のよい人」の意味ですが、人がよく、正直すぎるために騙されやすい人を、軽くばかにして使うこともあります。この点でも「お人好し」と似ていますね。

■鴨(カモ)

勝負ごとで、負かしやすい相手。または利用しやすい相手を「カモ」と言います。「いいカモにされてしまった」というふうに使います。

■善良

■好人物

「善良」とは、素直で汚れがないこと。「好人物」とは気立てのよい人のこと。「お人好し」の「長所」に焦点を合わせると、これらの単語が同義語となります。


【「対義語」は?】

同様に、「対義語」も見ていきましょう。

■利口者

「利口者」には、「利口な者、賢い人」という意味のほかに、「損得を計算して機敏に抜け目なく立ちまわる人」を皮肉って指す場合があります。「考えが甘い」という意味での「お人好し」の対義語です。

■意地悪

■ひねくれ者

「意地悪」とは、他人、特に弱い者に大して「冷たい仕打ちをする」ことです。人を苦しめたり、困らせたりして、性質が素直でないことも「意地悪」と言います。「ひねくれ者」とは「性質が曲がっていて素直でない者」のこと。どちらも「人が良い」の反対の意味をもつ言葉です。

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「お人好し」な人がひとりいると、周囲はラクができるものです。人を疑わず楽天的な「お人好し」は、何か頼まれると面倒な手間や時間を惜しまないため、重宝がられ頼られもします。でも、その人間関係は本当に信頼の上に成り立っているのか、あるいは損得勘定に支えられているのか、時には冷静なジャッジも必要です。「こんなに残業を引き受けちゃうなんて、あなたって本当にお人好しね(呆)! 仕方ない。私も手伝うわ!」と言い合える関係であれば、よきパートナーシップが築けるのではないでしょうか。

この記事の執筆者
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