「中秋の名月」とも呼ばれる「十五夜」は、秋の名月を観賞する「お月見」の夜として広く知られていますが、この約1か月後に巡ってくる「十三夜」をご存じですか? 「十三夜」は秋の収穫に感謝しながら月を愛でる、日本独自の風習です。今回は「十三夜」の意味や由来、「十五夜」との違いについて解説します。

【目次】

「十五夜」と「十三夜」を合わせて「二夜(ふたよ)の月」と呼びます。
「十五夜」と「十三夜」を合わせて「二夜(ふたよ)の月」と呼びます。

【「十三夜」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「十三夜」は「じゅうさんや」と読みます。

■意味

「十三夜」とは、「太陰太陽暦」とも呼ばれる「旧暦」で毎月13日の夜のことで、現在では特に旧暦9月13日の夜を「十三夜」と言います。「旧暦」は月の満ち欠けなどを用いてつくられた暦で、基本となるのは新月です。月の満ち欠けの周期は多少変化するものの、平均して約29.5日。新月から数えて14日目~17日目が満月にあたります。従って、「十三夜」は新月から数えて13日目の、満月には少し欠ける月ということになります。

一方で、毎月15日の月は、新月から数えて15日目の満月か、もしくは満月に近い月です。旧暦8月15日の「十五夜」は「中秋の名月」として知られていますね。その約1か月後に巡ってくる「十三夜」は「十五夜」に次いで月見によい夜とされていました。

■由来

平安時代、延喜 (えんぎ) 19(919)年に、醍醐 (だいご) 天皇が清涼殿で月見の宴を催したのが、9月「十三夜」のはじめとされています。『中右記 (ちゅうゆうき) 』の保延(ほうえん)元(1135)年9月13日の条には、明月の宴が催されたことが記録されています。

■「別名」

「十三夜」は、8月15日夜の「十五夜」に続く月ということで、「後(のちの月」、あるいは、栗や豆の収穫の時期であることから「栗(くり)名月」「豆名月」などとも呼ばれました。


【「十三夜」と「十五夜」との「違い」は?何をする日?】

「十三夜」と「十五夜」との違いを中心に、「十三夜」とは何をする日なのか、整理して解説します。

■「十五夜」は中国伝来の風習。「十三夜」は日本オリジナルのもの

■「十五夜」は旧暦8月15日の夜。「十三夜」は旧暦9月13日の夜

「十三夜」は新月から数えて13日目の、満月には少し欠ける月

対して「十五夜」は、新月から15日目の満月か、もしくは満月に近い月です。

■「十三夜」には栗や大豆、果物など秋の実りや月見団子をお供えして

月見団子をお供えするのは、「十五夜」も「十三夜」も同じです。別名「芋名月」「豆名月」と呼ばれる「十五夜」には、15個の月見団子と、里芋やサツマイモなどの芋類、ススキ、秋の七草などをお供えします。一方、「十三夜」には栗や大豆、果物など、秋の実りと共に月見団子をお供えします。団子の数は13個がよいとされています。魔除けになるといわれるススキをお供えするのも、「十五夜」と同様です。そして、お供え物は、下げたのち、美味しくいただくことが大切です。お供え物をいただくことで、神様から力をいただき、結びつきを強めることができるといわれています。

■「十三夜」は秋の収穫に感謝しながら美しい月を愛でる日

「十三夜」の約ひと月前の十五夜では、月の神様に豊作を願いました。この「十五夜」と対をなすのが「十三夜」です。神様に豊作を願い、それを感謝する行事である「十五夜」と「十三夜」、ふたつを合わせて「二夜(ふたよ)の月」、どちらか一方だけ月見をすることを「片月見」と呼び、「片月見はするものではない」と伝えられていました。


【2023年の「十三夜」は「いつ」?】

■「旧暦」の十三夜は「いつ」?

旧暦9月13日の「十三夜」は、新暦でいえば1か月遅れの10月13日でしょう? と思う人も多いのですが、実はそれは間違いです。新暦は太陽の動きを基準とした暦ですが、旧暦の基準は月の動き。新暦の1年は365日なのに対し、旧暦では354日のため、1年で11日ものずれが生じるのです。旧暦の行事である「十三夜」はあくまで「月の満ち欠け」を基準とした行事のため、新暦でその日を表すと、年によって日にちは変わりますが、だいたい毎年10月上旬~11月上旬の間に「十三夜(旧暦9月13日)」が来るとされています。

実際には、月の満ち欠け(新月から満月)の周期は約15日と一定ではなく、13.9日から15.6日と変動があります。そのため、「十五夜」と満月の日も例年1日〜2日程度ずれることがあるのは、ご承知の通りです。

■「2023年」の十三夜は「いつ」?

2023年の「十五夜」は9月29日(金)、「十三夜」は10月27日(金)です。ちなみに前年2022年の「十三夜」は10月8日(土)、翌年2024年は10月15日(火)、2025年は11月2日(日)。かなりバラツキがありますね。


【「樋口一葉」の小説『十三夜』のあらすじは?】

「十三夜」という言葉から、樋口一葉作の小説『十三夜』を連想する人も多いことでしょう。『十三夜』は明治28(1895)年に発表されました。夫に虐待され家庭生活に絶望した主人公のお関が、車夫に身を落とした幼友だちに会い、一度は出た婚家に再び戻っていくストーリーです。封建的な社会の矛盾を、女性の立場から哀切に描いた作品です。

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最近では「スーパームーン」や「ブルームーン」、「ストロベリームーン」など、アメリカ由来の満月が話題になることが多いですね。でも日本には、自然と密接に関わりながら、神様に願い感謝する「お月見」の習慣が古くから根付いています。街を歩きながら見上げる満月も素敵ですが、家でゆっくりと眺める月もまた格別。お団子は簡略すれば「十五夜」には5個、「十三夜」には3個でもいいそうです。お団子にお酒でもいただきつつ、お月見を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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